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14無職

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「派遣!? 冗談だろ。あんな貧乏人が前世の奴がこの世界に来るとはなぁ」
「レイヴン、言葉に気をつけろ。でも確かに奇妙だな、この世界は前世でのステータスが影響する。高ステータスの奴しか送らないと女神は言っていたはずなんだが……」

 レイヴンを叱るのは、木の棒を抑えている元弁護士のコールだ。
 彼は片手を顎に当てて考えている。しかし、すぐに手を顎から離すと、コールはガロス代表に顔を向けた。

「ガロス代表、どうしますか?」
「コール! そんなもん決まってるだろ。私にやらせろ。あとこの刃を押すだけなんだ」
「ふざけるなレイヴン。同じ転生者を殺すなんて、馬鹿げているだろう」

 どうやらコールという人物はまともそうだ。先程までレイヴンの言動を聞いて顔をしかめていたリストが、ほっと息を吐く。
 それを見ていたガロスは笑った。

「ガハハ! 少年よ案ずるな。何も殺しにきたわけじゃない。俺達は共同クエストをどうするかを聞きたいだけだ。コール、レイヴン、少年を放してやれ」
「「はっ!」」

  ガロスの命令にコールとレイヴンは忠実に従った。2人ともリストを解放すると、すぐさまガロスの後方へと身を移したのだ。
 離れて全体像を見ると2人の武器が分かる。
 レイヴンは腰の両側に短い短剣のようなモノをぶら下げ、コールは腰に杖をくくりつけている。
 どうやら彼らの職業は、【剣士ナイト】と【魔術師メイジ】らしい。
 そうやってジロジロと見ているとレイヴンが話しかけてきた。

「おいおいそんなにジロジロと見てどうした? 私の美しさに見惚れているのか」
「メンヘラにしか見えないよ」
「当たってるじゃねぇか。そうだ私はメンヘラなんだよ」
「おい、レイヴン。もう少し抑えんか、話が進まんだろう」
「す、すみません。ガロス代表」
「さて、話を進めようかシャルル」

 ガロスはシャルルに近づいて一枚の紙を見せた。それは王政府から届けられたと思われるクエストの内容であったのだ。


 難易度A級
【死の王、を討伐せよ】

 場所・冥界の入り口
 クエスト達成条件・死の王、の討伐。
 報酬・10万G


 紙に記載された内容はやはり困難なモノで、難易度はA級、不死の王を討伐せよ。という難関クエストであった。
 シャルルの顔がさらに歪む。

「不死の王?……王政府は何を考えているのでしょうね。勇者が以前に失敗したクエストですよ」
「怖気付いているのかシャルル。名門ギルドの名が泣くぞ、さっさとオリエントなんてギルドやめちまえ!」
「……」

 黙り込んでしまったシャルル、悔しさからか唇を噛んで苛立ちを抑えているようだ。
 それを見ているリストは何も言えなかった。
 先程、ガロスの部下に抑えられたのだ。もうあんな情けない状況に陥りたくないのだろう。
 そんな悲しい2人を見てガロスは少し言葉を言って、その場を立ち去っていった。

「……まぁいい。このクエストに参加するかどうかは、明日の朝までに教えてくれ。王政府に伝達する」

 ガロスが小屋を離れるとコールやレイヴン、他の団員達もその後を追っていった。
 暗闇の中に赤く光る一筋の道。松明たいまつの灯りが鈍く闇夜に浮かぶ。
 その列を見た街の人達は不思議そうに見つめていた。
 何かあったのかしら、ギルド間の抗争かしら、と所々から聞こえてくる。

「リストさんありがとうございました」

 ガロス達の背を見つめるリストに向かって、シャルルはそう告げた。
 まだ若いのにリストより冷静である。
 少し落ち込んだ様子は隠せていないが、小屋の入り口をゆっくりと開けた。

「どうした代表」
「私はクエストを受けようと思っています。王政府から直々の依頼を断ったとなっては、オリエントの名が完全に落ちてしまいますから」
「でもいいのか? さっき依頼書を見て青ざめていたけど」
「ですからリストさん。あなたはクビです」
「え……」
「クエストには私1人で参加しますから、あっ……その5千Gはリストさんにあげます。退職金だと思って下さい。ははは」

 乾いた笑い声がリストの耳にこびりつく。
 悲しそうな顔をしたシャルルはそのまま1人で小屋の中へと入っていった。
 そして、ガチャッ、という鍵を閉めた音が響いた。
 本当にリストはオリエントから解雇されたようだ。

「1日でクビかよ……納得いかないぜ」

 しかし、納得出来ないリストは暗闇の中、ある場所に向かって足を進めた。
 もしかして彼女なら相談にのってくれるかもしれない、そう信じて。
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