Home,sweet home

真鉄

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Home,sweet home

7(了)

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  ぬぽり、と最後の指が抜かれた。充血して赤くなった蕾はぽっかりと口を開け、ひくひくとわなないていた。くまなく紋様に覆われた背中に身を寄せ、我慢に我慢を重ねた剛直を、ひたと師の後肛に押し当てる。ランノールが察して息を飲んだ。力なく横に垂れた真っ赤に熟れた耳に舌を這わせながら、ロイドが低い声で囁いた。

「先生の中に挿れてもいいですか」

  先端に口づけるように後肛が蠢く。寝台に突っ伏して荒い息をついていたランノールのとろりとした青い瞳がロイドをまっすぐに見つめていたが、やがて諦めたように瞼が下りた。

「……挿れて」

  それは小さいながらも間違いなく師の言葉で、ロイドは感激に泣きそうになる。師によって性に目覚めたロイドは十年、師と添い遂げることをずっと夢見ていた。ついに一つになれるのだと思うと泣けても仕方のないことだ。ぐ、とエラの張った先端を充血した後肛にじりじりと押し挿れていく。

「ううっ……」

  思わず中に侵入しようとする異物を排出しようといきんだが、それは逆効果だった。却って一番太い部分をすんなりと飲み込むと、ずるずると肉竿に体内を侵攻されていく。だが、最初に指が入り込んだ時のような激しい違和感はなく、ぬめった粘膜と粘膜が擦り合わされる純粋な快感だけがそこにあった。ずぷぷ、と体内に響く粘性の音がランノールの皮膚を甘く震わせる。

「ぅああっ……!」

  指で触れられたところよりも更に奥へ、ロイドの肉竿が隘路を押し開いていく。先端がごりごりと前立腺から精囊を抉りながら侵入し、湧き上がる強烈な快楽にランノールが身をよじった。薄い尻肉にロイドの腰が密着し、ついに全てが体内に収まった。

「先生……」

  一つに繋がった身体をぴたりとくっつけ、ロイドは師の血色に染まった首筋に顔を埋めた。絹糸のような髪からか、しっとりと手に吸いつくような肌からか、立ち上る菫の匂いになけなしの理性が焼かれていく。ついに憧れの愛しい人と一つになれた歓びが、その熱い囁きには溢れ出ていた。

「――もう、離れませんから」
「ああっ……!」

  敏感な熟れた耳に囁かれた低く艶のあるロイドの声は、快楽に爛れたランノールの脳を更に掻き回した。体内で熱く脈打つ雄茎の先端に、細かい動きで腹の中の快楽の種を的確に攻め立てられ、肉体は再び高みへと上りつめようとしていた。今までに経験したこともないほどに鼓動が高鳴り、息苦しい。酸素不足の頭には、理性に回すほどの余裕はもうどこにもない。

「あ、あ、……あ、ロイドっ……!」
「気持ちいい?  先生……」
「ん、いい……。あ、あっ、きもち、いい……」

  舌足らずな甘い声がロイドの呼びかけに素直に応じる。背後からその顔を覗き込むと、いつもは怜悧な冬の空をした虹彩は、熱病に浮かされる夏の空へと色を濃くしていた。長い睫毛に縁取られた潤んだ目にはロイドだけが映り込んでいる。目の縁を赤く染めて、とろけた顔でこちらを見つめてくる師の姿はひどく美しく、煽情的で、打ちつける腰に思わず力がこもる。

「ン、あ、あ、あ……っ!」

  視界の端で揺れる長い耳に噛みつき、しゃぶり立てると、濡れてまとわりつく媚肉が悦ぶように痙攣し、雄茎に愛しげに吸いついた。薄い尻に乗り上げ、汗に濡れた身体を呪術的紋様が施された背中に全面的に擦りつけながら、腰を叩きつける。ロイドの身体はもう、精子の放出に向けて準備万端だった。

「先生……!  俺も、もうイキます……。全部、受け止めてくださいね……!」
「あっ、あ、っ、……っ! ロイドっ……!」

  肉の薄い尻に乾いた音を立てて腰を打ちつけながら、ロイドはランノールの耳元でそう宣言した。数度強く打ちつけた後、身体の奥までロイドの熱が潜りこむ。ランノールは恐ろしくなるほどの壮絶な絶頂の予感に身をよじったが、逃げようにも分厚い身体にびったりと押さえ込まれていてぴくりとも動かない。

――感じて当たり前なんですよ。

  ロイドの艶やかな声がとろけきったランノールの脳裡で再生される。動けないほど全身で拘束され、弱いところをひっきりなしに攻め立てられているこの状態。それに加えて、何よりも愛しい子の絶頂を受け止めるという悦びを前に、どうして湧き上がる喜悦を止められようか。諦めにも似たその論理はすとんと腑に落ち、守るための理由をなくした理性はたやすく引きちぎれた。

「せんせ……っ! イクっ……!」
「ひ、ン……! あ、ああああっ……!」

  雄膣の中でびぐびぐと戦慄く肉茎の震えだけで、ランノールはまず達した。絶頂にがくがくと痙攣する細い身体はしっかりとロイドに抱き潰されていて、高みに上りつめながらもどこか安心感があった。そこへ、破裂するかのような勢いで、びゅうびゅうとロイドの熱い精液がぶち撒けられのだからたまらない。

  ひゅうっ、と喉を笛のように鳴らし、身体の奥で数度に分けて勢いよく吐精されるたびに強さを増していく連続絶頂にランノールの身体が強張った。雄膣は受け入れる悦びに震え、最後の一滴まで搾り尽くさんばかりに雄茎にまとわりつく。

「――っ、っあ、はぁっ……! ああっ……!」
「せんせ……」

  詰めていた息をようやく吸い込むことができた。壮絶な絶頂の余韻に戦慄きながら、ランノールは寝台に力なく突っ伏す。互いの荒い息が静かな寝室に響く。薄い尻肉を割り開き、ゆっくりと肉杭を引き抜くと、そこにはロイドの大きさに開ききった肉門がぽっかりと口を開けていた。縁を赤く充血させ、濡れた口がひくひくと戦慄くさまがロイドの情欲を際限なくむらむらと掻き立てる。

  ぐったりと横たわるランノールを仰向かせ、ロイドはその上にのしかかった。長靴下と長手袋だけを身につけたような細い裸身。白い肌をほの赤く染め、薄い胸が誘うように上下している。

「あ、う……」

  健気に勃ち上がった小さな肉粒にロイドは吸いついた。舌先で転がすたびに、細い身体はひくり、ひくりと戦慄き、白い指がロイドの黒髪を掻き回す。指と舌先で何度も弾くと、腕の中のランノールの身体がぶるぶると震え、弓なりにそり返った。

「あ、だめ、っ、ああっ……!」

  ロイドが肌に触れるだけで、身体の奥から呼応するように快楽がとめどなく湧き上がり、すぐに高みへと連れ去られていってしまう。気がつけば、ランノールはしとどに濡れそぼる屹立を、自らロイドの固い下腹に擦りつけていた。己のあまりのはしたなさに顔から火を吹かんばかりに恥じ入り、いつの間にか抱え込んでいたロイドの頭をばつの悪い思いで腕の中から解放する。

「そうですよね。こっちも、イキたいですよね」
「う、あ……」

  ロイドは真っ赤に熟れた耳元で楽しげに囁くと、白い下腹を濡れ光らせるすんなりとした肉茎に指を絡ませた。くちゅくちゅといやらしい水音が下肢と耳から響き渡り、ランノールの意識を掻き乱してやまない。恥じらいは未だ胸にある。だが、どれだけいやらしく乱れようと目の前の愛しい子は、笑ってそれを受け入れてくれることもまた、ランノールはとろけた頭で既に理解していた。

「イキたい……。ロイド……」

  腰が揺れる。剣を握り続けて固くなった無骨なロイドの掌に、誘うように緩やかに屹立を擦りつけた。その煽情的な仕草と声に、ロイドが驚いたようにランノールの顔を覗きこんだ。榛色の虹彩の中、興奮に黒々と開いた瞳孔に吸いこまれそうだ。

「先生……そんなこと言うからまた勃っちゃったじゃないですか」

  上擦る声でそう言うと、細い足を腕に抱えこみ、ロイドは再度隆々と勃ち上がった雄茎を真っ白な尻の谷間に擦りつけた。先端が会陰をなぞり、果実のような陰嚢を裏から突き上げる。連続絶頂をもたらした肉の凶器。我が身を貫く愛おしい肉杭。物欲しげに雄膣がひくひくと戦慄くのを自分でも止められない。別個の生き物のように上下する肉茎から、とろりと一筋涎が垂れた。

「……挿れて、ロイド。さびしい……」

  淋しいのは、心か、それとも身体に空いた虚か。差し出されたランノールの腕に自ら首を差し出し、ロイドは一気に己を突き入れた。

「んあぁっ……!」

  赤く染まった長い耳をぴるぴると震わせ、ランノールは再び訪れた小さな死の衝撃に顎を仰け反らせた。露わになった白い首筋に吸いつき、所有の証を刻みこむ。媚肉が嬉しげに雄茎にまといつき、搾り上げた。

「先生……! 先生……っ!」

  自分を受け入れてくれる師が愛おしくて仕方がなかった。首元に巻きつく腕。太い胴を挟みこむ足。口づけをせがむ唇。潤んだ夏の空。一度でも添い遂げられれば――などと思っていた己が愚かしい。十年待ち焦がれた美しい人が、全身全霊で己を欲しているのだ。触れれば触れるほど欲しくなるのが当然だ。

「ン、あっ、あっ、ロイ……!」

  呼びかけた愛し子の名は、絡め取られた熱い舌に吸いとられてしまった。ぐちゅぐちゅと上下からいやらしい音を立て、二人は絡み合う。汗に濡れた肌から雄の匂いを発しながら、他ならぬ己を求める愛しい子。硬い黒髪も、熱に浮かされた榛色の目も、鍛え上げられた肉体も、雄膣を穿つ熱も、全てがランノールを欲しているのが分かる。その事実だけで、とろけきった脳から全身に甘い悦びがほとばしる。

「あっ、あっ、ん、出る……、だめ……」

  身体はもう喜悦に震えるばかりで、ランノールの意思では止められない。腹の奥を太い雄茎が甘く突き上げるたびに、白い腹の上で揺れるすんなりとした屹立からは白濁がとろりとろりと力なく漏れ出した。肌よりも白い花が点々と咲き、ロイドの興奮を否が応にも高めていく。

「先生っ、せんせ……っ!」
「ん、ん、ロイド……あああっ!」

  ロイドは己を挟みこんでいた細い足を肩に抱え上げ、更に奥へと潜りこむと、ぐりぐりと腰を密着させた。苦しげに柳眉をひそめ、ランノールが頤を撥ね上げる。強く閉じた目尻から、一粒の雫が転がり落ちていった。痛みに、ではない。びりびりと全身に容赦なく流れる甘い電流に耐えきれなくなったのだ。

「あっ、ああっ、すご、い、あ、あ、あああっ……!」

  何度も口づけて赤く充血した唇から涎がこぼれ落ちたことにも気づかないほどに、壮絶な絶頂の波にランノールは溺れた。ずんずんと身体の奥を突かれるたびに絶頂し、折り曲げられた臍の窪みはもう、白濁とも透明ともつかない粘液の水たまりに沈んでいる。

  体内で脈打つ愛し子の速い鼓動に合わせて、自分の胸も同じ律動を刻んでいるのが嬉しくてたまらない。まるで同じ時を生きているようじゃないか。額に汗を滲ませながら己を貪るロイドを見つめながら、とろけた瞳でランノールがかすかに笑う。

「せん、せ……!」

  如実に愛を語るその瞳に、ロイドの背筋がぶるりと甘く震えた。そのままの勢いで、ランノールの最奥に己の熱を解き放つ。媚肉にぶつかる熱い奔流に、ランノールは声にならない悲鳴をあげ、何度も何度も身体を震わせた。一際大きな絶頂に、細い身体を折れそうなほど弓なりにそらせ、体内の愛し子を締めつける。目の前がちかちかと瞬くほどの壮絶な絶頂だった。

「先、生……」

  繋がったまま、ロイドはぐったりと沈み込んだランノールの上に突っ伏した。汗に濡れた互いの身体はまるで一つに溶けあったかのようにぴったりとくっつき、荒い息に上下する。立ち上る懐かしい菫の香りをロイドは胸いっぱいに吸い込んだ。

  子供をあやすように、ランノールの細い指が短く刈られた黒髪を優しく撫でている。夜の闇が怖かった頃、師の寝台に潜りこむと、よくこうして頭を撫でてくれたものだった。惜しむ身体を引き剥がして師の横に寝そべり、ランノールの手を握ると、その細い指にロイドは口づけた。

「――あなたの側にいさせてください」

  もう二度と離れたくない。

「あなたのひとときを、俺に下さい」

  ランノールを愛しげに見つめる榛色の瞳から目が逸らせない。

  流れる時間が違う者を娶った父は、母は、互いをどのように思っていたのだろう。悲しみに嘆く父の姿ではなく、両親が寄り添う姿を脳裏に浮かべると、それはどれも幸せそうに笑っていた。愛する者の別離など、流れる時間が違おうが同じだろうが辛いに決まっている。それなら――。

「――そんなもの、幾らでもくれてやる」

  今、きっと自分たちは両親と同じ表情をしているだろう。

  そういう確信があった。


(了)
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