快楽の牢獄

真鉄

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快楽の牢獄

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「だからさ、ちんぽ以外も可愛がってやるんだよ」

  耳元でそう囁き、濡れた手をスヴェンの薄い脇腹へと滑らせた。びくりと震える腹筋をあやすように撫で、無骨な手は緩やかなシャツの中、胸元へと侵攻を始めた。

「さっきから気になってたんだよなぁ、シャツから透けてるこいつがよ……」
「……っ」

  白い薄手のシャツを、二つの尖りがぷくりと持ち上げていた。赤味がかった乳輪の色もかすかに透けて見えている。スヴェンは更に頬に血を登らせ、胸元が目立たないように背を丸めた。その恥じらうさまが嗜虐心を煽り、先ほどまで覚えていた憐憫と混ざり合う。無遠慮にシャツをたくし上げ、丸まった上半身を太い腕で抱き込んで無理やり露わにし、スヴェンの肩口から顔を出して覗き込んだ。

「ほー……すっげえな」
「……っ!」

  薄く平らかな胸の先には、ぷっくりと膨らんだ乳輪と小豆大の乳首がピンと勃ち上がっていた。赤く充血した乳輪の薄い皮膚は艶やかに光り、陽に当たらない生白い皮膚との対比がいやらしさを掻き立てている。テオドアは思わずごくりと喉を鳴らした。

「めちゃくちゃいやらしい形してんなぁ、先生……」
「わ、私の、せいじゃない……っ! メイテイカズラが……」

  そう囁くと、スヴェンは泣きそうな声をあげた。どうやら相当気にしていたようだ。肩先に置いた顎の下にめくりあげた服の裾を挟むと、自由になった両手でじわじわと侵攻を再会し始める。

「あのクソ植物は先生に何したんだい」
「ひっ……!」

  白い肌を這うテオドアの日に焼けた浅黒い手が、ついに両の乳首に触れた。途端、まるで電流でも流れたかのようにスヴェンの身体が跳ね上がり、テオドアは危うく舌を噛むところだった。何と敏感な反応だろう。乳頭に指を固定してくにくにと転がすと、その度にひくひくと腹筋が締まり、ひっきりなしに熱い息をこぼし始めた。声を聞かせたくないのか、手の甲で口元を押さえているのがまたそそる。

「すっげえ感度だなぁ。普通、女でもここまで感じやしねえぜ?」
「っ、う、私の、せいじゃ……あっあっ、んんっ……!」

  スヴェンが言い訳のために口を開いた隙にすかさず乳首を上下に弾くと、殺していた甘い声が漏れ、恥じらいに震えて項垂れる。男の嬌声など気持ち悪いだけのはずなのに、鼻にかかったスヴェンの泣き声はテオドアの嗜虐心を掻き立てる一方だった。乱暴にシャツの襟首からスヴェンの頭を抜くと、背中の中程まで引きおろす。中途半端に降ろされたシャツは肘のあたりでわだかまり、これでスヴェンは手で顔を隠せなくなった。湧き上がる愉快さに、テオドアは獰猛に歯を見せて笑った。

「ふぅん? じゃあ何をされたらこんな敏感でコリコリの乳首になるってんだ?」
「っ、う、それは……ぁっ」

  固く尖った乳首を指でつまみ上げ、爪の先で軽く引っ掻くと、薄い下腹に反り返った肉竿の先からとぷとぷと蜜が零れ落ちた。テオドアはそれをたっぷりと掬い取ると、赤く熟れた尖りに塗りつける。

「んんっ、あ、っやああ!」

  滑りの良くなった乳嘴を引っ張り、ぬめりに任せて弾くと、スヴェンはがくがくと腰を震わせて顎を仰け反らせた。乳首だけで達したな。そう思ったが、やはり屹立は涙を溢れさせるばかりで白濁を吐き出してはいなかった。

  テオドアの肩に頭を乗せ、荒い息をこぼす唇の端からとろりと唾液が垂れた。反射的にテオドアは舌を伸ばしてそれを舐めとった。――甘い。いやらしく甘い匂いに感化されたのか、それとも本当に甘いのか。テオドアは抱き込んでいたスヴェンの身体を乱暴に寝台に寝かせると、その細い顎を掴み上げて獰猛に口付けた。

「っ!? んんっ!……んっ、テオ……っ」

  熱い。そして甘い。分厚い舌はスヴェンの口中を我が物顔で蹂躙する。奥に引っ込んだスヴェンの舌を器用に搦め捕り、ざらつき、ぬめる舌同士をくちゅくちゅと擦り合わせた。ああ、甘い。ぞくぞくとテオドアの背筋が震え、ズボンを突き破らんばかりに雄竿が怒張しているのを自覚する。

「……あまい……」

  撹拌された互いの唾液を喉を鳴らして飲み込んだスヴェンがうっとりととろけたような表情で小さく呟いた。欲望を掻き毟るその表情に、テオドアは再度噛みつくように口づけた。今度はスヴェンも積極的に舌を絡めてくる。舌を舐め合いながら、指で敏感な胸を撫で回すとスヴェンの細い腰がびくんと跳ねた。

「もうおもらししたみてえにびしょびしょになってんのに、まだ出ねえのかい」

  仰臥して浮き出た腰骨の窪みには、とろとろと漏れ出す先走りが水たまりとなり、浅い臍は既に粘液の池に沈んでいる。スヴェンは恥ずかしげに顔を背け、苦しげな表情で小さく首を振った。

「先生よ、ほんとに何されたのか言ってくれよ。もしかしたら何か分かるかもしんねえだろ? な?」

  テオドアは真剣な面持ちと声音でスヴェンに語りかけた。辛そうで可哀想だというのが一番大きいが、尽きぬ好奇心が後押ししているのも否めない。一体、この堅物があの化け物にどんないやらしい目にあったのか。そしてどれだけ乱れたのか。――考えただけでも興奮する。

  ようやく決心がついたのか、スヴェンは小さな声で答えた。

「……あれの媚薬成分を、注入……された」
「どこに? どうやって?」

  唇をしばらく噛み締めた後、熱い溜め息をつくと、途切れ途切れに吐き出し始めた。

「触手に、胸を刺されて――。それから……、その、身体の中、に――」
「中――って、アンタ、川で吐いてたのはそのせいか」
「…………」

  無言のまま辛そうに目を逸らし、スヴェンの細い脚がもじもじと擦り合わされた。その仕種にテオドアは理解する。

  この人は触手に尻を犯されたのだ――。

  その想像は腹の底からむらむらと、熱いものを湧き立たせた。それはまぎれもなく愉悦を伴った肉欲だった。このお高く止まった先生が、触手に絡め取られて尻を犯されたなんて、何といやらしく、愉快なのだろう。

  だが、その気持ちも本当に辛そうなスヴェンを見ると胸の底へと沈んでいった。愉悦は憐憫へと裏返る。テオドアは手を伸ばし、スヴェンの黒髪を大きな手で優しく撫でた。

「……辛かったろ。頑張ったな」
「……っ」

  大粒の涙がスヴェンの目の縁に盛り上がり、やがて子供のように顔を歪めてスヴェンは声を殺して泣き始めた。つんけんした態度をとり続けてはいたが、身体は言うことを聞かず、受けた辱めを誰にも言えず、色々と辛かったのだろう。

  テオドアは横に寝そべると、スヴェンの細い身体を腕の中に抱き締めてやった。シャツが涙で濡れていくのが分かる。片手で頭を撫でてやりながら、腕に絡まったままのシャツを脱がせて自由にさせた。そのまま背中を撫で、薄い尻を撫でると、腕の中でびくりと細い身体がわなないた。

「ま、色々試してみようなあ」

  零れ落ちた涙に口づけ、吸い取る。やはりその雫は甘く思えた。スヴェンは洟をすすると小さく頷いた。

「……すまない」

  テオドアはかけられた謝罪の言葉にちらりと笑った。こんな状態で、どこまでも真面目な男だ。こちらとしては役得な上に恩も着せられるのだ。面白くてたまらない。愉悦と憐憫は表裏一体なのだ。

「じゃ、じっとしてな」

  テオドアはニヤリと笑うと舌を出し、ゆっくりと乳首へと近づけていく。苦しげに眉根を寄せたスヴェンの潤んだ目が、自分の行動をじっと見守っているのを上目遣いで確認しながら、尖らせた舌先でぷっくりと膨れた乳輪の周りをくるりと舐めた。

「……っ、う……」

  すべすべとした乳輪の薄い皮膚を丹念に舐める。すべらかな皮膚は舌に楽しく、テオドアは夢中になって舐めしゃぶった。舌先でふにふにとした柔らかさを、甘噛みしては歯の隙間から逃げていく肉の感触を楽しんだ。

「……テオ……」

  スヴェンの細く長い指がテオドアの後頭部を遠慮がちに撫でた。潤んだ目の縁を赤く染め、物言いたげなスヴェンと目が合う。充分焦らした、もういいだろう。一つ頷くとテオドアは大きく口を開け、ふっくらと盛り上がった乳輪ごと口に含むと強く吸い上げた。

「あっ、あああっ……!」

  いやらしい音を立てて乳首を吸い立てる。甘噛みした乳首の先を舌先で思う様弾いた後、ちゅぽ、と唇から外すと同時にスヴェンの腰ががくがくと震えた。また達したのだ。だが、薄い下腹の上でひくんひくんと上下する屹立からは、やはりただ透明な涙が零れおちるだけで、今回も解放には行き着かなかったようだ。

「まだ出ねえのか……」
「う……」

  尋常ではない量の粘液溜まりを指で掻き回しながらテオドアはいやらしく笑い、荒い息をつくスヴェンの耳元に口を寄せて囁いた。

「もうこれは、こっちもイジるしかねえよな?」
「……っ!?」

  太い腕を細い脚の間に差し入れ、ふっくらと張り詰めた会陰を辿り、先走りにぬめった指で尻の谷間に触れた。きつく力の込められた蕾をあやすように指で撫で回す。頬を紅潮させたスヴェンの目があちこちを泳いだ。迷っていると見たテオドアは駄目押しで耳元に囁きかけた。

「な、抱いてもいいだろ?」
「…………」

  驚いたように目を見開き、こちらを凝視するスヴェンに逆に面食らった。唐突すぎただろうか。その目はまた泳ぎ、伏せられた。唇がわななき、小さく呟く。

「……私なんかを抱けるのか?」

  その言葉にテオドアは無言で何度か目を瞬かせた。眼鏡のない神経質そうな顔を眺め、そういえば、と頷く。

「……アンタ、目が悪かったんだっけな」

  テオドアはスヴェンの太腿の上に跨ったまま、シャツを脱いだ。胸毛に覆われた分厚い胸板、ぼこぼこと凹凸がはっきりと分かる腹筋、丸太のような太い腕。全身にこれまでの冒険で負った細かな傷跡がそこかしこに刻まれていた。シャツをその辺に放り出し、テオドアの手はズボンの腰紐を解いていく。

「よく見なよ」
「……っ!」

  ぶるんと重たげに現れたその怒張は、まるで獲物を前にして頭をもたげた巨大な赤黒い蛇のようだった。エラが張り、周囲に太い血管を纏わせたグロテスクな肉竿は、下生えの生い茂る臍近くに届くほどに長く、太い。すんなりとしたスヴェンの肉茎と同じ器官とは思えないその威容を前にスヴェンは言葉を失った。

「……さっきから、アンタを犯したくてたまらねえ。なあ、先生。これは医療行為ってやつさ。アンタを治すための手段だ。――それならいいだろ?」

  こういうインテリは体面にこだわることをテオドアは経験で知っている。こんな状況でも他人に頼ろうとしなかったスヴェンは、特にこの傾向が強いと見ていいだろう。しばらくの逡巡の後、思った通りにスヴェンは小さく頷いた。

「――なら、私を治してくれ」
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