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「もちろん」
オダは白い歯を見せ、優しく笑った。そのまま安貴の背後から抜け出し、体勢をずり上げるよう指示された。だらしなく開きっぱなしになっていた足を慌てて閉じながら、低い肘置きに頭を乗せる。足に何かが当たったのでふと目をやると、尻と反対側の肘置きの空いた空間にオダが腰をかけるところだった。
「今度はアキちゃんの中の気持ちいいところを直接触っていくからね」
足を閉じたままやり場なく立てていた膝にオダの手が置かれる。微笑みながらじっと安貴の目を見つめるオダの指にかすかに力が篭った。開け、と――言外にその瞳は告げていた。かっと頬に血がのぼるのを感じながら、安貴は目を伏せ、ためらいがちにゆっくりと足を開いていった。あまりの羞恥に顔から火を吹きそうだ。だが、それだけでは済まなかった。
「アキちゃん、手で足を押さえてくれる? お尻が僕によく見えるようにね」
「えっ……」
「そっちの方がやりやすいんだ」
やんわりと笑うオダの顔はあまりにも平生で、むしろ恥ずかしがっている自分の方が異常なのでは、とすら思えてきた。変な汗をじりじりとかきながら、安貴は太ももの裏に手を添え、思い切ってそのまま引き上げる。
「……うん、よく見えるよ。ありがと、アキちゃん」
尻の谷間が天を向き、器具をくわえこんだままの肛門が安貴の目に飛び込んできた。その滑稽なさまに思わず顔を背け、真っ赤な顔のまま口をつぐんだ。ふっくらと赤く充血した肉の蕾から飛び出した白い蔦。それは滑稽であり――ひどく卑猥でもあった。
「っ、う……」
尻の中の器具が揺れた。オダが柄をつまみ、引っ張ったのだ。膨らみきったそら豆のような形状の器具のかすかな凹凸が肉蕾を内側から圧迫し、ぬるんとくびれがひとつ飛び出した。再び押しこまれ、引き出される。その背徳的な感触に震えた時、ふふ、とオダが小さく笑い、ローションに湿った谷間に息がかかった。肉孔の真近で出入りするさまを観察していたのだ。頭の中に心臓があるかのように、ずくずくと激しく脈打つ鼓動がひどくうるさかった。
「アナルで感じるっていうのはね、中だけじゃなくて、敏感な入り口も含めての快感なんだよ」
「は、はい……」
親指程度の太さの器具を中途半端にくわえこんだままのふわふわと膨らんだ肉蕾を指先で撫でながらオダが言う。確かに、この分厚い肛門括約筋はひどく敏感だ。気持ちいいともくすぐったいともつかない感覚が、オダの指がやわい肉を撫でるたびに安貴の理性を蝕み、肉孔をひくつかせた。ああ、今、器具が抜かれた。指の腹がやわらかな肉蕾をむちゅむちゅと円を描くように撫で回し――ゆっくりと入りこんでくる。
「っ、……!」
太腿を掴む安貴の指が肉に食いこんだ。異物感に思わず引き締めた括約筋が他人の体温と形をまざまざと伝えてくる。オダの指が抵抗するように小刻みに前後に抜き差しされ、肉蕾を弄ばれる感覚に安貴は震えた。
「駄目だよ、挿れられるときは締めるんじゃなくて、いきまないと。アキちゃんが痛いだけだよ」
ふふ、と笑った吐息が湿った肌を撫でる。そうだ、いきんで肛門を広げないと。それは今までの失敗の中で唯一安貴が身体で学んだことだ。羞恥に腕で目元を隠しながら、二、三度深呼吸した。
「ふっ、……う、うう……」
「そうだよ、よくできたね」
力をこめた肉蕾は小山のように盛り上がり、やわらかな内側の肉が外気にさらされる。本来ならば排出するための蠕動運動を、進入に利用される無力感と激しい異物感。締めつけてその進行を阻止したい気持ちを懸命に制御し、安貴は目を閉じたまま、ただただ体内の指の動きに集中した。挿しこまれた指は左右に回転しながら粘膜を探っていた。そして――。
「ひゃっ……!」
予期せぬ感触に安貴は思わず下肢に目をやった。オダの空いた方の手が、下着の上から安貴の股間を撫でていたのだ。ほとんど萎えていた肉茎を湿った布ごと握りこみ、ゆるくしごく。混乱した安貴と目があったオダがやんわりと笑う。
「びっくりした? ごめんね、勃起してた方が前立腺の位置が分かりやすいんだよね」
前袋の脇から少し力を取り戻し始めた肉茎とぷりっと張った陰嚢が引き出され、羞恥にどっと汗が滲んだ。仮性包茎の小振りな雄と鶏卵ほどはある大きめな玉のアンバランスさは、安貴にとってコンプレックスでもあったのだ。だが、潤んだ涙で揺れる視界の中、オダはただやんわりと――見ようによってはうっとりと、笑うだけだった。
「ふふ、アキちゃんもしかして絶倫? 金玉おっきいねぇ。毎日オナニーしてるの?」
「うう……」
「ちゃんと皮も剥いて綺麗にしてるんだねぇ。えらいね」
「ぅあ!?」
突然の濡れた感触に安貴は身をこわばらせた。陰嚢を転がし、包皮をやわらかく剥いてピンク色の亀頭を観察していたオダが、突然顔を寄せ、裏筋を舐め上げたのだ。ぬめりとざらつき、そして熱さ。それらが敏感な裏筋をたどり、亀頭のエラをこそぐように刺激するのだからたまらない。
「ちょ、オダさ、そんなんあかん……、ちんぽ舐めんといて……! あかんよぉ……!」
足を固定していた手を思わず外したものの、頭を掴むのも失礼か、どうするべきか、と迷っているうちに、オダの手管が若い安貴を快感の淵へと追い込んでいく。既にオダの手の中で肉茎はしっかりと芯を持ち、ぴくぴくと物欲しげにその身を震わせていた。
「口の中は男も女も一緒だよ。気持ちよくない?」
「あ、う……」
充血した亀頭を唇で甘く食みながら、オダがからかうように笑う。男が己の股間の上で勃起片手にいやらしく微笑んでいる図なんて今まで考えたこともなかったのに――。じっとこちらの目を見据えながら、赤い舌を出し、再び根元から先端に向かって裏筋を舐め上げるオダの艶かしさに、安貴は沸騰しそうなめまいを覚えていた。
「あ、ああ、あ、あ、あ、っ……!」
腹の中の指がぐにぐにと動き出す。それと同時に、さっきまでの直接的な陰茎刺激とは違う、濃く甘い快感が全身を震わせた。くりくりと指の腹が小さなふくらみを撫で、振動させ、押しこむ。その度に、安貴の筋肉質な身体は面白いほどに跳ね、震え、くねる。
「お尻の中、気持ちいい? アキちゃん」
「……っ! っ!」
こくこくとただ頷く。がちがちに勃起した肉茎からはとろとろと雫が垂れ、鳩尾をしとどに濡らしていたが、甘い電流に痺れっぱなしの安貴には気づく余裕すらなかった。指を増やすね、と言われ、意識もせず従順にいきんで男の指を咥えこむ。自分ではついぞ到達することのできなかった牝の濃く甘い快感に、いつしか安貴の理性はとろけきっていた。
「ふふ、アキちゃんのおまんこ、指二本ぐらいなら全然余裕だね。頑張って広げたもんね。えらいね」
えらいね。アキちゃんのおまんこ。がんばったね。オダの与える慰労と快楽が揶揄の言葉とともに安貴の脳髄に甘く染みこんでいった。指がこねる。腰が跳ねる。ひときわ細かい振動を与えられた後、断末魔のように二度上下に大きくひくつき、誰にも触れられていない屹立から勢いよく白濁が飛んだ。
「あ……っ、いっ、くぅっ……!」
びゅるるっ、びゅる、びゅ、と何回かに分けて大量の精液が安貴の腹に、胸元に、顎に飛ぶ。むせかえるような雄の匂い。生臭いような青臭いような――それでいて本能を駆り立てるような、匂い。
「触ってないのにいっぱい精子出たね。セルフ顔射しちゃって……すっごいえっちだなぁ。アキちゃんすけべすぎ。かわいいよ」
いつの間にか身を乗り上げていたオダが耳元で囁き、短い髪を優しく撫でた。そうだ、当初の目標をついに達成したのだ。安堵の息をついた途端、体内の指が再び動き出し、安貴は思わず悲鳴をあげた。
「イッた、オダさ、俺もうイッたから、あかんて……!」
「大丈夫だよ、もし精子を出し尽くしても、こっちなら女の子みたいに何度でもイケるからね」
体内の二本の指が広げられ、ぐちゅぐちゅといやらしい水音をたてながら出し入れされる。制止の声は甘い喘ぎにすぐに飲みこまれてしまった。指の節のゆるやかな凹凸が肉蕾を前後する度に、中を探られるのとはまた違う原始的な快感が安貴を夢中にさせる。耳朶を舐るオダの舌と熱い吐息。短い髪と頭皮をやわく撫でる大きな掌。
雄膣を甘く突かれるのは気持ちいい。肉蕾を前後にこすられるのも気持ちいい。オダの指は気持ちいい。舌も気持ちよかった。オダはやさしい。ほめてくれる。――好き。
初めての強烈な絶頂と誉め殺しに簡単にほだされた安貴が、オダの口づけを受け入れたのは必然だったと言えるだろう。安貴の厚ぼったい唇がちろりと舐められ、そのまま下唇を食むように口づけられた。当然、安貴にとっては初めてのキスで、唇も性感帯であることを意識したのも初めてだった。
「オダさ……」
ちゅ、ちゅ、とリップ音が頭の中でこだまする。オダの舌が分厚い唇を割り、歯列を舐め、舌を絡めた。オダの器用な舌が上顎の凹凸を舐めたとき、全身に喜悦の鳥肌がさざ波のように走り、全身を震わせた。舌同士が絡まりあい、しごかれ、吸われる。その間も体内の指は休まず安貴を甘く責め続け、身体は小爆発のような小さな絶頂に何度も跳ねた。
不意に唇が離れた。急に熱が去った寂しさに安貴は潤んだ目を開く。オダが唇から伸びた銀糸を拭いながら、とろとろにとろけきって濃い桜色に上気した安貴の顔を覗きこんだ。オダの明るい茶色の虹彩の中で大きく開いた瞳孔を見つめていると、その深い穴に飲みこまれてしまいそうな錯覚に陥る。熱っぽいその瞳に宿る光が安貴を射た。
「ねえ、アキちゃん……」
低く掠れた艶っぽい声が耳をくすぐる。そして、尻肉に何か固いものが当たっていることに安貴は気づいた。指が抜かれ、自然と安貴の腰が落ちる。膝立ちになったオダが己の下腹に手を伸ばした。見せつけるように。目を逸らせない。スキニーパンツの中で窮屈そうに斜めに持ち上がった膨らみ。もどかしそうにボタンを外し、ファスナーを下ろす長い指。腹の中が、ずく、と甘く疼いた。
「指より、もっと気持ちよくなりたくない?」
「あ……」
ごくりと喉が鳴ったのは果たしてどちらだったのか。飛び出したのは、臍まで届きそうな長大な屹立だった。太い血管を纏わせ、湯気でも立ちそうなほどに赤黒い威容だった。再び安貴の足の間に座り、掻き回されてふっくらとふくらんだままの肉蕾に先端が触れた。その熱さ。
「これで入り口こすられて、おまんこの中ぐちゃぐちゃにされたくない……?」
ずるい言い方だ。柔肉の上を長いストロークでオダの肉槍が前後する。こんなものが自分の体内に入りこみ、えぐり、こすりたてるのだ。気持ちよくないわけがない。今すぐにでも欲しい、と腹の奥がじぐじぐと甘く疼いている。
けれど、安貴にはどうしても聞きたい言葉があった。
「オダさんは、俺を抱きたいん……?」
上擦った声に混じる試すような響きに、オダが一瞬目を細めた。そして小さく笑うと上から覆いかぶさり、安貴の耳元に唇を寄せる。
「――アキちゃんが、欲しい」
低い声が鼓膜を震わせ、安貴の理性を完全に溶かした。思い描いていた理想の答え。広げたままの太腿に手を添わせ、恥じらうように目を伏せた。ほころんだ肉蕾が迎え入れるようにわななく。
「オダさんなら――ええよ」
求められる歓びと受け入れる悦び。声がかすれ、上擦るが気にしてなどいられない。灼熱とも思えるオダの先端に、濡れた肉蕾が口づけるように吸いついた。いきんだ肉がめくれ、やわらかな体内へと雄を誘う。今までに試したディルドや指などとは比べ物にならない質量が肉孔を押し広げ、入りこもうとしていた。
「あ……う、すご……」
「アキちゃん、痛くない? 大丈夫?」
優しい声にこくこくと頷く。十分にぬめりをまとった粘膜は、痛みどころか、ただ進入するだけの摩擦にすら快感をもたらしていた。少しずつゆっくりと入ってくる、それだけで脳の神経が擦り切れてしまいそうだった。オダの肉槍に絡みつく血管の凹凸をも感じとっている――そんな気すらする。
「あっ――あ、あ、あ、あ、あ、あっ、ひっ……」
「ここがさっきまで指マンしてたアキちゃんの気持ちいいとこだよ。分かる?」
「わか、分かるっ、っ、う、あ……」
先端がごつごつと小刻みに安貴の中を小突き上げ、その度に情けなく裏返った甲高い声が安貴の口から漏れた。下腹の上で揺れる小ぶりな肉茎から垂れ落ちた雫がぱたぱたと肌に散る。
「あ……」
不意に目の前が翳った。足を掬い上げられ、体側へと折り曲げられた。尻が天を向き、まだ全部を収めきれていない接合部がぬらぬらと光る。身を乗り上げたオダと目が合った。興奮に開き切った瞳孔と、情欲にぎらついた目の光。目の前の餌に食らいつく直前の肉食獣めいてちろりと唇を舐める、かつては優しげだったオダの顔。捕食される歓喜がぞくぞくと安貴の背筋を駆け上がっていく。
「オダ、さ……」
「ねえ、アキちゃんのおまんこの奥の奥まで僕でいっぱいにしていい?」
艶やかな囁き声が脳髄を甘く揺らす。はい、と言えたかどうか。気がついたときには、雷が落ちたような激しいハレーションに首を仰け反らせ、甘い悲鳴の残滓が喉を震わせていた。鳩尾は肉茎から噴き出した自らの体液でぐっしょりと濡れている。一体自分の身体に何が起こったのか、安貴にはまるで分からなかった。分かるのは、ただ全身が甘く痺れ、体内がオダの灼熱でみっちりと埋まり尽くしているということだけ――。
「ふふ、僕のちんぽ挿れただけで潮噴いてイッちゃったんだ。かわいいなぁ……」
腹筋を濡らす体液を、さきほど散った安貴の精液とともに塗り伸ばし、オダがいやらしく笑う。そのまま掬い上げるようにもっちりと盛り上がった胸筋を掌で揉んだ。胸の尖りをつまみ、くりくりと甘く潰されると、勝手に雄膣が体内を貫く肉槍に絡みつき、更に奥へと引き入れようと媚びてしまう。
「あ、や、あかん、オダさ、また俺、漏らしてまう……」
軽く中をノックされるだけで、尿意が限界まで切羽つまったときの痛みとも快感ともつかない感覚が、腹の奥に蓄積されていく。トイレを我慢する子供のように、安貴は手を伸ばし、垂れた肉茎を押さえこんだ。潮も小便も似たようなものだ。恥ずかしくてたまらない。オダが歯を見せて嗤った。
「だぁめ。手を離すんだ、アキちゃん。ちんぽ突っ込まれて潮噴くとこ僕に見せて」
「でも、でも……っ」
「潮吹きのできる男の子って珍しいんだよ。すごいよアキちゃん。身体がえっちな子は素質もあるのかな」
「う……」
オダが――喜ぶのなら。安貴は逡巡の末、ゆっくりと手を離し、所在なげに脇に垂らした。オダが満足そうに目を細め、腰の律動を開始する。乳首をまるで取手のようにつまみながら、細かく腰を打ちつける。
「あっ、あっ、あっ、あぅ、出ちゃう、オダさ、また出る……っ!」
「大丈夫だよ。いっぱい出して」
「っ……!」
そう言って、オダは腰を突き上げた。声にならない悲鳴をあげ、安貴の顎が跳ね上がる。射精とも我慢しきった後の排泄ともつかない、理性が焦げつくような快感が尿道を灼く。透明な体液がオダの動きに合わせて何度も何度も噴き出し、汚れた肌を濡らしては下に敷いたバスタオルを湿らせた。
「ふふっ、すごいね。もうこんなの完全におまんこだよねぇ」
「オダ、さ……」
「たまんないなぁ。入り口がきゅんきゅん締まってさ。僕が欲しいって中が絡んでくるの。アキちゃんの身体、ほんとすけべすぎるよねぇ……」
「う、あ……」
今やオダは完全に身を乗り上げ、安貴の耳元に口をつけて、卑猥な言葉をうわ言のように囁き続けていた。低い囁き声が洗脳のように安貴の頭にこだまし、指先まで甘く痺れさせる。杭打ちのごとく真上から深々とやわらかな媚肉を掘り返されるのも、乳首を指先でくりくりと転がされるのも、耳朶をくすぐるやわらかい顎髭も、首筋から香る汗とシトラスの入り混じった匂いも、オダの全てが安貴に快感を与え、絶頂へと導いていく。
「ねえアキちゃん、僕もうイクよ。アキちゃんのおまんこ気持ちよすぎて我慢できない。出していい? アキちゃんの一番奥にいっぱい種付けしていい?」
「あ、あ、あ、オダ、さ、出して……、俺ん中、そのまま、っ……!」
うわ言のようなオダの言葉に回らぬ舌でそう返し、打ちつける腰に自ら足を絡めた。不意にオダの顔が視界いっぱいに広がり、安貴は受け入れるように目を閉じて、分厚い唇をそっと開くとちろりと舌を見せた。くすりと小さく笑う声。恥じて引っ込みかけた舌はすぐオダの唇に捕らえられ、まるでフェラチオのようにしゃぶられた。嬉しさが身体中を駆け巡る。恐る恐る手を伸ばし、オダの首に腕を巻くと、更に口づけは深まった。
「~~~ッッッ!!」
ひときわ奥深くに収まった雄茎がびぐびぐとわななく。その蠢動は安貴の身体の隅々までとろけさせるような絶頂をもたらした。断末魔の叫びは言葉を忘れた獣の唸り声にも似ていた。きゅんきゅんとやわらかな肉蕾が締まり、媚肉に叩きつけられたオダの精液を更に搾り取らんと絡みつく。しばらくして、オダにしがみついていた手足は力なく落ち、ぼんやりと目と唇を開いたまま、どちらのものともつかない唾液を呑みこんで、小さく安貴の喉が鳴った。
今まで生きてきて初めて味わった意識が飛ぶほどの絶頂に、安貴はただ激しく息をつき、全身を痺れさせる甘さをふわふわと感受していた。目の前の琥珀色の瞳の男が目を細め、再び口づけて来るのを幸せな気持ちで迎え入れる。
きもちいい。しあわせ。すき。
三語で満たされた安貴には、その琥珀色の瞳が狡猾に細まったことなど気にもならなかった。
オダは白い歯を見せ、優しく笑った。そのまま安貴の背後から抜け出し、体勢をずり上げるよう指示された。だらしなく開きっぱなしになっていた足を慌てて閉じながら、低い肘置きに頭を乗せる。足に何かが当たったのでふと目をやると、尻と反対側の肘置きの空いた空間にオダが腰をかけるところだった。
「今度はアキちゃんの中の気持ちいいところを直接触っていくからね」
足を閉じたままやり場なく立てていた膝にオダの手が置かれる。微笑みながらじっと安貴の目を見つめるオダの指にかすかに力が篭った。開け、と――言外にその瞳は告げていた。かっと頬に血がのぼるのを感じながら、安貴は目を伏せ、ためらいがちにゆっくりと足を開いていった。あまりの羞恥に顔から火を吹きそうだ。だが、それだけでは済まなかった。
「アキちゃん、手で足を押さえてくれる? お尻が僕によく見えるようにね」
「えっ……」
「そっちの方がやりやすいんだ」
やんわりと笑うオダの顔はあまりにも平生で、むしろ恥ずかしがっている自分の方が異常なのでは、とすら思えてきた。変な汗をじりじりとかきながら、安貴は太ももの裏に手を添え、思い切ってそのまま引き上げる。
「……うん、よく見えるよ。ありがと、アキちゃん」
尻の谷間が天を向き、器具をくわえこんだままの肛門が安貴の目に飛び込んできた。その滑稽なさまに思わず顔を背け、真っ赤な顔のまま口をつぐんだ。ふっくらと赤く充血した肉の蕾から飛び出した白い蔦。それは滑稽であり――ひどく卑猥でもあった。
「っ、う……」
尻の中の器具が揺れた。オダが柄をつまみ、引っ張ったのだ。膨らみきったそら豆のような形状の器具のかすかな凹凸が肉蕾を内側から圧迫し、ぬるんとくびれがひとつ飛び出した。再び押しこまれ、引き出される。その背徳的な感触に震えた時、ふふ、とオダが小さく笑い、ローションに湿った谷間に息がかかった。肉孔の真近で出入りするさまを観察していたのだ。頭の中に心臓があるかのように、ずくずくと激しく脈打つ鼓動がひどくうるさかった。
「アナルで感じるっていうのはね、中だけじゃなくて、敏感な入り口も含めての快感なんだよ」
「は、はい……」
親指程度の太さの器具を中途半端にくわえこんだままのふわふわと膨らんだ肉蕾を指先で撫でながらオダが言う。確かに、この分厚い肛門括約筋はひどく敏感だ。気持ちいいともくすぐったいともつかない感覚が、オダの指がやわい肉を撫でるたびに安貴の理性を蝕み、肉孔をひくつかせた。ああ、今、器具が抜かれた。指の腹がやわらかな肉蕾をむちゅむちゅと円を描くように撫で回し――ゆっくりと入りこんでくる。
「っ、……!」
太腿を掴む安貴の指が肉に食いこんだ。異物感に思わず引き締めた括約筋が他人の体温と形をまざまざと伝えてくる。オダの指が抵抗するように小刻みに前後に抜き差しされ、肉蕾を弄ばれる感覚に安貴は震えた。
「駄目だよ、挿れられるときは締めるんじゃなくて、いきまないと。アキちゃんが痛いだけだよ」
ふふ、と笑った吐息が湿った肌を撫でる。そうだ、いきんで肛門を広げないと。それは今までの失敗の中で唯一安貴が身体で学んだことだ。羞恥に腕で目元を隠しながら、二、三度深呼吸した。
「ふっ、……う、うう……」
「そうだよ、よくできたね」
力をこめた肉蕾は小山のように盛り上がり、やわらかな内側の肉が外気にさらされる。本来ならば排出するための蠕動運動を、進入に利用される無力感と激しい異物感。締めつけてその進行を阻止したい気持ちを懸命に制御し、安貴は目を閉じたまま、ただただ体内の指の動きに集中した。挿しこまれた指は左右に回転しながら粘膜を探っていた。そして――。
「ひゃっ……!」
予期せぬ感触に安貴は思わず下肢に目をやった。オダの空いた方の手が、下着の上から安貴の股間を撫でていたのだ。ほとんど萎えていた肉茎を湿った布ごと握りこみ、ゆるくしごく。混乱した安貴と目があったオダがやんわりと笑う。
「びっくりした? ごめんね、勃起してた方が前立腺の位置が分かりやすいんだよね」
前袋の脇から少し力を取り戻し始めた肉茎とぷりっと張った陰嚢が引き出され、羞恥にどっと汗が滲んだ。仮性包茎の小振りな雄と鶏卵ほどはある大きめな玉のアンバランスさは、安貴にとってコンプレックスでもあったのだ。だが、潤んだ涙で揺れる視界の中、オダはただやんわりと――見ようによってはうっとりと、笑うだけだった。
「ふふ、アキちゃんもしかして絶倫? 金玉おっきいねぇ。毎日オナニーしてるの?」
「うう……」
「ちゃんと皮も剥いて綺麗にしてるんだねぇ。えらいね」
「ぅあ!?」
突然の濡れた感触に安貴は身をこわばらせた。陰嚢を転がし、包皮をやわらかく剥いてピンク色の亀頭を観察していたオダが、突然顔を寄せ、裏筋を舐め上げたのだ。ぬめりとざらつき、そして熱さ。それらが敏感な裏筋をたどり、亀頭のエラをこそぐように刺激するのだからたまらない。
「ちょ、オダさ、そんなんあかん……、ちんぽ舐めんといて……! あかんよぉ……!」
足を固定していた手を思わず外したものの、頭を掴むのも失礼か、どうするべきか、と迷っているうちに、オダの手管が若い安貴を快感の淵へと追い込んでいく。既にオダの手の中で肉茎はしっかりと芯を持ち、ぴくぴくと物欲しげにその身を震わせていた。
「口の中は男も女も一緒だよ。気持ちよくない?」
「あ、う……」
充血した亀頭を唇で甘く食みながら、オダがからかうように笑う。男が己の股間の上で勃起片手にいやらしく微笑んでいる図なんて今まで考えたこともなかったのに――。じっとこちらの目を見据えながら、赤い舌を出し、再び根元から先端に向かって裏筋を舐め上げるオダの艶かしさに、安貴は沸騰しそうなめまいを覚えていた。
「あ、ああ、あ、あ、あ、っ……!」
腹の中の指がぐにぐにと動き出す。それと同時に、さっきまでの直接的な陰茎刺激とは違う、濃く甘い快感が全身を震わせた。くりくりと指の腹が小さなふくらみを撫で、振動させ、押しこむ。その度に、安貴の筋肉質な身体は面白いほどに跳ね、震え、くねる。
「お尻の中、気持ちいい? アキちゃん」
「……っ! っ!」
こくこくとただ頷く。がちがちに勃起した肉茎からはとろとろと雫が垂れ、鳩尾をしとどに濡らしていたが、甘い電流に痺れっぱなしの安貴には気づく余裕すらなかった。指を増やすね、と言われ、意識もせず従順にいきんで男の指を咥えこむ。自分ではついぞ到達することのできなかった牝の濃く甘い快感に、いつしか安貴の理性はとろけきっていた。
「ふふ、アキちゃんのおまんこ、指二本ぐらいなら全然余裕だね。頑張って広げたもんね。えらいね」
えらいね。アキちゃんのおまんこ。がんばったね。オダの与える慰労と快楽が揶揄の言葉とともに安貴の脳髄に甘く染みこんでいった。指がこねる。腰が跳ねる。ひときわ細かい振動を与えられた後、断末魔のように二度上下に大きくひくつき、誰にも触れられていない屹立から勢いよく白濁が飛んだ。
「あ……っ、いっ、くぅっ……!」
びゅるるっ、びゅる、びゅ、と何回かに分けて大量の精液が安貴の腹に、胸元に、顎に飛ぶ。むせかえるような雄の匂い。生臭いような青臭いような――それでいて本能を駆り立てるような、匂い。
「触ってないのにいっぱい精子出たね。セルフ顔射しちゃって……すっごいえっちだなぁ。アキちゃんすけべすぎ。かわいいよ」
いつの間にか身を乗り上げていたオダが耳元で囁き、短い髪を優しく撫でた。そうだ、当初の目標をついに達成したのだ。安堵の息をついた途端、体内の指が再び動き出し、安貴は思わず悲鳴をあげた。
「イッた、オダさ、俺もうイッたから、あかんて……!」
「大丈夫だよ、もし精子を出し尽くしても、こっちなら女の子みたいに何度でもイケるからね」
体内の二本の指が広げられ、ぐちゅぐちゅといやらしい水音をたてながら出し入れされる。制止の声は甘い喘ぎにすぐに飲みこまれてしまった。指の節のゆるやかな凹凸が肉蕾を前後する度に、中を探られるのとはまた違う原始的な快感が安貴を夢中にさせる。耳朶を舐るオダの舌と熱い吐息。短い髪と頭皮をやわく撫でる大きな掌。
雄膣を甘く突かれるのは気持ちいい。肉蕾を前後にこすられるのも気持ちいい。オダの指は気持ちいい。舌も気持ちよかった。オダはやさしい。ほめてくれる。――好き。
初めての強烈な絶頂と誉め殺しに簡単にほだされた安貴が、オダの口づけを受け入れたのは必然だったと言えるだろう。安貴の厚ぼったい唇がちろりと舐められ、そのまま下唇を食むように口づけられた。当然、安貴にとっては初めてのキスで、唇も性感帯であることを意識したのも初めてだった。
「オダさ……」
ちゅ、ちゅ、とリップ音が頭の中でこだまする。オダの舌が分厚い唇を割り、歯列を舐め、舌を絡めた。オダの器用な舌が上顎の凹凸を舐めたとき、全身に喜悦の鳥肌がさざ波のように走り、全身を震わせた。舌同士が絡まりあい、しごかれ、吸われる。その間も体内の指は休まず安貴を甘く責め続け、身体は小爆発のような小さな絶頂に何度も跳ねた。
不意に唇が離れた。急に熱が去った寂しさに安貴は潤んだ目を開く。オダが唇から伸びた銀糸を拭いながら、とろとろにとろけきって濃い桜色に上気した安貴の顔を覗きこんだ。オダの明るい茶色の虹彩の中で大きく開いた瞳孔を見つめていると、その深い穴に飲みこまれてしまいそうな錯覚に陥る。熱っぽいその瞳に宿る光が安貴を射た。
「ねえ、アキちゃん……」
低く掠れた艶っぽい声が耳をくすぐる。そして、尻肉に何か固いものが当たっていることに安貴は気づいた。指が抜かれ、自然と安貴の腰が落ちる。膝立ちになったオダが己の下腹に手を伸ばした。見せつけるように。目を逸らせない。スキニーパンツの中で窮屈そうに斜めに持ち上がった膨らみ。もどかしそうにボタンを外し、ファスナーを下ろす長い指。腹の中が、ずく、と甘く疼いた。
「指より、もっと気持ちよくなりたくない?」
「あ……」
ごくりと喉が鳴ったのは果たしてどちらだったのか。飛び出したのは、臍まで届きそうな長大な屹立だった。太い血管を纏わせ、湯気でも立ちそうなほどに赤黒い威容だった。再び安貴の足の間に座り、掻き回されてふっくらとふくらんだままの肉蕾に先端が触れた。その熱さ。
「これで入り口こすられて、おまんこの中ぐちゃぐちゃにされたくない……?」
ずるい言い方だ。柔肉の上を長いストロークでオダの肉槍が前後する。こんなものが自分の体内に入りこみ、えぐり、こすりたてるのだ。気持ちよくないわけがない。今すぐにでも欲しい、と腹の奥がじぐじぐと甘く疼いている。
けれど、安貴にはどうしても聞きたい言葉があった。
「オダさんは、俺を抱きたいん……?」
上擦った声に混じる試すような響きに、オダが一瞬目を細めた。そして小さく笑うと上から覆いかぶさり、安貴の耳元に唇を寄せる。
「――アキちゃんが、欲しい」
低い声が鼓膜を震わせ、安貴の理性を完全に溶かした。思い描いていた理想の答え。広げたままの太腿に手を添わせ、恥じらうように目を伏せた。ほころんだ肉蕾が迎え入れるようにわななく。
「オダさんなら――ええよ」
求められる歓びと受け入れる悦び。声がかすれ、上擦るが気にしてなどいられない。灼熱とも思えるオダの先端に、濡れた肉蕾が口づけるように吸いついた。いきんだ肉がめくれ、やわらかな体内へと雄を誘う。今までに試したディルドや指などとは比べ物にならない質量が肉孔を押し広げ、入りこもうとしていた。
「あ……う、すご……」
「アキちゃん、痛くない? 大丈夫?」
優しい声にこくこくと頷く。十分にぬめりをまとった粘膜は、痛みどころか、ただ進入するだけの摩擦にすら快感をもたらしていた。少しずつゆっくりと入ってくる、それだけで脳の神経が擦り切れてしまいそうだった。オダの肉槍に絡みつく血管の凹凸をも感じとっている――そんな気すらする。
「あっ――あ、あ、あ、あ、あ、あっ、ひっ……」
「ここがさっきまで指マンしてたアキちゃんの気持ちいいとこだよ。分かる?」
「わか、分かるっ、っ、う、あ……」
先端がごつごつと小刻みに安貴の中を小突き上げ、その度に情けなく裏返った甲高い声が安貴の口から漏れた。下腹の上で揺れる小ぶりな肉茎から垂れ落ちた雫がぱたぱたと肌に散る。
「あ……」
不意に目の前が翳った。足を掬い上げられ、体側へと折り曲げられた。尻が天を向き、まだ全部を収めきれていない接合部がぬらぬらと光る。身を乗り上げたオダと目が合った。興奮に開き切った瞳孔と、情欲にぎらついた目の光。目の前の餌に食らいつく直前の肉食獣めいてちろりと唇を舐める、かつては優しげだったオダの顔。捕食される歓喜がぞくぞくと安貴の背筋を駆け上がっていく。
「オダ、さ……」
「ねえ、アキちゃんのおまんこの奥の奥まで僕でいっぱいにしていい?」
艶やかな囁き声が脳髄を甘く揺らす。はい、と言えたかどうか。気がついたときには、雷が落ちたような激しいハレーションに首を仰け反らせ、甘い悲鳴の残滓が喉を震わせていた。鳩尾は肉茎から噴き出した自らの体液でぐっしょりと濡れている。一体自分の身体に何が起こったのか、安貴にはまるで分からなかった。分かるのは、ただ全身が甘く痺れ、体内がオダの灼熱でみっちりと埋まり尽くしているということだけ――。
「ふふ、僕のちんぽ挿れただけで潮噴いてイッちゃったんだ。かわいいなぁ……」
腹筋を濡らす体液を、さきほど散った安貴の精液とともに塗り伸ばし、オダがいやらしく笑う。そのまま掬い上げるようにもっちりと盛り上がった胸筋を掌で揉んだ。胸の尖りをつまみ、くりくりと甘く潰されると、勝手に雄膣が体内を貫く肉槍に絡みつき、更に奥へと引き入れようと媚びてしまう。
「あ、や、あかん、オダさ、また俺、漏らしてまう……」
軽く中をノックされるだけで、尿意が限界まで切羽つまったときの痛みとも快感ともつかない感覚が、腹の奥に蓄積されていく。トイレを我慢する子供のように、安貴は手を伸ばし、垂れた肉茎を押さえこんだ。潮も小便も似たようなものだ。恥ずかしくてたまらない。オダが歯を見せて嗤った。
「だぁめ。手を離すんだ、アキちゃん。ちんぽ突っ込まれて潮噴くとこ僕に見せて」
「でも、でも……っ」
「潮吹きのできる男の子って珍しいんだよ。すごいよアキちゃん。身体がえっちな子は素質もあるのかな」
「う……」
オダが――喜ぶのなら。安貴は逡巡の末、ゆっくりと手を離し、所在なげに脇に垂らした。オダが満足そうに目を細め、腰の律動を開始する。乳首をまるで取手のようにつまみながら、細かく腰を打ちつける。
「あっ、あっ、あっ、あぅ、出ちゃう、オダさ、また出る……っ!」
「大丈夫だよ。いっぱい出して」
「っ……!」
そう言って、オダは腰を突き上げた。声にならない悲鳴をあげ、安貴の顎が跳ね上がる。射精とも我慢しきった後の排泄ともつかない、理性が焦げつくような快感が尿道を灼く。透明な体液がオダの動きに合わせて何度も何度も噴き出し、汚れた肌を濡らしては下に敷いたバスタオルを湿らせた。
「ふふっ、すごいね。もうこんなの完全におまんこだよねぇ」
「オダ、さ……」
「たまんないなぁ。入り口がきゅんきゅん締まってさ。僕が欲しいって中が絡んでくるの。アキちゃんの身体、ほんとすけべすぎるよねぇ……」
「う、あ……」
今やオダは完全に身を乗り上げ、安貴の耳元に口をつけて、卑猥な言葉をうわ言のように囁き続けていた。低い囁き声が洗脳のように安貴の頭にこだまし、指先まで甘く痺れさせる。杭打ちのごとく真上から深々とやわらかな媚肉を掘り返されるのも、乳首を指先でくりくりと転がされるのも、耳朶をくすぐるやわらかい顎髭も、首筋から香る汗とシトラスの入り混じった匂いも、オダの全てが安貴に快感を与え、絶頂へと導いていく。
「ねえアキちゃん、僕もうイクよ。アキちゃんのおまんこ気持ちよすぎて我慢できない。出していい? アキちゃんの一番奥にいっぱい種付けしていい?」
「あ、あ、あ、オダ、さ、出して……、俺ん中、そのまま、っ……!」
うわ言のようなオダの言葉に回らぬ舌でそう返し、打ちつける腰に自ら足を絡めた。不意にオダの顔が視界いっぱいに広がり、安貴は受け入れるように目を閉じて、分厚い唇をそっと開くとちろりと舌を見せた。くすりと小さく笑う声。恥じて引っ込みかけた舌はすぐオダの唇に捕らえられ、まるでフェラチオのようにしゃぶられた。嬉しさが身体中を駆け巡る。恐る恐る手を伸ばし、オダの首に腕を巻くと、更に口づけは深まった。
「~~~ッッッ!!」
ひときわ奥深くに収まった雄茎がびぐびぐとわななく。その蠢動は安貴の身体の隅々までとろけさせるような絶頂をもたらした。断末魔の叫びは言葉を忘れた獣の唸り声にも似ていた。きゅんきゅんとやわらかな肉蕾が締まり、媚肉に叩きつけられたオダの精液を更に搾り取らんと絡みつく。しばらくして、オダにしがみついていた手足は力なく落ち、ぼんやりと目と唇を開いたまま、どちらのものともつかない唾液を呑みこんで、小さく安貴の喉が鳴った。
今まで生きてきて初めて味わった意識が飛ぶほどの絶頂に、安貴はただ激しく息をつき、全身を痺れさせる甘さをふわふわと感受していた。目の前の琥珀色の瞳の男が目を細め、再び口づけて来るのを幸せな気持ちで迎え入れる。
きもちいい。しあわせ。すき。
三語で満たされた安貴には、その琥珀色の瞳が狡猾に細まったことなど気にもならなかった。
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