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異世界渡界編

身分証の登録をしよう

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キリッとしたメガネ姿のカーシャさんは学校の先生が似合いそうだなーとどーでもいいことを考える叶翔。

「えっと、先ほどから渡界者とかいものと言っておりますが、正確には、『時の渡界者とかいしゃ』と言うんですよ。
ですが、とある渡界者が『田舎者いなかもの?……渡界者とかいもの……うん、とかいもの、だよな!』 と言うので、いつの頃からか渡界者とかいしゃではなく、渡界者とかいものと言うようになりました」

あー、言いたいことは何となく分かるけども、渡界者とかいしゃの方がマシだったよ!

それから、カーシャさんは、『時の渡界者』について教えてくれた。

渡界者を保護する法律があったのは、渡界者が貴重な情報を持っていたから。
渡界者によってもたらされた情報は様々で文明の発展に繋がった。
一昔前の渡界者は大いにこの世界に貢献したらしい。

渡界者がこの世界に現れることも珍しいことではない。…というか、かなりの人数が訪れたんだとか。
それこそ、数千、数万人の記録がある程に。

数万人もの渡界者のお蔭で、この世界は目まぐるしく発展した。
今では、渡界者の方がこの世界を見て驚く程度には、成長してしまったのだ。…成長し過ぎ。

うん、近未来とファンタジーが混入りざってる感じかな。店や斡旋ギルドのドアは自動ドアだった。
電気の代わりに魔法が盛んなので、魔力で賄っているんだとか。

まあ要するに渡界者の情報はもはや重要なものはなく、保護する価値もないということかなー。

最低限の生活をする手助けはするが、それだけ。
自由に自己責任でお好きにどうぞ…まあ、そんな感じらしい。

過去の渡界者達は、どんだけ情報提供したんだよ!
この世界に貢献したというよりも、やりたい放題しただけだよね。…たぶん。
少しは自重しろよ! とは思うが、今更だ。

渡界者の保護する法律がなくなり、かなりの年月が過ぎていることは、カーシャさんの話から理解できた。
無いものは今更どうしようもない。


「『時の渡界者』の方達は、魔法やスキルが存在しない世界だと聞いております。そこで、渡界者とかいものが出現したら、こちらの渡界者セットを渡すことが義務付けされてます」

虹色の水晶?ビー玉くらいの大きさのモノを手渡された。
虹色の小さな水晶玉はあっという間に体に吸収されて消えた。

「えーー!」

「無事に吸収されたようですね」

えー、何が起こったの? ねー? 

叶翔の疑問や驚きをまるっと無視して進めるカーシャさん。

「早速ですが、身分証になる個人カードの発行をしましょう。身分証発行には通常1000オンかかりますが、渡界者は無料で発行しております。但し、再発行には3000オンかかりますので、紛失しないように気をつけてくださいね。
手続きは簡単でこちらの水晶に自分の名前を念じながら触れるだけです。すると、性別、年齢、体力(生命力)、魔力、スキルなどが表示されます。
説明するよりも実際に見た方が早いので水晶に手を載せてください」

カーシャさんに言われた通り、水晶に手を載せると、水晶から淡い光が。
ピカリーンという音がすると何処からか個人カードが現れる。

個人カードには、
<表側>
名前:カナト ホムラ
性別:男
年齢:15歳
登録地:コメリ皇国  エフメリ地区
<残高>
0オン

ーーーーー
<裏側>
体力(生命力):1+10
魔力:0.4
<スキル>
隠蔽
言語理解
<従魔>
 ー 
<称号>
時の渡界者


「個人カードに本人認識の登録をします。このカードで殆どのお店で支払いが出来ます。使えないのは一部の屋台ぐらいになります。全財産をこのカードで管理することになります。犯罪防止、盗難防止機能がありますので、決して他人に不正行為をされることはありません。本人認識の登録には、血液を一滴垂らしてください。はい、どうぞ」

全財産をカードで管理するとは、クレジットカードとかデビットカードのようなモノかな。
かなり便利だけど、一部の屋台では使えないらしい。
犯罪や盗難防止機能は、本人から一定距離離れると自動で手元に戻ってくるんだって。
なにソレ? 超凄い!

で、でもさ、血液を一滴垂らすのに、なんでナイフ? ここは針でいいのでは? 
簡単にはい、どうぞと言われて、ナイフを目の前にすっと出されてるんだけど……えーと、指を切るの? マジで!

いやいや、印鑑みたいに指紋で認識しようよ!
あー、カーシャさんが何してるの? 早くして、と無言で圧力かけてくる。

いや、だってさ、自分で指切るなんてしたことないんだよ。
僕は平凡な高校生なんだよ、自傷行為なんてハードル高いわ!
うーむ、ヤらないと進まないから、気合を入れて頑張りましたとも、ぐすん。

スキルは表示の有無が選択できる。通常は非表示でオッケーらしい。聞かれたら教えればいいそうだ。
スキルは切り札にもなるので、その時の状況に応じてどのスキルを教えるか判断すればよいとか。むやみやたらと見せびらかした教えたりするモノではないそうだ。

まー、そうだよねー。能力を悪用しようとする者もいるだろうし、敵に能力を知られるのも困るよね。

個人カードを見ると、おかしな点が幾つかあるのは気のせいかな。
色々とツッコミたい叶翔だが、カーシャさんに自分と同じ年代の体力と魔力の一般的な数値を尋ねてみる。

体力(生命力):年齢プラス10~20、魔力:年齢プラス5~10、スキルは3だとか……やっぱりね。

個人カードを見た瞬間のカーシャさんの顔が哀れんでるように思えたので、そんなことだろうと思ったよ。

ちなみに、渡界者は体力(生命力):年齢プラス30~50、魔力:5~50、スキルは3~5らしい。

どうやら、叶翔は赤ん坊並に貧弱らしい。


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