MONSTER

N.ikoru

文字の大きさ
上 下
30 / 34

欠落(4)

しおりを挟む
 取りあえず、今後の段取りを終えるとロヴィンは、イグニートに任されていた任務を遂行させてくると言う。それには数日かかると言われ、仕方なくそれが終わるまで、この町に滞在することになった。
 その日、数日ぶりの湯浴みをする。宿屋の湯浴みは皆で使うことが多いこともあり、同じように旅をしているという年配の女と一緒に湯浴みをすることになった。

「あらら、若いっていいわね……」
「え……」
「恋人と旅をしてるの?」
「えーっと、まあ……、そんな感じです」

 ふんふん、と鼻歌を溢しながら、女性は豊満な身体を揺すり、「私だって若い頃は寝かせてもらえなかったのよ」と、レベッカの胸に複数ある赤い痕のひとつを、つんと突っつく。

「きゃっ! なにするんですか……」
「いいわねぇ、そんな反応出来るなんて……はぁ……」

 いったい、何の話なの……、と咄嗟に隠した胸を抑えながら、レベッカが小首をかしげていると、豊満な身体の女性が「とっておきの技を教えてあげるわ」と言う。

 ――技?

 格闘の達人には見えないけど、と疑問に思いつつ、レベッカは女性の説明を聞いた。よく分からない技を伝授してもらい、湯浴みを終えて部屋へ戻れば、既に彼は寝台で横になっていた。

「もう戻ってらっしゃったんですね」
「ああ、何だか変な男に絡まれた」
「奇遇ですね、私も変な女性に絡まれました」
「そうか……」

 妙な空気が漂い始めたが、それを無視してレベッカは空いてる寝台へ向かい腰を落とした。
 チラっとセルジオを見れば、彼は静かに目を閉じており、自分も寝台へ身を沈めた。
 レベッカの要望通り、二つの寝台を用意してもらったのに、何故こんなに物足りない気持ちになるのか、と思っているとギっと寝台が揺れる音が聞えて隣を見た。
 
「どうした眠れないのか?」
「え、ええ……」
「そうか、母親の安否を考えれば当然だな」

 いいえ、眠れないのは変な技を聞いたせいなのだけど、とレベッカは苦笑いを浮かべた。
 湯浴みを共にした女性から、自分の胸に男のアレを挟むと言う、意味の分からない説明に困惑したが、それをどうやって実行するのだろうとも思うし、それを喜ぶ男が大勢いると教えられ、ますます混乱した。
 はあ、と大きな溜息を溢し、天井へと視線を向けると、彼が「そんなに眠れないならゲームでもするか」と言う。
 
「ゲーム?」
「ああ、ちょっと待ってろ」

 そう言ってセルジオが部屋の外へ出て行った。しばらくして宿屋から借りて来たカードを机に乗せる。
 
「ポーカーは?」
「知ってますけど、あまり得意では」
「適当に楽しめばいい」

 楽しめと言われて、それもそうね、と彼の目の前に座り、ゲームを楽しむことにした。単純な数字合わせのゲームだが、余計な事を考えなくて済むし、何より普通に彼との何気ない時間が楽しかった。
 兄がいたらこんな感じなのかも、とレベッカが思うと同時に彼が同じことを言った。

「妹がいたら、こんな感じかもな」
「……びっくりしました」 
「ん?」
「まったく同じことを考えていました」

 そうか、と小さな声で言う。彼が寂しそうな顔をしたのを見て、何故かレベッカは、自分が別邸で住むことになった日の話を、ぽつりとセルジオに話した。
 一人で暮らしていた期間、退屈な時間はすべて読書に費やしていた話や、レベッカが母に会えたのは月に一度くらいだったことなど、幼い頃の話をした。
 
「ふうん、我が子なのにな……」
「昔から、あの人イグニートには母しか見えてませんし、母の関心が父以外の物に向くのを異様に嫌ってました」
「まあ……、分からなくもない」
「え?」
「……君が俺以外の誰かに関心を抱いたら……、別邸に住まわせる程度ではすまないかもな」

 意外なことを聞いてレベッカは思考が固まった。

「じょ、冗談……?」
「いや」

 今、自分はどんな顔をしているのか知りたくなる。端整な顔の男に見つめられ、真顔でそんなことを言われ、勝手に熱くなる頬と身体、おかしな鼓動を鳴らす胸、彼の瞳を逸らしたいような、逸らしたくないような、不思議な感覚に、とぷんと浸かってしまった。

 ――…………――。

 自分の下で切なく目を眇める男を見下ろし、どうしてこんなことになってしまったのかと今更のように思う。ポーカーをしていただけ、昔話をしただけ、彼の独占欲を刺激しただけ、それだけのことだ……。
 
「あっ……っ、それ……いゃぁぁ……」

 秘芽を指の腹でぐりぐり擦られて、たまらず背中が仰け反った。それでなくても彼の濃い茂みに擦れて膨れ上がった蕾は敏感になっている。
 彼に跨ったまま、下から突き上げられ、最奥がきゅんと疼く、何度も蜜壺の中を掻きまわす熱い茎が、快楽を追い上げる。

「あぁ……、ぅう……あっ、ああっ……」
「たまらないな……」

 上下、左右、と揺すられて、頭の中は、ある一点だけを追いかけていた。

 ――っ、い……。

 あまりの気持ち良さに、変な言葉を口走りそうになる。「んくぅ」と必死に言葉を堪えていると、セルジオが起き上がる。
 座ったままレベッカの腰をぐっと抱きしめると、彼が下から腰を突き上げ、荒い息が胸元にかかり、ぞくぞくしてくる。

「っんぅ……」
  
 かぷっと胸に噛り付かれて、思わず腰が跳ねた。そのせいで淫らな音が、ぐちゅと聞え、さらに体が熱くなった。

「どうした……、声、我慢するな……」
「あ……、あっ、なんだか……恥ずかしい……」

 くすっと笑った彼が、全て見られているのに、今さら恥ずかしいことはないと言う。

「どうされたい?」
「どう……?」
「何でもいい……、胸を弄れでもいい、股を舐めろでもいい……、ほら……、して欲しいことを言って見ろ」

 そんなことを言われて、言えるわけが無いのに、とキっとセルジオを見ると、尖り切った乳首の先端を舌で押しつぶし吸い上げられる。

「あっ、あっ……」
「っく……、凄いな……中が……うねる……」

 それはレベッカのせいじゃない、掻きまわすような腰使いで、所狭しと秘肉の中を暴れまくるセルジオの男根のせいなのに、まるで自分の意思でそんなことをしているかのように言われる。
 どさっと寝台に仰向けに倒され、「ほら……、どうするんだ」と催促してくる。

「どうするって……、言われても……」

 こちらの反応を楽しんでいるセルジオが、ニッと笑みを浮かべたまま微動だにしない。その様子を見て、どうしてもレベッカに言わせたいのだと知り、仕方なく彼の首に腕を回しながら、「あなたの好きに」と言えば、秘肉の中で熱くなる彼のモノが一段と大きくなった。
 セルジオが、一旦腰を引くと、レベッカの腰を掴み、ずんと奥へ入り込んで来る。
 
「ひっ……っぅ……!」
「ご要望通りに……」

 そう言った瞬間、怒張が激しく動き出した。中を抉られるように擦られて、更には打ち付けられる腰で秘芽を擦り上げる。
 激しい腰使いに、くらくらと脳まで揺れて、一気に快楽の渦に巻き込まれた。

「あぁっ、あ……、いっあぁ――!」
「っ……」
 
 熱い飛沫がどくどくと流し込まれ、最奥が熱くじわりと濡れるのを感じながら、彼の体温に包まれ眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...