9 / 23
親友の頼みごとを引き受けたら
4P
しおりを挟む
「本当は、こんな道端なんかで伝えるつもりなかったけど、あまりにもしずくが鈍いから…言うわ」
いつもクールなりっくんが、珍しく顔をほんのり赤らめている。
「昔からおっちょこちょいで危なかっしいのに、自分のことは置いといて、人のためには一生懸命で」
…どうやらわたしは、りっくんにそうなふうに思われていたらしい。
「でも、そういうところが気になって目が離せなくて…。そんなしずくがかわいくて、独り占めしたくて」
そこまで言うと、りっくんは恥ずかしそうに頬をかく。
「これまでは、“幼なじみ”だから言い出せなかったけど…。俺、しずくのことが好きだから。ずっとずっと前から好きだから。だれにも渡したくないくらい好きだから」
りっくんからの…突然の告白。
思いがけない『好き』の3連発に、わたしの心臓がドキンドキンとうるさく鳴る。
その音が…りっくんに聞こえちゃうんじゃないかと思うくらい。
まさか、りっくんがわたしのことを好きだったなんて…。
それも、ずっと前から。
…でも、あれ…?
確かりっくん、前に…。
「雑誌のインタビューで、好きな人がいるって答えてなかったっけ…?」
わたしが様子を窺うように顔を覗き込むと、なぜだかりっくんはため息をついた。
「はぁ~…。ここまで言っても、まだわからない?」
「…えっ。え…?」
「その『好きな人』っていうのが、しずく…お前のことだよ」
わ…わたしっ!?
モデルの律希に好きになってもらえるなんて、女の子なら一度は妄想したことがあるかもしれない。
でも、それは夢のまた夢の話。
だけど、あの雑誌で答えていた『好きな人』というのが…。
まさか…わたしだったなんて。
「幼なじみの前に、俺だって1人の男なんだけど。かわいいしずくがそばにいて、好きにならないわけないだろ」
りっくんからの甘い言葉の数々に、幼なじみだということも忘れてしまう。
さっきから鳴り止まない、わたしの胸の鼓動。
それが物語っている。
りっくんは幼なじみだけど、地味なわたしと違って、遠い存在だと思っていた。
だけど、初めてりっくんの気持ちを知って――。
わたしも、自分の中の気持ちに気づいてしまった。
かっこいいりっくんは学校でもモテモテで、モデルをしているから女の子のファンも多い。
きっと周りには、オシャレな女の子だってたくさん。
それは、仕方のないことだと思っていた。
けれど、今日…りっくんの隣に芽依がいる場面を目撃したとき、胸がチクッと痛くなったり、無性にモヤモヤしたりしたのは――。
きっとわたしも…りっくんのことが好きだったからだ。
りっくんと同じように、わたしもいっしょにいたいと思う相手は、りっくんだ。
りっくんのそばにいたい。
りっくんじゃなきゃダメなんだ。
「しずくは、…俺のことどう思ってるの?」
りっくんが、わたしの反応を窺うように顔を覗き込む。
そんなかっこいいりっくんに見つめられたら、今までは平気だったのに、今では顔が赤くなってしまう。
「わ…わたしも、りっくんのこと…」
『好き』
そう言いかけて、ハッとした。
『あたし、一目惚れとか初めてかも…!』
芽依が照れながら打ち明けてくれた、あの言葉を。
…そうだ。
芽依は、りっくんのことが好きだったんだ。
もし、今わたしがりっくんに『好き』と伝えてしまったら――。
芽依を裏切ることになる。
芽依の悲しむ顔が、頭に浮かぶ。
新しいクラスで、なかなか自分から声をかけられなかったわたしに、真っ先に声をかけてくれた芽依。
そんな芽依に、どれだけ気持ちが救われたことか。
だから、もしりっくんに気持ちを伝えるなら…。
ちゃんと芽依にわかってもらってからがいい。
「…ごめん、りっくん。今は……言えない」
わたしは、喉まで出かかっていた『好き』という言葉を飲み込んだ。
わたしの返事を聞いて、りっくんが切なげに眉を下げる。
「もしかして…、篠田さんのこと?」
りっくんはちゃんとわかってくれていた。
その問いに、わたしはコクンと頷く。
「…そうだよな。しずくが親友を裏切るみたいなこと、できるわけねぇよな。だって、それがしずくなんだから」
りっくんに伝えることができなくて、わたしは唇をキュッと噛む。
そんなわたしの頭の上に、りっくんはポンッと手を置いた。
「ごめんな、しずく。困らせるようなことして」
わたしは、『ううん』と首を横に振る。
「しずくにそんな顔させるなんて、俺…ダメなヤツだな」
「…そんなことないよ!」
りっくんは、なにも悪くないんだから。
「じゃあ、聞いてもいい?」
りっくんはそう言うと、腰を低くしてわたしと視線を合わせた。
「言葉にできないなら、合図して?」
…合図?
「俺のこと、きらい?」
首を傾げるりっくん。
わたしがりっくんのことをきらいだなんてありえないんだから、首を全力で横に振った。
「そっか、よかった」
りっくんは、安心したように微笑む。
「じゃあ、しずくは俺のこと…好き?」
『好き』
その言葉に、また胸がキュンとなった。
好きだよ。
声に出して言いたい。
だけど、今はそれができないから…。
『言葉にできないなら、合図して?』
わたしは、ゆっくりと首を縦に振った。
好きだよ、りっくん。
いつか、絶対そう伝えたい。
「今は、それだけで十分だよ。ありがとう、しずく」
りっくんはわたしの手を取ると、指を絡めてギュッと繋いだ。
りっくんの優しさに、涙がぽろっと溢れる。
「なにも、泣くことはないだろ?」
わたしの涙を指で払うと、りっくんは微笑んでくれた。
それを見て、わたしも思わず笑みがこぼれたのだった。
いつもクールなりっくんが、珍しく顔をほんのり赤らめている。
「昔からおっちょこちょいで危なかっしいのに、自分のことは置いといて、人のためには一生懸命で」
…どうやらわたしは、りっくんにそうなふうに思われていたらしい。
「でも、そういうところが気になって目が離せなくて…。そんなしずくがかわいくて、独り占めしたくて」
そこまで言うと、りっくんは恥ずかしそうに頬をかく。
「これまでは、“幼なじみ”だから言い出せなかったけど…。俺、しずくのことが好きだから。ずっとずっと前から好きだから。だれにも渡したくないくらい好きだから」
りっくんからの…突然の告白。
思いがけない『好き』の3連発に、わたしの心臓がドキンドキンとうるさく鳴る。
その音が…りっくんに聞こえちゃうんじゃないかと思うくらい。
まさか、りっくんがわたしのことを好きだったなんて…。
それも、ずっと前から。
…でも、あれ…?
確かりっくん、前に…。
「雑誌のインタビューで、好きな人がいるって答えてなかったっけ…?」
わたしが様子を窺うように顔を覗き込むと、なぜだかりっくんはため息をついた。
「はぁ~…。ここまで言っても、まだわからない?」
「…えっ。え…?」
「その『好きな人』っていうのが、しずく…お前のことだよ」
わ…わたしっ!?
モデルの律希に好きになってもらえるなんて、女の子なら一度は妄想したことがあるかもしれない。
でも、それは夢のまた夢の話。
だけど、あの雑誌で答えていた『好きな人』というのが…。
まさか…わたしだったなんて。
「幼なじみの前に、俺だって1人の男なんだけど。かわいいしずくがそばにいて、好きにならないわけないだろ」
りっくんからの甘い言葉の数々に、幼なじみだということも忘れてしまう。
さっきから鳴り止まない、わたしの胸の鼓動。
それが物語っている。
りっくんは幼なじみだけど、地味なわたしと違って、遠い存在だと思っていた。
だけど、初めてりっくんの気持ちを知って――。
わたしも、自分の中の気持ちに気づいてしまった。
かっこいいりっくんは学校でもモテモテで、モデルをしているから女の子のファンも多い。
きっと周りには、オシャレな女の子だってたくさん。
それは、仕方のないことだと思っていた。
けれど、今日…りっくんの隣に芽依がいる場面を目撃したとき、胸がチクッと痛くなったり、無性にモヤモヤしたりしたのは――。
きっとわたしも…りっくんのことが好きだったからだ。
りっくんと同じように、わたしもいっしょにいたいと思う相手は、りっくんだ。
りっくんのそばにいたい。
りっくんじゃなきゃダメなんだ。
「しずくは、…俺のことどう思ってるの?」
りっくんが、わたしの反応を窺うように顔を覗き込む。
そんなかっこいいりっくんに見つめられたら、今までは平気だったのに、今では顔が赤くなってしまう。
「わ…わたしも、りっくんのこと…」
『好き』
そう言いかけて、ハッとした。
『あたし、一目惚れとか初めてかも…!』
芽依が照れながら打ち明けてくれた、あの言葉を。
…そうだ。
芽依は、りっくんのことが好きだったんだ。
もし、今わたしがりっくんに『好き』と伝えてしまったら――。
芽依を裏切ることになる。
芽依の悲しむ顔が、頭に浮かぶ。
新しいクラスで、なかなか自分から声をかけられなかったわたしに、真っ先に声をかけてくれた芽依。
そんな芽依に、どれだけ気持ちが救われたことか。
だから、もしりっくんに気持ちを伝えるなら…。
ちゃんと芽依にわかってもらってからがいい。
「…ごめん、りっくん。今は……言えない」
わたしは、喉まで出かかっていた『好き』という言葉を飲み込んだ。
わたしの返事を聞いて、りっくんが切なげに眉を下げる。
「もしかして…、篠田さんのこと?」
りっくんはちゃんとわかってくれていた。
その問いに、わたしはコクンと頷く。
「…そうだよな。しずくが親友を裏切るみたいなこと、できるわけねぇよな。だって、それがしずくなんだから」
りっくんに伝えることができなくて、わたしは唇をキュッと噛む。
そんなわたしの頭の上に、りっくんはポンッと手を置いた。
「ごめんな、しずく。困らせるようなことして」
わたしは、『ううん』と首を横に振る。
「しずくにそんな顔させるなんて、俺…ダメなヤツだな」
「…そんなことないよ!」
りっくんは、なにも悪くないんだから。
「じゃあ、聞いてもいい?」
りっくんはそう言うと、腰を低くしてわたしと視線を合わせた。
「言葉にできないなら、合図して?」
…合図?
「俺のこと、きらい?」
首を傾げるりっくん。
わたしがりっくんのことをきらいだなんてありえないんだから、首を全力で横に振った。
「そっか、よかった」
りっくんは、安心したように微笑む。
「じゃあ、しずくは俺のこと…好き?」
『好き』
その言葉に、また胸がキュンとなった。
好きだよ。
声に出して言いたい。
だけど、今はそれができないから…。
『言葉にできないなら、合図して?』
わたしは、ゆっくりと首を縦に振った。
好きだよ、りっくん。
いつか、絶対そう伝えたい。
「今は、それだけで十分だよ。ありがとう、しずく」
りっくんはわたしの手を取ると、指を絡めてギュッと繋いだ。
りっくんの優しさに、涙がぽろっと溢れる。
「なにも、泣くことはないだろ?」
わたしの涙を指で払うと、りっくんは微笑んでくれた。
それを見て、わたしも思わず笑みがこぼれたのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
同棲しているけど彼女じゃない~怨霊は恋のキューピット
ぽとりひょん
恋愛
霊や妖を見ることが出来る翼九郎は、大学生活を始めるためアパートを借りる。そこには世話好きな怨霊がいた。料理に混浴、添い寝と世話を焼く、大学では気になるあの子との恋の橋渡しまでしてくれる。しかし、美人でスタイル抜群の怨霊は頼もしい代わりにトラブルメーカーであった。
【不定期更新中】引き取った双子姉妹の俺への距離感がおかしい。
杜野秋人
恋愛
「真人兄さん」
「真人お兄ちゃん」
「お話があります」
「今日こそハッキリさせるわよ!」
俺の目の前には双子の姉妹。今年17歳の高校三年生で、もうすぐふたりとも18歳になる、俺の従妹たちだ。
10歳で両親を亡くして孤児になったこの子たちを、親戚一同の反対を押し切って引き取ってきてからはや7年。彼女たちはとんでもない美少女に成長してしまった。元々母親が日仏のハーフで、その母親の血を濃く受け継いだクォーターの彼女たちは、日本人とは思えぬほど凄絶な美貌を誇っている。
そんなふたりが、ここのところやけにグイグイ来る。父親の叔父の息子、つまり見た目も中身も純日本人な俺に対して、従兄だとか引き取ってくれた養い親だとか以上に『アピール』してくるのだ。
いや、お前たちの言いたいことは分かってる。分かってるから皆まで言うな。
「「私たちの、どっちと結婚するの!?」」
だから言うなってば!
だいたい、どっちかなんて選べるわけないだろ!結婚って『ひとりとしか出来ない』んだぞ!?俺に片方捨てろっていうのか!?
そんな俺、真人(まこと)の気も知らないで、今日も美人双子姉妹がグイグイ来る。
ホントマジで、どうなっても知らないからな!?
◆大好きな“お兄ちゃん”に自分を選んで欲しい双子と、片方なんて選べないお兄ちゃんのドタバタラブコメディ。
もだもだしているうちに、恋のライバルなんかも現れたりして……!?
◆最初の方は小学生編なので糖分控え目。ラブコメ展開は主に中学生編以降で。
若干の性的な匂わせ表現がそのうち出るかも知れません。苦手な方はご注意を。
◆本来の作品にはローファンタジー要素、具体的には魔術と魔術師が出てきますが、アルファポリス版ではその部分をカットして、現実世界の恋愛作品としてお届けする予定です。
なお、登場する地名は全て架空のものです。一応、舞台は九州北部のとある県です。
◆小説家になろうでも公開を開始しています。
執筆しつつの投稿になるので不定期更新です。ご了承ください。
普通の人生からの死
アキラ
現代文学
高校二年生の水野真鈴は普通の人生を歩んできた。
小学生の頃は皆と同じ赤いランドセルを背負って、中学高校では音楽系の部活に入って、これからも普通の人生を歩むはずだった。
だが死とはいつ訪れるか分からない。
死のあり溢れた可能性と、日常の有り難さを綴ったショートショート。
女装男子は百合乙女の夢を見るか? ✿【男の娘の女子校生活】学園一の美少女に付きまとわれて幼なじみの貞操が危なくなった。
千石杏香
ライト文芸
✿【好きな人が百合なら女の子になるしかない】
男子中学生・上原一冴(うえはら・かずさ)は陰キャでボッチだ。ある日のこと、学園一の美少女・鈴宮蘭(すずみや・らん)が女子とキスしているところを目撃する。蘭は同性愛者なのか――。こっそりと妹の制服を借りて始めた女装。鏡に映った自分は女子そのものだった。しかし、幼なじみ・東條菊花(とうじょう・きっか)に現場を取り押さえられる。
菊花に嵌められた一冴は、中学卒業後に女子校へ進学することが決まる。三年間、女子高生の「いちご」として生活し、女子寮で暮らさなければならない。
「女が女を好きになるはずがない」
女子しかいない学校で、男子だとバレていないなら、一冴は誰にも盗られない――そんな思惑を巡らせる菊花。
しかし女子寮には、「いちご」の正体が一冴だと知らない蘭がいた。それこそが修羅場の始まりだった。
家に美少女連れてきた!!
青い箱
恋愛
散歩が好きな僕こと山崎音縫(いんぬ)は夜に散歩をしていると、クラスの美少女
小野新菜(にいな)と遭遇する。
だが、発見したのはいいが、重い空気を出してブランコで座っていた。
二人は全く親密な仲ではないが、音縫は勇気を出して声をかける。
山崎音縫 175cm
体型は普通
陽キャと話せない
頭はちょっといい感じ
一人っ子
小野新菜 159cm
体型はひ・み・つ
陽キャ
頭は、、、
親に問題あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる