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親友の頼みごとを引き受けたら

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「本当は、こんな道端なんかで伝えるつもりなかったけど、あまりにもしずくが鈍いから…言うわ」


いつもクールなりっくんが、珍しく顔をほんのり赤らめている。


「昔からおっちょこちょいで危なかっしいのに、自分のことは置いといて、人のためには一生懸命で」


…どうやらわたしは、りっくんにそうなふうに思われていたらしい。


「でも、そういうところが気になって目が離せなくて…。そんなしずくがかわいくて、独り占めしたくて」


そこまで言うと、りっくんは恥ずかしそうに頬をかく。


「これまでは、“幼なじみ”だから言い出せなかったけど…。俺、しずくのことが好きだから。ずっとずっと前から好きだから。だれにも渡したくないくらい好きだから」



りっくんからの…突然の告白。


思いがけない『好き』の3連発に、わたしの心臓がドキンドキンとうるさく鳴る。

その音が…りっくんに聞こえちゃうんじゃないかと思うくらい。


まさか、りっくんがわたしのことを好きだったなんて…。

それも、ずっと前から。


…でも、あれ…?

確かりっくん、前に…。


「雑誌のインタビューで、好きな人がいるって答えてなかったっけ…?」


わたしが様子を窺うように顔を覗き込むと、なぜだかりっくんはため息をついた。


「はぁ~…。ここまで言っても、まだわからない?」

「…えっ。え…?」

「その『好きな人』っていうのが、しずく…お前のことだよ」


わ…わたしっ!?


モデルの律希に好きになってもらえるなんて、女の子なら一度は妄想したことがあるかもしれない。

でも、それは夢のまた夢の話。


だけど、あの雑誌で答えていた『好きな人』というのが…。

まさか…わたしだったなんて。


「幼なじみの前に、俺だって1人の男なんだけど。かわいいしずくがそばにいて、好きにならないわけないだろ」


りっくんからの甘い言葉の数々に、幼なじみだということも忘れてしまう。


さっきから鳴り止まない、わたしの胸の鼓動。

それが物語っている。


りっくんは幼なじみだけど、地味なわたしと違って、遠い存在だと思っていた。


だけど、初めてりっくんの気持ちを知って――。

わたしも、自分の中の気持ちに気づいてしまった。


かっこいいりっくんは学校でもモテモテで、モデルをしているから女の子のファンも多い。

きっと周りには、オシャレな女の子だってたくさん。


それは、仕方のないことだと思っていた。


けれど、今日…りっくんの隣に芽依がいる場面を目撃したとき、胸がチクッと痛くなったり、無性にモヤモヤしたりしたのは――。


きっとわたしも…りっくんのことが好きだったからだ。


りっくんと同じように、わたしもいっしょにいたいと思う相手は、りっくんだ。


りっくんのそばにいたい。

りっくんじゃなきゃダメなんだ。



「しずくは、…俺のことどう思ってるの?」


りっくんが、わたしの反応を窺うように顔を覗き込む。


そんなかっこいいりっくんに見つめられたら、今までは平気だったのに、今では顔が赤くなってしまう。


「わ…わたしも、りっくんのこと…」


『好き』


そう言いかけて、ハッとした。


『あたし、一目惚れとか初めてかも…!』


芽依が照れながら打ち明けてくれた、あの言葉を。


…そうだ。

芽依は、りっくんのことが好きだったんだ。


もし、今わたしがりっくんに『好き』と伝えてしまったら――。

芽依を裏切ることになる。


芽依の悲しむ顔が、頭に浮かぶ。


新しいクラスで、なかなか自分から声をかけられなかったわたしに、真っ先に声をかけてくれた芽依。

そんな芽依に、どれだけ気持ちが救われたことか。


だから、もしりっくんに気持ちを伝えるなら…。

ちゃんと芽依にわかってもらってからがいい。



「…ごめん、りっくん。今は……言えない」


わたしは、喉まで出かかっていた『好き』という言葉を飲み込んだ。


わたしの返事を聞いて、りっくんが切なげに眉を下げる。


「もしかして…、篠田さんのこと?」


りっくんはちゃんとわかってくれていた。

その問いに、わたしはコクンと頷く。


「…そうだよな。しずくが親友を裏切るみたいなこと、できるわけねぇよな。だって、それがしずくなんだから」


りっくんに伝えることができなくて、わたしは唇をキュッと噛む。

そんなわたしの頭の上に、りっくんはポンッと手を置いた。


「ごめんな、しずく。困らせるようなことして」


わたしは、『ううん』と首を横に振る。


「しずくにそんな顔させるなんて、俺…ダメなヤツだな」

「…そんなことないよ!」


りっくんは、なにも悪くないんだから。


「じゃあ、聞いてもいい?」


りっくんはそう言うと、腰を低くしてわたしと視線を合わせた。


「言葉にできないなら、合図して?」


…合図?


「俺のこと、きらい?」


首を傾げるりっくん。


わたしがりっくんのことをきらいだなんてありえないんだから、首を全力で横に振った。


「そっか、よかった」


りっくんは、安心したように微笑む。


「じゃあ、しずくは俺のこと…好き?」


『好き』


その言葉に、また胸がキュンとなった。


好きだよ。

声に出して言いたい。


だけど、今はそれができないから…。


『言葉にできないなら、合図して?』


わたしは、ゆっくりと首を縦に振った。


好きだよ、りっくん。

いつか、絶対そう伝えたい。


「今は、それだけで十分だよ。ありがとう、しずく」


りっくんはわたしの手を取ると、指を絡めてギュッと繋いだ。


りっくんの優しさに、涙がぽろっと溢れる。


「なにも、泣くことはないだろ?」


わたしの涙を指で払うと、りっくんは微笑んでくれた。

それを見て、わたしも思わず笑みがこぼれたのだった。
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