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#005 : 偏食と暴食

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※この画像と本編の内容が異なる場合がありますが、私は元気です。



私の養分になった…ではなく…不慮の事故により眠っていたエスト様が目覚めた。

『…う…ん…お姉ちゃん?さっき光魔法使ってたよね?』
エスト様は頭を抑えながら私に尋ねた。

「きっと何かの見間違いですよ。エスト様は短時間のうちに3回も脳を揺らされたのです。そんなに脳を揺らされたら幻覚の1つや2つも見るし、記憶障害の1つや2つも起きます。」


『うーん…そうなのかなぁ…そっかぁ…』
「はい。」
私はこいつ ちょろいと思った。


『あとさ?お姉ちゃん…やっぱり私の上に座ってなかった?椅子とか言ってなかった?』
「いいえ。」

「さぁ!さぁ!そんな事よりも食料調達に参りましょう。」
『う、うん!そうだね☆』
エスト様は何か腑に落ちない表情を浮かべていたが、私たちは今居るダンジョンの最深部の周辺を探索する事にした。


【魔王の間】とでも呼べば良いのか。私たちの居る部屋のものものしい扉を開け、外に出る。
扉の外は延々と通路が広がっていた。
壁から生えている石の結晶が照明の役割をしており、とても壮大な雰囲気である。
私はクリスマスのイルミネーションを思い出して少しイラッとしたという事を付け加えておく。


ダンジョンを進んでいるとエスト様が声をかけてきた。

『お姉ちゃん?』
「はい?」

『なんで私の後ろを歩いているの?』
「だって怖いじゃないですか。令和の東京を生きてきたんです。こんな暗くて舗装されていないところを歩けると思いますか?」

『いや…私を守る…感じで喚んだんだけど…』
「…仕方ないですね。」
私は最高にイラッとした表情をしたが、暗いし見えていなかったはずだ。


さらにダンジョンを進んでいくと、熊型のモンスターがウロウロしているのが目に入った。
いきなりの熊型とはさすがダンジョンの最深部といったところか。


「エスト様、熊型のモンスターが居ますが、幸いまだこちらには気付いていないようです。チャンスです。奇襲を仕掛けたいと思います。」
私は最高の笑顔をエスト様に向けた。

「奇襲好きだね☆」

「飛び道具的な魔法は撃てますか?撃っていただいた後に、私は死んだフリをします!」(キリッ)
私は無茶しやがって敬礼をエスト様に送った。

『それ一撃で仕留めないと私に襲いかかってくるよね?』

「私のいた世界では熊を見たら死んだフリなのです。子供でも知ってる常識です。」
『いいから攻撃してこい!』

「…仕方ないですね。」
私は再び最高にイラッとした表情をしたが、暗いし見えていなかったはずだ。

『じゃあ行くよ☆ ダークアロー!』
「はい!」
エスト様はモンスターに向けて魔法を放った。黒い矢がモンスターに飛んでいく。
同時に私もモンスターに向かって駆けだした。


黒い矢がモンスターの肩を貫いた。
モンスターは慌てている。
そこに私は駆け寄り、必殺の一撃を放つ。


「喰らいなさい!私が最も尊敬するプロレスラー!ザ・グレートムダ様のフェィバリット!ドラゴン・スクリューッ!!!!!」

ガッ!!!!!グルンッ!!…ズドンッ!!!
私はモンスターの足を掴み、倒れ込みながら捻ると、モンスターは頭から地面に衝突した。

『お!おぉぉぉぉーかっこいいッ⭐︎』

さらに!倒れてるモンスターに馬乗りに!
「君がッ!泣くまでッ!殴るのをッ!やめないッ!」
この貴族のパンチ・勇気のパンチを繰り返したところ、モンスターは動かなくなった。

『か!かっこわるッ』

「ふふ…戦う私は美しい…」
私は優雅に立ち上がると、倒れているモンスターを見下ろしながら呟く。

『ううん!最高にかっこわるかった☆』
私はまたまた最高にイラッとした表情をした。


『おっおっおーッ!?⭐︎お姉ちゃん!レベルが10も上がったよ~☆』
エスト様は嬉しそうにピョンピョン跳ねている。
ふふふ…可愛い。こうして見ると、とても魔王には見えない。
経験値の美味しい小さな女の子だ。

私のレベルは上がらなかった。が、話を合わせておいた。
「やりましたね!私も似たような感じでした。」

やはりエスト様の顎を狙うのが効率が良いと分かったので、成熟しきったエスト様の顎を狙うことに決めた。


そして私たちはこのモンスターを食べてから今日は休むことにした。

最深部の広間にモンスターを持ち帰ったところで、調理器具も何も無いので、焼いて食べるしかない。
エスト様に魔法で火を起こしてもらい、熊型モンスターを食べた。

令和の東京を生きてきた私にはとてもじゃないがモンスターを食べるなんてできないと思っていたが、鬼になった影響が精神にも きたしているからなのか、案外平気だった。うん。肉美味い。ビバ!ジビエ!

モンスターを食べていると…突然!天の声が頭に響いた。

(  :  )

「ん?なんで?」
『どしたの?』

「今、天の声が聞こえまして…なぜかこのモンスターのスキル?を今…覚えました…」
『おお?』

「はい!冬眠 というスキルです!冬眠…。…エスト様…私…何か悪いことしましたか…?」
『お姉ちゃん…泣かないで…。』

とりあえずステータスウィンドウを開いて確認する。

「ステータスッ!オープンッヌ!」
『その掛け声毎回やるの?』



相変わらず煽ってくる画面ではあるが、暴食スキルの効果を確認してみた。
(スキル名を長押しで詳細表示できた⭐︎てへぺろ)
→ 【暴食 : 七つの大罪の一つ。食したモンスターの特性やスキルを一定確率で習得する。】

はい。きたこれ。チート能力。
そして厨二病が大好きな七つの大罪。とりあえずこの文言を入れとけばレア感が出るやつ。
この 暴食 はもともと持っていた 偏食 というスキルが進化したものだ。

転生前の私は胃が弱く、摂食障害だった。
その為、ほとんど決まった物しか食べてなかった。
偏食はそういった前世を思い出すスキルだった。
前世での体性が反映されていたのかもしれない。
システムハラスメントでイラッとしてたし、disられてる感じもしたのでどうせゴミだと思っており、深く確認はしてなかった。


念のため 冬眠 の詳細も確認してみる。
→ 【冬眠 : 体温を低下させて食料の少ない冬季間を過ごす事ができる。】

「エスト様!なんと私はモンスターを食べる事で、そのモンスターの何かを習得できるみたいです!」
『ええー!凄いじゃん!めっちゃレアだよそれ⭐︎』

「…あと、冬眠は……やっぱり冬眠でした…」
『お姉ちゃん!泣かないで!』

「あ、そうだ!エスト様を食b『おいヤメロ』

エスト様が食い気味に否定してきたのでこれはマジなやつだと思ってすぐにやめた。
地獄旅行だけはしたくない。
私は空気は読めるタイプだと自負している。

「ははは…冗談です。」(キリッ)
『二度と言うな。』


……
………

そして私はモンスターのスキルの中にFカップ巨乳は無いのかな?
もしそれをゲットしたらめんどくさい今の職場は退職かな?とか考えながら眠りについた。
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