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二章「刺客」

第四夜[戦慄のナイトメア]

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[メルスケルク中央通り]

午後11時過ぎの事である。

ゴリッ‥‥ガリガリ‥‥

夜の街に響き渡る鋼鉄の摩擦音。
聖なる剣がその石畳に傷を付け、切先が大地に接する時、傲慢なる聖者はそこに現れる。

「おお、お嬢ちゃん。丁度良かった。ちょっと尋ねたい事があるのだが、この先、宿があると聞いたのだが、何処に有るか知らないかね?」

「‥‥」

「どうしたお嬢ちゃん。そんな俯いて‥‥ヒィッ!?」

彼女が右手に握り締めている聖剣。
その剣が数多もの人間の生き血により染まりし時、彼女はその呪縛から解放される事であろう。

「貴方は‥‥ジャンヌ・ド・アーク‥‥。若しくは‥‥アリス・ウィンターソン‥‥ですか?」

「し、知らねぇ‥‥!おらそんな奴知らねぇよ!!」

「そうですか‥‥然しながら、肩慣らし程度には丁度良い『獲物』かもしれませんね。」

「な、何をするんだぁ!‥‥!?かかか、体が動かねぇ‥‥!やめろ!離せ、離してくれぇ!!」

彼女の眼を見たものは、一定時間身体が硬直(直立不動)し、やがて、彼女の手により死を迎える。

「これが‥‥お父様が託して下さった彼のメドゥーサの剣の呪い‥‥。素晴らしい‥‥申し分無しです」

「だだだ、誰か助けてくれぇ!!!か、体が動かねぇんだぁ!!!」

彼の悲鳴はメルスケルクの街中に響き渡り、やがて闇夜の空に吸い込まれるかの如く、皮肉にも残響すらも残さず消え去った。

「だ、駄目だ。ここら辺の奴等、全員寝てやがる‥‥!畜生‥‥!!!離せ、離してくれぇ!!!」

「はいはい、阿鼻叫喚するのももう充分でしょう。では、いきますよ‥‥」

彼女が呪いの剣を振り上げる時、男の悲鳴は忽然と消え去る。

「ぐわああああああああああ!!!」

ザンッ!クシャリッ、ベチョッ‥‥

「あらあら‥‥いけませんね。私とした事が、返り血を浴びてしまいました」

彼女がその聖剣を握る時、その聖剣は瞬く間に邪剣へと変貌する。

「御姉ちゃん待って、置いてかないでー!!」

「へっへーんっ!追い付けるものなら追い付いてみなさい!この、うすのろさん♪」

「!!‥‥フフッ‥‥見付けましたよ‥‥アリス・ウィンターソンさん‥‥♪」

第四夜[戦慄のナイトメア]  【完】

【第五夜へ続く】

…………………………………………………………………………

【バスタードソード】

・スピルス国王家により代々受け継がれている聖剣

・神話では怪物「メデューサ」を打ち倒した聖剣とされている

・しかし、夜月の光を浴びると、怪物「メデューサ」の血を浴びた事からその聖剣を手にした者に『把持している間』、※メデューサの呪縛を与えるという曰く付きである。
※その剣を把持している者の目を見たものは、目を合わせ続けている限り、全身が硬直して動けなくなる

・ある時、何者かに盗まれ、当初は警察も総力を持して捜索したが、結局は発見出来ずそのままお蔵入りとなった。
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