上 下
102 / 142
陽動編

ヒロインの視点

しおりを挟む





次の休日、親しいみんなを呼んでお茶会を開くことが決定した
最近色々あったし、気持ちの何処かで息抜きしたいって感情がなかったと言えば嘘になる、本音を言えば物凄く息抜きしたい
お守りの気持ちも籠もった釣り餌を作った日、徹夜した時に無意識にカトラリーセットを作るくらいには気持ちが疲れていたんだろう


正直お茶会が楽しみで仕方ない…
本当は乙女ゲームが始まったら、おれとシャルティは即座に戦線離脱というかフェードアウトして、素敵な聖女様と恋楽しんでね!可能だったらこれからも友達でいたいな!あ、でも本気で邪魔なんてしないから!って気持ちで居んだけどな…
入学式くらいまでは…いや、マイケルが聖女を助ける前くらいまではその流れだった


なのに現実は聖女が一癖も二癖もある存在で、シャルティを悪役に仕立てようとする存在で…更には、おれの前世の妹の可能性が極めて高いかもしれない………

聖女が現れて乙女ゲームが始まるまで本当に平和で…楽しい日々ばかりだったのに何故こうなってしまったんだろう
今の毎日何処かしらピリピリとした状況がしんどくなっているんだなって思う…そしてどこまでがゲームがわからない事がずっと怖いんだ




今日も今日とて聖女の本性を暴く為にわざとらしく煽る、決して手は出さないけど、おれがあのゲームで知っているヒロインの行動を再現する為に
クソ妹は1日ひたすら暇だったけどおれは社畜だった、あいつが見せてきた乙女ゲームの展開はドロドロに甘く、自分もこんな風に甘やかされたいと言っていた
社会の厳しさを受けて化けの皮が剥がれたクソ妹は自分を変えるんじゃなくて自分を愛してくれる人を探すに逃げていたっけ…

てかクソ妹だったらなんであいつも異世界しているんだろう…おれは確実に連勤疲れで階段から落ちて死んだ…けど、クソ妹は健康そのものだったろ?
階段から落ちたおれが言うことじゃないけど、命大事にしろよ…お前を可愛がってくれた両親残して何してんだよ…って本当にクソ妹だったら言いたいが…確実に人の話聞かないんだろうな…



「ルディヴィス、何考え事してるんだ…?聖女を煽るんだろ?もっとちゃんと密着して、触れ合ってキスしような♡」

「んっ、んんっ………ちょ、まってレオ、き、キスはいいよ…覚悟してるから…でも、そこまで必要?!ひんっ♡ど、何処触ってんだよ!」


煽るって言った、聖女の本性を曝け出させるって確かに言った…けどここまで密着するとか服越しでも胸触っていいとかは言ってない!
あの乙女ゲーム、全年齢だから!健全な青春♡恋愛♡ゲームだから!確か…たぶん、きっと!!

今だってヒロイン視点のレオンハルト殿下との好感度MAXに近い時に見れる勉強会でのハプニングだかそんな名前のシチュエーションを再現しているだけなのに…!
勉強するために訪れたカフェで躓いた聖女を抱き寄せて転ばないようにしてくれたレオンハルト殿下と思わずキスしてしまうだけの展開が、何故か抱き寄せられたまま「助けてくれてありがとう」って台詞も言えずに、何度もキスされて服越しに胸を撫でられてる

そんなおれたちの姿をカフェを利用する多くの生徒が見ちゃいけない物を見た!って感じに目を逸らしたりしているから居た堪れない
もちろん、何故かおれがいる所に必ず現れる…作戦のターゲットな聖女もだ
動揺して真っ赤になってるおれを見て、聖女は一瞬歯を食いしばる様子を見せたあと、直に儚げな…まるで大切な人を奪われた乙女のような顔をして涙を浮かべて立ち去って行った…うーん


「……………たぶん聖女の中では自分に気があるレオンハルト殿下が悪役野郎に手篭めにされてるとか…そんな感じの事思ってそうな顔してたな…
レオ、後でさり気なく聖女の周辺うろつくのも任せていいか?
あと、恥ずかしいからちょっと離れよう?!王太子殿下にこんな事言っちゃ不味いけど、なんか変態っぽい…!」

「うろうろは任せろ!
あと、ルディヴィス相手なら変態でも別に構わないな!………っていうのは冗談だ、煽るならそこそこインパクトがあった方がいいだろ?だから陛下が母に学生時代してた事を再現してみたんだ」


そう言っておれを楽しそうにハグするレオンハルト殿下は父である国王陛下を真似たという…それはつまり…………ちゃんと考えるのはやめておこう


直に邪魔しないでよね!と、怒り狂って来るかと思ったけど中々来ない…
1年生での噂を聞くに自分は被害者可哀想なのと、おれが虐めたという偽りの証拠を作り、味方を作っている最中だから来ないのかもしれないと考えると、恐らくその内何かしらまたこちらに仕掛けてくる可能性もある

あと気になるのは、聖女が積極的に奇跡で救った人達はみんな聖女を愛し、崇め、信じてるって話だ
……変な違和感がある…それは救われたからってだけなのか?けど、おれが知ってる乙女ゲームでそんな要素あったか?
知識不足過ぎてこういう時、おれは役に立てない…
『見てよお兄ちゃん!早く!』そう言って見せてきた場面を覚えてるに過ぎないんだ…


あとこれも考えておかないといけないな…クソ妹であっても、違う異世界転生者であったとしても、やる事は変わらないが
もし…本当にクソ妹だった時…おれはどうするかを










しおりを挟む
感想 135

あなたにおすすめの小説

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

一日だけの魔法

うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。 彼が自分を好きになってくれる魔法。 禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。 彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。 俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。 嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに…… ※いきなり始まりいきなり終わる ※エセファンタジー ※エセ魔法 ※二重人格もどき ※細かいツッコミはなしで

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

その日君は笑った

mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。 それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。 最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。 拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。 今後ともよろしくお願い致します。

弟は僕の名前を知らないらしい。

いちの瀬
BL
ずっと、居ないものとして扱われてきた。 父にも、母にも、弟にさえも。 そう思っていたけど、まず弟は僕の存在を知らなかったみたいだ。 シリアスかと思いきやガチガチのただのほのぼの男子高校生の戯れです。 BLなのかもわからないような男子高校生のふざけあいが苦手な方はご遠慮ください。

【完結】薄倖文官は嘘をつく

七咲陸
BL
コリン=イェルリンは恋人のシルヴァ=コールフィールドの管理癖にいい加減辟易としていた。 そんなコリンはついに辺境から王都へ逃げ出す決意をするのだが… □薄幸文官、浮薄文官の続編です。本編と言うよりはおまけ程度だと思ってください。 □時系列的には浮薄の番外編コリン&シルヴァの後くらいです。エメはまだ結婚していません。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...