上 下
93 / 142
陽動編

留学生の憂鬱

しおりを挟む
Side ???






「ルイ!おはよう!…………はははっ!!
今日もすごいもさもさだな?鳥でも遂に飼い始めるのか!?」

「おはようガルロ…頭に鳥は飼わないよ…たぶん?
てかルイって呼ばないで…せめてベラって呼んで?
何度も言うけど、僕は空気になりたいんだ…留学って感じに目立ちたくないんだよ…」

「悪い悪い!しかし、イケメンなのにわざわざ髪の毛もさもさにして隠すの勿体ないよな…綺麗な目まで隠して…将来的に視力落ちるぞ?
そこまでして顔を隠す理由でもあるのか?」


クラスメイトであるガルロの言葉を軽く流しつつ、僕は机に突っ伏す
なんで、どうして来たくもないのに僕はこの学園に留学してしまったんだろう…この、乙女ゲームの舞台に…





僕の名はルイ、隣国からこの国に留学という形で通うことを運命付けられた存在
そう、乙女ゲーム「光の聖女に愛を灯す」に出てくる攻略対象の1人隣国からの留学生のルイ.ベラニードだ


「僕、男が好きなのになんで乙女ゲームなんかに記憶残したまま転生してるんだよ…ほんと、神様ひど過ぎる…」

「んっ?なんか言ったか?る………うゥ゙ん、ベラ?」

「んーん、何でもない…なんも言ってないよ…はぁ………」



ため息が知らず知らずに出てしまう…
僕は何故か乙女ゲームに異世界転生ってやつをしてしまったあわれな被害者なのだ
なんの因果か運命か…神の思し召しか…生前も今も、恋愛対象が男の僕が聖女と恋する乙女ゲームに転生してしまった
聖女みたいなふわふわ可愛い系の女の子怖くて苦手なのに…ほんとなんで僕がルイなの?転生するならBLゲーにしてよ神様ぁ…
僕の好みは綺麗系男子なんだよ!!生前もこの性癖?好み?を公表できずに居たけども!だから可愛い系美少女なヒロインはお呼びでないー!!


そう願っても何も変わらない
異世界に気づいたのは10歳の頃、魔法適正検査を受けた時、雷が落ちたかのように頭が真っ白になって思い出した…この世界の真実を
僕はこの国の隣にある、ベラニード国の第四王子とかいう一応高貴な身分だ…
あの乙女ゲームでは聖女の素晴らしさに触れ国に連れて帰るっていう隣国の王子枠…それが僕

何故男が好きな僕が乙女ゲームなんてやっていたか、それは生前色々強い姉と妹に周回を手伝わされていたから…僕は生前の可愛いのに強すぎる姉と妹が怖かった!悪い人じゃないんだけど圧がすごい!胸に詰まった脂肪でさえも怖い!
まぁ色々あり、それがトラウマで、元々恋愛対象男だし…結論女の子が怖い…恋愛するなら男がいい…可能であれば綺麗な美人に抱かれたい!
でもここは乙女ゲームの世界…乙女が恋をする世界だ…最初から詰んでいる



攻略対象者になりたくなくて、留学しなければ大丈夫じゃん!?って留学の話を断っていたら父である王が勝手に話を進めてて
結局乙女ゲームの舞台、ラピスチアーノ魔法学園にいるんだから恐ろしい


まだちゃんとヒロインの女の子を見たわけじゃないけどさ…遠目で他の攻略対象者キャラがヒロインと交流してる所見ちゃったらもう…次は僕だ…!って怖くなってしまったよ

だからこそ、僕は姿を隠す…モッサモサにスタイリングした髪の毛でベラニード王家特有のモスグリーンの瞳を隠すのだ
ついでに無駄に乙女ゲーム仕様のイケメンフェイスも髪で隠す、僕のミッションは聖女に出会わない!乙女ゲームのルイルートを始めないこと、ただそれだけなのだから…!
出会ってしまったら最後、僕はきっとゲームのピースになってしまう…




でも、留学して半年くらい…なんだかこのゲームの雲行きが怪しい気がしてならない
最初、なんとなく見かけたパッケージイラストと攻略対象者のレオンハルト殿下とイグニス違う気がする?って違和感があった
あまり現実を見たくなくて、全然調べてなかったなってちょっと探ってみると…違和感しかなくて…
なんと攻略対象者と悪役令嬢が仲良くしてたりする…!そして知らない男がレオンハルト殿下の婚約者だったり!?この国の王妃様が美人系中性的な男だったり!?物凄くタイプです!!!
乙女ゲーム…いや?ここはBLゲームなんじゃないか!?って淡い期待をしてしまうくらい違和感まみれだった


もしかして…この世界は乙女ゲームじゃない?って思ったけど油断をしてはいけない…
関わり合わないのが一番なのだ

もしかしたらレオンハルト殿下の婚約者も僕と一緒なのかな?なんだろう…悪役令嬢シャルティの大ファンとかで彼女を救うために俺が殿下の゙婚約者になってやる!来いや聖女!とかしてるのか…?


いや、まさかな………?
…………そんな事は僕には関係ない…な!
僕はこのゲームとは関わり合わない、隠れて隠れて隠れて卒業してみせる!そしてせっかく同性婚もあるにはあるんだから、僕は素敵な旦那様が欲しい!!





「ガルロ!後輩が来てるぞー!」

「すいません、2年のマイズです
ガルロ先輩はおられますか?合同魔法演習での件で伝言が…」

「おお!マイズ!おれはこっちだ
どうした?結果発表はまだ先だと言ってたからルディヴィス関係か?」




そんな僕に乙女ゲームのキャラと関わる大きな事件が目の前で起きている
クラスメイトの好みからは外れるけどいい奴なムキムキガルロと会話している2年生の後輩…その名前に聞き覚えがあった

マイズ…それがマイズ.エースメイスだったら乙女ゲームの攻略対象の1人だからだ
嘘だろ3年の教室にまで乙女ゲームはやって来るのか!?てかルディヴィスって誰だっけ!?


心拍数が上がる、一応確認したほうがいいかと悩んでしまう…いや、確認すべきだろう…しなければいけないと何故か思った




こっそり、2人が話す教室の入り口をみると…そこには…
恐ろしく美しい存在がいた
男子生徒用の制服を着た女神がいたんだ
僕の性癖ドストライクの見た目をした後輩がそこにいた…………





「すっ………………好き……………………」






攻略対象のチャラ男枠が美しい女神系美青年に進化しているなんてここ本当に乙女ゲーム???違うだろ!?!



















しおりを挟む
感想 135

あなたにおすすめの小説

その日君は笑った

mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。 それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。 最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。 拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。 今後ともよろしくお願い致します。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

弟は僕の名前を知らないらしい。

いちの瀬
BL
ずっと、居ないものとして扱われてきた。 父にも、母にも、弟にさえも。 そう思っていたけど、まず弟は僕の存在を知らなかったみたいだ。 シリアスかと思いきやガチガチのただのほのぼの男子高校生の戯れです。 BLなのかもわからないような男子高校生のふざけあいが苦手な方はご遠慮ください。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

一日だけの魔法

うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。 彼が自分を好きになってくれる魔法。 禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。 彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。 俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。 嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに…… ※いきなり始まりいきなり終わる ※エセファンタジー ※エセ魔法 ※二重人格もどき ※細かいツッコミはなしで

尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話

天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。 レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。 ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。 リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?

君と秘密の部屋

325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。 「いつから知っていたの?」 今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。 対して僕はただのモブ。 この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。 それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。 筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

処理中です...