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陽動編

距離感と違和感

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乙女ゲーム「光の聖女に愛を灯す」は他の乙女ゲームと一緒で、好感度を上げるのに常に悪役令嬢が乱入してくる訳じゃ無い
親しくなった攻略対象と食事や勉強、休みを共に過ごしたりして少しずつ上げていき、終盤では気持ちも伝え合いキスまでならしていた
いくら聖女といえ、出は庶民…よく考えると国の未来を担う高位貴族相手にそれはどうかと実際思うが…乙女ゲームって世界だからそれでもいいんだろう

クソ妹の生まれ変わりかもしれない聖女を刺激し、本性を露わにさせる為に、本来聖女が行う好感度アップ後の行動をおれがするのだ…今日、今から…!



「れ、レオ!、おはよう!」

「ルディ!おはよう!今日も可愛いな…」


サングイス公爵家からいつもはシャルティと登校するが、作戦の為に今日からおれ1人…シャルティはイグニスと後から時間差で登校する
馬車から降りると、校門でレオンハルト殿下がおれを待っていてくれた

校舎前待ち合わせじゃなかったっけ!?
これは事前の打ち合わせに無かったからちょっと嬉しい…けど可愛いって言葉は違う気がする
名前の呼び方も親近感溢れる愛称にしたもんだからなんか恥ずかしい… 


ドキドキしていると校舎まで歩く前に、とりあえず互いに初めてだし練習しておこうってレオンハルト殿下に優しく抱き締められてしまった
逃げられないように頬に手を当てられて、イケメンとしか言いようが無いレオンハルト殿下の顔がおれに近づき…ふにって柔らかいのが唇に触れる…

カサカサとか全然してない柔らかいソレ…他の生徒も登校している中、本当に触れるだけのキスをされたんだって気付いたら、なんかもう自分で言った事なのに恥ずかしくなってきた…
まって、恥ずかしくない!?、やばい…これ、やばい…!!




真っ赤になって震えているのに気づいてくれないのか、何度か角度を変えてキスされた後、唇を舐められて「ずっとキスしたいって思ってたから嬉しい、ルディが可愛すぎてやばい」って言われた…


いやいやいや!!イケメンかよっ!!!というか!可愛いはやっぱりおかしい!
おれよく見て!女顔じゃないよ!?可愛いって言葉はシャルティとかマイズの幼少期に使うんだよ!あと見た目だけの聖女もある意味含む!可愛いって基本的に男に言う言葉じゃないんだよレオンハルト殿下!!

てか、乙女ゲームの攻略対象って破壊力改めてとんでもないな!?
キスする振りでも良かったのかなって後悔する程心臓がバクバクしている…うっ、心臓が痛い、恋愛ほぼ初心者にはハードルが高過ぎるっ!

けど、改めて嬉しそうに抱き締められたら心臓が痛いだけじゃなくてキュンとしてどうしようもなかった…
その状態で暫くドキドキしていると、肩口から見えたのは驚いた顔をした聖女ルチア…今回の作戦のターゲット、目線は合っていないはずなのにおれが気が付くと、彼女は足早にその場を立ち去る
一瞬、醜く歯を食いしばるような顔を見せたような…気がした…




「レオ………今、聖女が…」

「ん?さっそく変な顔でもしてたか…?なら効果があったって事だ…良かったじゃないか
あ…もう一つ、ルディに伝えておかなきゃいけない事がある、第二王子ジェイスについてだ

合同魔法演習…あの時あいつも参加している筈なのに、愛する聖女があんな状況でも現れなかった事に気付いてな…直接聞いてみたんだ、あの時何をしていたか…

そしたらあいつ、なんて言ったと思う?」




『ちゃんと見てたよ』




そう、いつもの優しい微笑みのまま言っていたらしい
確かにあの時、全校生が参加していた筈なのにあの場にジェイス第二王子はいなかった
ジェイス第二王子は何を見ていたんだ?聖女を?周囲の行動を?悪役令嬢の役割を押し付けられるシャルティを…?教えられた情報が分からなすぎて不安になってしまう
聖女が好きな筈の、母を救われて狂信じみた感情を持っている可能性がある第二王子の行動が理解できない…普通なら大丈夫かって助けに入ってくる場面なのに



「そ、それって…?どういうことなんだ…?」

「わからない…だが、詳しく聞こうとしたら邪魔したい訳じゃ無いから自分のことは放っておいてほしいと言われたんだ…
どういう事なんだろうな?全然わからん
あと第三王子が来年からこの学園に通う予定を変更して、隣国に留学が決まったと父上から昨日報告があったんだ…こちらも、進言したのはジェイスらしい…
血は半分繋がっているがあいつが何を考えているかわからない…後で皆にも言うが、ルディには最初に伝えておきたくてな
何か手掛かりになったらいいなって!」



レオンハルト殿下はまた何かわかったら教えるからと笑顔でおれに改めてキスをしてくる
情報とキスで恥ずかしくて頭パンクしそうなんだけど…!またドキドキ胸が痛いおれに、そろそろ教室に行こうって自然な流れで手を繋いでくれた

え、手まで繋ぐの?更に恥ずかしくない?とは言えないくらい年下だけど大きな手のレオンハルト殿下に繋がれた手が温かくて…
手を引かれて歩くのが懐かしすぎてなんとも言えない気持ちになってしまう
結局、そのまま手を引かれて校舎に入っていったのだ





勿論おれたちのクラスに着いたら、登校していたマイズから妙に近過ぎてザワッとしますねとか言ってたり、イグニスがおれも手を繋いでスキップしてみたいとかわけわかんないこと言ってたり、従者のヘルリにあの2人何かあったのって聞く多数の生徒がいたりした

ホームルームの゙最中は、ラッジ先生から何とも言えない顔で見られた気がしたけど気の所為だと思いたい

昨日の事件についての内容がほとんどのホームルーム、現在は調査中だから変な事言いふらすなって全員釘を刺される
結果発表についても後日、全体に告知とチーム事に結果を教える事になったという



昨日の騒動が嘘のように授業が進む
暴走したシャルティを見て昨日の事を思い出し、怯えるクラスメイトもいないから有り難い…
むしろ、心配して付き添ってくれるんだ

でも、まさかのシャルティや聖女以上に、クラスメイトがおれとレオンハルト殿下に何があったかと興味津々になってしまった事が意外だったが、なんとか昨日の合同魔法演習でシャルティが暴走してしまった時、妹を心配し過ぎて止めるために、焦りすぎておれが火傷をしたから過保護になったって説明し理解してもらう事に成功した



「ルディはシャルティを大事に思うあまり目の前が見えなくなるからな!俺がしっかりと抱き締めて手綱を握る、いい考えだろう?」

「きょ、教室ではそんな事しないから!休み時間事に抱き締めに来なくていいよレオ!」


そんな会話をすればみんな微笑ましいって反応してくれるんだから…
マイズやイグニスとも距離感を詰め詰めにしている、こちらも大事な友達が無鉄砲だから過保護になったって感じの理由で
仲良しは良いことだねと言えるのは聖女以外の反応だ、作戦初日の日だけで3回、驚いた聖女が走り去る姿を見ることが出来たのだから…
確実に何かしら効果は出ているなと初日だけでも感じる




帰ったらアクセサリーも作らないと…そう考えながら残りの授業を受けた











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