悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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現実編

優しく美しい奇跡

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野次馬をしていた生徒が先生の言葉で減りつつある中、人混みの流れに逆らうように現れたマイズ…
イグニスに頼んでいた伝言、ちゃんと伝わっててよかった…

マイズはおれの顔を見てちょっとだけ悲しい顔をした後、いつもの優しい中性的な微笑みの無い、男らしい表情で先生の前に歩み出ていく


「先生、ルディヴィスの火傷は私が治します
あと、事情聴取は体調を加味して部外者の居ない、もっと静かな場所で聴いたほうがいいかと…
聖女様も何かしら怪我をされているかもしれません…教会関係者として早めの撤収をお願いしたい…なので、先に聖女様はこちらで対応します、いいですね?

ネオイグニス聖騎士団員補佐、聖女様を保健室へ連れて行って差し上げろ」

「はっ!!かしこまりました!」



本来、聖女が学生の身分時には聖光魔法の過度な露出は控えている傾向であること、聖女へのサポートとして教会の関係者が対応する事もあるって話を聞いててよかった…
1年生のクラスに蔓延する噂の根幹は聖女の発言から生まれる状況証拠と作り話だ、それをこの場でもされたら困る

それもあってイグニスにマイズを連れてきてってお願いしたらめちゃめちゃ的確に動いてくれた
ネオイグニスと呼ばれた彼は確かイグニスの名前若干似てるけど超ムキムキゴリラ男子だったっけ…?彼、聖騎士団員補佐なんだ…将来聖騎士団になるのかな…?


ムッキムキなネオイグニスくんは聖女が泣いたフリしながら若干動揺してるのを、怯えてると受け取り、保健室へ行きましょうと有無を言わせずお姫様抱っこでその場から颯爽と退散する

それに合わせて原点されても何が起きるか見届けたいと野次馬をやめてなかった生徒も、首を傾げながら殆どがそれぞれの待機場所に戻っていった




先生も学園で教会関係者筆頭のマイズにこう言われたら何も言えない
マイズに治癒を任せ、他の先生に聖女へ付いてもらい聞き取りを依頼し、先生は現在周囲の生徒に説明と教室での待機を伝えている
そしておれは無理はせず、マイズに火傷を応急処置してもらったらこちらも保健室へ行こうって事になった…けど



「先生は応急処置と言いましたが、私はルディヴィスの火傷をここで全て治癒したいと思います…
…………ルディヴィス、私を信じて治癒を受け入れて下さい…奇跡の聖女や治癒の専門家ではない…でも私が治したいんです
一応婚約者なレオンハルトもいいですか…?」

「う?、うん…いいよ、任せる
大きな声で言えないけど…専門家や聖女の数倍…数億倍…いや、比べようもないくらいマイズの方が信用できるし…信用してるし…聖女が霞むくらいマイズの方が素敵だしね?」

「ああ…うん、大丈夫だ
確かに美と知性、全体的に聖女はマイズの足元にも及ばないな?」



斜め上なおれとレオンハルト殿下の答えに少し微笑んで、冗談言ってないでシャルティをレオンハルト殿下達に預けて火傷を出して下さいって言われてしまった

シャルティを預け腕を出しつつ、改めてマイズが治してくれるならそれがいいと思う…
この学園にいる保険医は乙女ゲームのサポーターだったキャラでもある…普通のいい先生だけど、なんとなく聖女が来てから接触を控えるようになってたし

それに、この世界は普通に一般人も使える治癒魔法もある、使用方法が限られたりはしているが…教会関係者のマイズはその更に上の魔法も学んでいるはず、だったらマイズにお任せしたい

例え痕が残ってもおれは男だし、あまり気にならないし………



それに、おれの火傷は想像を超えて酷い物だったみたいで…
高火力なシャルティの魔法でこんがり焼けてしまった肌はちょっと動くだけでも本当は激痛だった事実に、聖女がいなくなって段々と落ち着いてきたからか実感してきた


「ぇ゙、やばいかも、すげぇ痛い…いた…え、え、やば…ぃだい…これやばいかも…うぐっ………ぃだい…」

「はぁ…やっとですか?
平然としてるのがおかしいんです…本当は気絶する程の怪我なんですよ?
では、やります…なるべく刺激はしませんが…痛みが強くなるとかあった言って下さいね?」



そう、マイズは言うと何かを祈るようにおれの火傷へ手をかざし、呪文を唱え始めた…
瞬間、ふわりと紫から黒っぽい魔力の粒が目に見える形で現れ、まるで蝶の様な形になる
ヒラヒラと飛び交う蝶の形をした魔力、それがおれの火傷をしている皮膚に吸い込まれるみたいになって、治癒を施してくれているのがわかった

魔力には属性によって色がある
輝かしい光を放つ属性が聖なるものだと認識される理由にもなっている色が
炎なら赤系統、水なら青系統の色、闇は紫から黒寄りの色が…幼い頃、光じゃないと泣いていたマイズがお祖父様に顔向けできないって言ってた理由の一つもその色にある

聖なる者は輝かしい光、そんなイメージがあるから…家系によって遺伝しやすい魔力の傾向が…色があるから…だからなんで闇なんだよって泣いてたんだっけな…?
でも、それが全てじゃないってわかってくれて…個性って素敵なんだよって話して

おれは痛みなんて忘れて魅入っていた
マイズの心情、その集大成みたいなのを治癒魔法で見せてくれてる、そんな気持ちになるから…
たくさんの蝶が舞い、治癒を施す目の前の光景は美しいとしか言えない…幻想的な豊かな森のような…慈愛と癒しを感じる魔力が温かかった

だからこそ、この場にいるもの全てがきっと同じ事を考えていたと思う



「これなら痕も残らずいけそうですね…ルディヴィス…痛みは無いですか?…………ルディヴィス?」


「超綺麗…………女神様みたい…マイズ………」


女神様に選ばれたかなんだか知らないけど、聖光魔法がどうだか知らないけど…
あの顔だけが取り柄の聖女と比べ物にならないくらい…いや、比べちゃいけないくらい美しい…
目の前でおれに優しい美しい奇跡を見せてくれる心の綺麗なマイズが誰よりも女神様のように輝いて見えた








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