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現実編
合同魔法演習 前編
しおりを挟む数多くいる全校生徒が集っても平気なほど広い、校庭?いや、魔法演習場に今、おれ達はいる
今日は合同魔法演習という貴族科と騎士科、そして全学年全てが合同で魔法演習を行う授業の日だ
区分けされた演習場でランダムに選出された最大8名のチームを組んで学ぶ
「本日の合同魔法演習の指導を務める3年のガルロ.サロンドだよろしく頼む
というか、ルディヴィスとは去年一緒の班だったよな?学年が違うと中々会うことも少ない、これも何かの縁だ!またよろしくな!」
爽やかな笑顔のガルロ先輩と固く握手を交わし、お久しぶりですって嬉しさと、今日の合同魔法演習について思いを馳せる…
乙女ゲーム『光の聖女に愛を灯す』は基本的に各攻略対象のキャラクターの好感度を上げて個別のイベントを起こしてハッピーエンドを目指すゲームだが、それと別にメインストーリーが存在する…
流れは入学した聖女様が庶民であることにもめげず、学業も魔法も頑張り悪役令嬢の妨害にも打ち勝ち、聖女として素晴らしい功績を残して選んだ攻略対象のキャラに告白され、卒業式でキスをして目出度くハッピーエンド…そんな王道ストーリー
そのメインストーリーの中に学園イベントとして、学年が違うキャラの登場、好感度大アップチャンスのような感じで今回の合同魔法演習等がある
しかし、メインストーリーとは別に早く攻略対象の好感度が上がると、先に個別シナリオが進むため途中でエンディングを迎える事も多い
だから、メインストーリーを最後まで見る…それが大変なのよって周回作業を手伝わされていたおれにクソ妹が言ってたっけな…
なんだっけ…?確か好感度を一人だけ物凄く上げるとそのキャラのルートに行ってしまうだっけ?
だから満遍なく好感度を上げて、メインストーリーを解放して、悪役令嬢の度重なる虐めに打ち勝ってどうのこうの…
上手く調整していかないと最初に攻略可能なレオンハルト殿やヘルリ以外の学年が違うキャラと会う前に終わってしまうとかなんとか…
確かそんな感じだった筈だ
去年は普通に楽しく合同魔法演習に参加したのに…
先輩と中々出来ない交流をしつつ、自分の魔法が何処まで使えるか、どうしたらもっと効率よく使えるかとか学ぶ楽しい機会だったのに
聖女が居るってだけでこの楽しい日が乙女ゲームのになるのが悲しい
メインストーリー、合同魔法演習は騎士科とも合同のため、本来先輩であるイグニスの初登場
そして悪役令嬢の悪女っぷり魔法が美しいイラストでお目見えする貴重なシーンもあった気がする
乙女ゲームではイグニス、聖女、と他数名のモブ生徒が同じチームを組み、健気に頑張る聖女に脳筋の心が惹かれる…
その組み合わせが実際に目の前にある
イグニスの所属科が変わったとしても変わらないのかゲームで見たような光景が広がってるんだ
……………乙女ゲームと違うの点は、イグニスが助けて!!!なんで聖女と同じチームなの!?って真っ青な顔してることか…
もしかしたら貴族科にイグニスが移籍している事で変わるかなと思ったけど、そうはならず…ゲーム通りに組まされているのが若干恐ろしい
助けてやりたいが、ここでおれが出しゃばっては時期王太子妃の横暴とか言われかねない…頑張れイグニス!昼食奢ってやるから耐え抜け…!
一方おれは、乙女ゲームでこの年にどんなチームを組んでいたかわからないモブ
どんなチームかな?って見回すと、昨年一緒だったガルロ先輩と同じクラス以外の2年生、そして見たこともない騎士科の1年生…Theモブの集いってチームにマイズがいるという…
美しく優しいマイズの顔面に癒されそうチームと名付けてもいいそんなチームだった
そしてレオンハルト殿下とシャルティは隣で同じチームとなっている…これも乙女ゲームでの組み合わせと同じ…
あらゆる所でここは乙女ゲームだって光景が………広がっ……………
□□□□□
…………………
…………
……
………た、……嘘だと思いたかった、でも背中に当たる熱は本物で…それがシャルティ様の魔法が暴発した火炎の玉だと気付いた時には地面に倒れてしまっていた
…暴発なんて嘘かもしれない…庶民だからってそんなにあたしが憎いのかな?
『うぐぅっ!!!』
『っ……!!腕が!大変っ!大丈夫ですか!?』
あたしの近くにいた一般生徒が巻き込まれてしまうなんてそんな…地面に倒れるあたしの目には腕に火傷を負った生徒が見える
痛む身体を引き釣り、怪我をした生徒に駆け寄る
すると、シャルティ様の声が聞こえてきた…酷く楽しそうな笑い声が…
『嫌ですわ、魔法が暴発してしまいましたわ~まぁ、そんな所に居ましたの?ごめんなさい?
あら、大変ですわお怪我は無いかしら?私、ふてぶてしい庶民は目に入りませんの
ふふ、無様に地面に這いつくばって…保健室に運び込んで差し上げましょうか?』
『…………っ!どうしてそんな酷い事が言えるんですか…!?あたしは庶民なのは本当だからいい、でもこの人は違うじゃないですか!
大丈夫、あたしが治癒してあげます…だから泣かないで…』
シャルティ様はどうしてそんな酷い事言うの?
あたしだけならいい、他の人まで巻き込まないで!
涙が溢れる…巻き添えで一般生徒が火傷をしてしまっている事が悲しかった…
急いで火傷をしている腕に祈りを捧げる…痛みがなくなりますよに、火傷が治癒されますように…って
眩い光が傷付いた腕を包み込み…奇跡を起こす
その奇跡をイグニス先輩が見ていてくれたなんてこの時は知らなかった…シャルティ様の横暴さに苦しむイグニス先輩をまだ知らないの…
□□□□□
「ィス…………ルディヴィス!大丈夫ですか?ボーっとしてましたけど…」
マイズの声で現実に引き戻される…
今の、今のなんだ?
まるで動画を観ているみたいな…おれが見せられて来たあの乙女ゲームのシーンを見ているような…
なんで今……そんな物をみたんだ…?
「!?!え…うん………大丈夫…ごめんマイズ、ちょっと考え事してた…大丈夫だから…」
なんだろう、この胸騒ぎ…
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