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乙女ゲーム編

乙女ゲーム

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シャルティに対する悪意とも取れる違和感を目の当たりにして、悪役令嬢の役目に動揺していたおれと、理由もわからずなシャルティ…
そんなおれ達がマイズに連れられて向かった先は、学園に通う王族と王族に認められた者に使用が許された休憩室だった


室内に入るとレオンハルト殿下とイグニスがややげっそり?ぐったりした感じに机に突っ伏している…
マイズが「戻りましたよ」と二人に言うと、まるで待ちわびていたかのように顔を上げ、若干涙ぐんでいるようなそんな状況


「マイズ………遅い………い、いや遅くない…!ルディヴィス、シャルティ…!大丈夫だったか!?」


「ルディヴィス…シャルティ嬢…大丈夫ですか?……おれは鼻が死にそうです…」


イグニスの鼻が死にそうな理由はわからないが、何故か二人はおれ達を…心配してくれているらしい
…それは言われなくてもシャルティが聖女様の私物を奪ったと思われたあの件…だと思う
でも、なんで?おれも心配されるんだ?疑惑を掛けられたのはシャルティの筈なのに…
それ以前に彼らは攻略対象者だ、聖女様の発言を疑う事なんてあるのか?


マイズに促されるようにレオンハルト殿下達、二人が座るソファの向かい側へ腰掛けた、おれたちの従者であるヘルリとマイケルは壁際に控える

何故ここへ呼ばれたのかわからない、聖女様から物を奪ったと言われたりと…おれ以上に不安そうな顔をしたシャルティがおれの手を握ってきた…



「ルディヴィス…そしてシャルティ…突然の事で動揺しているかもしれない
今日、シャルティに起こったことについて話をしたくて呼んだんだ…

ここは俺の許しなしには入れない特別な部屋、外に影も多数忍ばせている…だからここでの話は口外される事もない…だから互いに偽りなく話そう…?」


レオンハルト殿下がおれの顔をじっと見つめそんな事を言う、シャルティに起きたことについて…それだけじゃない何かを思っているような表情で…
それはマイズもイグニスも同様に…だ…
ここにおれたちを呼んだ三人は何かを考えるような、少し辛い表情をして顔を見合わせ、レオンハルト殿下が代表するようにこう言った



「先程…いや、それ以前から1年生に変な態度をされた事が有るだろう?それは全て聖女様が俺達に、そしてクラスメイトに向かって訴えかけて来た事が発端だろう

勿論、俺達はシャルティが聖女様の物を奪うなんて事もむしろ会ったことすら無いことも分かってる…それでも1年生には聖女様の言葉は本当になっているようなんだ…

聖女様はこう言った、シャルティ様が虐めると…しかし俺達がいない場所では悪役令嬢が自分を虐めてくれないと独り言も言っている、これから証拠の音声も流そう
そして………ルディヴィス…お前に対しても…悪役令嬢の兄が出しゃばってる展開はおかしいと言っていたんだ……


なぁ…ルディヴィス………お前は一体何を知っているんだ?」



悪役令嬢の兄が出しゃばる…
その言葉に背筋が凍るように冷たくなるのがわかる
聖女様は本当にこの世界が乙女ゲームだと知っている…そしてモブであり本来スチルにすら居ない筈の悪役令嬢の兄が何か画策し邪魔してると気づいている…って事なのか…?

頭の中をぐるぐると色々な事が駆け巡る
互いに偽りなく話そう…その言葉はどこまでを言っている?おれは皆に色んな事を隠しているんだ…
全てを話してもいいのか?でも、話したら未来が…幸せな…エンディングが遠のくんじゃ…でも、でも……………………



「…………………レオンハルト殿下、皆さん…できればお義兄様より先に私の話を聞いて下さいますか…?
私も皆さんに隠していることがあるんです…今回の聖女様から物を奪ったと言われてしまうことにも…関係する事が…」


何も言えずにいるおれの横で、おれの手をさらにぎゅっと握りしめシャルティが話し始める
幼い頃から時々夢をみていた事を

それは、おれが知っている乙女ゲームの悪役令嬢、シャルティ.サングイスの記憶とも取れる夢の内容だった…おれに出会ってあまり見なくなったと言ってたけど断片的に覚えている夢の記憶はまさに乙女ゲームで…


「…………シャルティの見る夢ではキミが聖女様を虐めると…そして私達、髪型から何から違うんですね…?」

「はい、全て違います…マイズ様なんて家のマイケルのような…女性大好き…みたいな人なんです
私は性別から疑うくらい綺麗で優しい、今のマイズ様のほうが美しくて素敵です

性格も私含め全員違うんです…断片的ではありますが、私は夢の世界で皆に恨まれ嫌われ…断罪される酷い女なのです…」


おれしか知らないはずのチャラ男マイズをシャルティは知っていて、レオンハルト殿下もイグニスもヘルリも…全てが乙女ゲームで知ってる知識と一緒の姿、いやマイケルだけは夢の世界にも居なかったらしいが…

攻略対象者である皆がシャルティを嫌う性格も…知っている…最後に断罪されるまで夢で見たことがあると言うことなのか?



シャルティの話を聞いてレオンハルト殿下達がここ最近聖女様と交流し、得た情報を実際に見せてくれる
聖女様は優しく清らかな乙女…ではなく、どうやったら次のイベントを起こせるか、何故バグのような状況になっているか…そんな事を考える明らかに乙女ゲームの記憶を持つ存在だった


「ルディヴィス…驚かないで聴いて下さいね?これが聖女様から得た最新の音声です…
迷子探しの魔具大活躍ですよ…ある意味…」


そう言って、イグニスが魔具を発動する…プライバシー関連から使用を見送りしていた現状お蔵入りのその魔具を聖女様に持たせてるの?それって盗聴………とか言う余裕は無かった…


『……さ………こう!!……って、いうか、よくよく聞いたらレオンハルト殿下の婚約者男って何!!!!ルディヴィスってよく考えたら悪役令嬢の兄でしょ!?ファンブックにちょっと名前だけ登場するモブでしょ!?なんでそんな奴がレオンハルト殿下の婚約者になってんのよ!!

絶対、こいつのせいじゃん…?バグの発生源こいつじゃん?悪役令嬢の所業流しても上手く広がっていかないのも悪役令嬢の兄がバグだからじゃないの!?!

……っもう!!ムカつく…!どうやって排除してやろうかな…ほんと迷惑……………』



あまりにも大きな独り言が室内に再生される…
おれが色々やって来たことがこのゲームのバグに繋がってしまっているようなそんな酷い独り言だった…
音声が終了するのと同時に、皆の視線がおれに向くのがわかる…




「ルディヴィス………悪役令嬢ってなんだ?悪役令嬢の兄って、バグって一体何なんだ……?本当にお前は何を知っている?大切な事を隠しているんじゃ無いのか…?」






レオンハルト殿下の声が静かな個室に響いた










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