上 下
45 / 45
乙女ゲーム編

木漏れ日の再会

しおりを挟む
Side レオンハルト





ついにルディヴィスと一緒に学園に通うことができる…この日をどれだけ待ち望んでいた事か…!
互いに多忙の為に月2回となってしまった婚約者候補としての交流会で会ってはいたが、それだけでは足りなかった
学園で会うまで待てず、サングイス公爵に話をして入学式の日、一緒の馬車で通学出来たのはかなりの思い出だ


ルディヴィスが通っている学園を一緒に登校して一緒に見る…夢にまでみた事が現実になり、同じように夢だったシャルティと熱く語ってしまったのは仕方ない

入学式で新入生代表の挨拶をする俺を優しく見つめてくれる彼は昔から変わらず、優しく信念があるように思う…そして、なにより愛おしい存在なのは婚約者候補となった日から変わらないのだ


ルディヴィスと話し手を握るだけで幸せな気持になる…それは心が救われたあの日を思い出すのは勿論だが…本当に楽しくて愛おしくて、癒されるんだ
魔力を学んで分かったことは、ルディヴィスは優しい魔力の持ち主である事も知った

俺はルディヴィスが好きだ、成長し好きという気持ちが成長し、愛しているという言葉を知った…



サングイス家の後継者問題、男の王妃という珍しさもあり現状でも婚約者候補のままなのは事実だが、俺は諦めるつもりなど無い、現在も頭の硬い重鎮と戦う準備を進めている状況…
父上と母上が婚姻まで大変だったと言うのがよくわかる…面倒な話をしてくる連中もいるのだからこれは一筋縄ではいかない…


昨年度保護された聖女を王妃に迎えてみてはどうかと言い出したのはどの貴族だったか…
俺がどれほどルディヴィスを愛して、その為に…ここまで苦難を乗り越えてきたのか知らないのか?と言いたくなるほど唐突にそんな話が上がった

勿論、全ての貴族ではない、母上も父上もルディヴィスの有能さを知っているし俺の気持ちもわかっている、しかし第二王子を推薦する大臣達はその話を聞いて、男の王妃よりも、女性であり聖女である存在は国にとっても大きいと面倒な事を言う
男を求める王は如何なものかと…不敬ギリギリを攻めてくる嫌な連中だ
父上が好きでもない相手と婚姻し、子を求められる苦痛を最近になり俺に教えてくれた事で、それが現実味を帯びてしまうから辛い…


一応、時期王太子として陛下達と共に、今代の聖女と顔合わせだけはしたが、本当に美しい美少女と呼ばれる部類の女、その認識しか生まれなかった
不安などなく、自信に満ち溢れた笑みで挨拶してきたのを覚えている

聖女が素晴らしい存在なのはわかる、幼子にも使える素晴らしい聖光の力…そして神へ祈りが届く唯一の存在…それはわかるが、それと俺の気持ちは別だ




そんな一度顔合わせをした聖女が俺の目の前にいる



俺と同い年であった事は知っていたが、そうか学園にも通っていたのか…魔力が強いんだからそうだよな…
資料を借りるために図書館へ向かう途中、木々の生い茂る通路を通り、今日は天気が良く木漏れ日が気持ちいいなと和んでいる俺を呼び止めたのは聖女だった



「お久しぶりです、レオンハルト殿下!ずっとお会いしたかったんです」

「聖女の…ルチア嬢だったかな?一度顔合わせ以来か…久しいな、何かあったのか?」


この学園は貴族も魔力の高い市民も通うため、爵位で人を見下したりする事はなく、誰でも平等と言われている
しかし、王太子である俺に話しかけてくるのは相当の度胸がいると思うのだが…この聖女は度胸があるのか?
俺に会いたかったとも言う…何か用がある様な関係だったか思い返すが思い出せない…


「えっと、あの…あたし学園に来てレオンハルト殿下と共に勉学を学べると楽しみにしていたんです…でもクラスが違うどころか学年が違ってて…
あの!勉強分からない所があって、レオンハルト様に教えて貰えないかなって…せっかくこんな素敵な日に再会したんだし…」


もじもじと顔を赤らめ俺を見つめる聖女…可愛らしいその表情は聖女としての品を感じさせつつ、人を癒す力がある様に感じる
市街から保護された彼女はきっと慣れない環境で不安なのだろう…だからこそ知り合いである俺に頼ろうと…………



知り合い?…いや、違う、一度顔合わせしただけの他人だ
加護欲を刺激する可愛らしい表情…だが、全く惹かれないのは何故だろう…むしろ背筋に冷たい水を掛けられたような震えを僅かに感じたような気がした


「すまないな、2学年の勉強に使う資料をこれから探しに行く約束をしているんだ、互いに各々高みを目指して頑張ろう」


「え、あっ、レオンハルト様…!?」




このまま此処にいてはいけない気がして…俺はその場を立ち去った








Episode1 木漏れ日の再会



……………………
……………
………



王太子殿下である俺がいくら学園の生徒であるとは言え、レオンハルト様などと呼ぶ生徒がいるのか?
心に何かが引っかかり、急いで2学年の教室へ戻ると直ぐルディヴィスと目が合った


「レオンハルト殿下…どうした?大丈夫か…?何かあったのか?」


直に立ち上がり、俺の所へ心配そうに駆け寄ってくれるルディヴィス…
俺は国の顔になる存在、相手に読まれない為に心の中で思うが表情や顔色までは変えてない、なのに目が合っただけで俺に何かがあったと気付いてくれる…

いつも以上にルディヴィスが愛おしく感じた…思わず抱き締めてしまう程、ルディヴィスに触れたかった
普段なら二人きりの時でしか恥ずかしいと許してはくれない筈なのに、俺のよくわからない不安を見透かすように抱き締め返してくれる事が嬉しい

背中を擦られ、頭を撫でられる…それだけでよくわからない不安な気持ちが安らいでいく…
何かあったなら教えて欲しいと言われて俺の心に浮かんだ言葉は一つだった



「知らない女に名前で呼ばれて…背筋がそそぞって…なんか嫌だった…」


「え?女?」


「ぷはっ……!!」



おい、親友?
奥の席でマイズが吹き出すように笑うのが見えたのは気のせいじゃ無いと思う
でも、知らない女怖いなってルディヴィスが笑って慰めてくれるからいいや、こうしてるだけで不安が溶けて、ほんとに癒やされるんだから…


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(26件)

ロイロイ
2024.09.18 ロイロイ

初めまして!面白くて一気読みしました😆
ルティと殿下のサプライズ…!良いですねぇ!
相棒感が出てる2人で笑ってしまいました🤣
入学時にベンチと木を見て想像して楽しむ2人も可愛い✨

聖女は前世の妹っぽい🤔
兄貴は都合のいい奴隷みたいな扱いだったし、もし前世の妹でも絆されないでー💦と思っちゃいますね!
あの聖女じゃ攻略対象達救われないと思う🥺

たなぱ
2024.09.18 たなぱ

感想ありがとうございます!全部読んで頂けて嬉しいです✨️


レオンハルト殿下とシャルティ相棒説に気づいて貰えた☺今後展開がかなり動くので答え合わせしつつ読んで楽しんで頂けると嬉しいです!

解除
ハナカボ
2024.09.17 ハナカボ

いつも楽しく読ませて頂いてます。
ついに聖女登場でストーリーが始まるかと思いきや、のっけから主要キャスト2年集合で声出して笑ってしまいました(*´∀`*)
続き 楽しみにしています♪

たなぱ
2024.09.18 たなぱ

感想ありがとうございます!

学年が違う展開にヒロインはどうするかの展開楽しんで貰えると嬉しいです☺

解除
ロンズ
2024.09.16 ロンズ

オープニングの場面、とてもおもしろかったです。
もう、クスクス笑いながら読めてしまいました。

今後の展開も楽しそうです。

たなぱ
2024.09.18 たなぱ

感想ありがとうございます!

マイケルが全てを持っていったオープニング楽しんで貰えて嬉しいです✨️

解除

あなたにおすすめの小説

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

【R18】ショタが無表情オートマタに結婚強要逆レイプされてお婿さんになっちゃう話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない

かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。 女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。 設定ゆるいです。 出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。 ちょいR18には※を付けます。 本番R18には☆つけます。 ※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。 苦手な方はお戻りください。 基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

師範を殺したくない俺(勇者)と、弟子に殺されたい私(魔王)

良音 夜代琴
BL
師範が大好きでたまらない赤髪緑眼の三つ編み少年と、 無自覚鈍感なぼんやり銀髪メガネ師範が、 色々な意味ですれ違いながら 身も心も少しずつ分かり合うお話です。 少年はぐんぐん成長して青年になります、 あらかじめご了承ください。 お手数ですが、ルビの無い部分も師範は全て“せんせい”とお読みいただけると幸いです。 成長するショタと、その成長に喜んだり戸惑ったり寂しくなったりする大人が大好きです!! そして、成長したショタに翻弄されてしまう大人もまた大好きです!! 隔日で奇数日に更新しています。 10/27が本編の最終話で、その後おまけが2回更新されて10/31に完結予定です。 色々と面倒な師範ですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです♪♪

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。