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幼少期編

赤と白とお茶会

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「本日はお招き頂きありがとうございます、サングイス公爵殿、公爵夫人
私はエースメイス侯爵家次男マイズ.エースメイスと申します」


「ようこそマイズくん、ルディヴィスから話は聞いているよ茶会を楽しんでいってくれ」




父様と母様に素晴らしい所作で挨拶をする美少女…ではなく、おれと同じモノをあの可愛い顔にぶら下げている攻略対象者だったマイズくんが遊びに来た

前回出会ってから1ヶ月程、本当にお茶会に誘ったら来てくれたのだ!出会った時は泣きまくってて可哀想だった彼は見違えるほど明るく、凄く元気になっていて安心する
おれの体験談が少しでも力になってくれてたら嬉しいよ


父様達に軽く挨拶をし、本当に交流目的のゆるい茶会をするためガゼボを目指す
メイドに連れられ、中庭に案内する途中で目に留まるのは、本日も着ている教会の服なのだろうか男物っていうよりは中性的なチュニックみたいな服…これのせいで一見本気で美少女に見える…すごい

この美少女がどうしてイケメンに成長してしまったのかとふと考えたりしていると、マイズくんは笑っておれと別れた後のことを教えてくれた
自分の気持ちも吹っ切れて、両親へも自分の気持ちを伝えて最終的に和解出来たそうだ、あの日から自分の魔力も好きになれたんだって…本当によかった

互いに敬称いらないよなんて話してながら、本当に彼は野郎なのか…野郎なのか?と心の中で唱えててごめんよマイズ…それだけシャルティとお揃いコーデしてくれないかなってくらい可愛いのが悪い

そして許せ!今日のお茶会でおれは見てみたいものがあるんだ!
公爵邸の中庭、ガゼボに既に待機しているシャルティと一緒にいる所を見たかったんだ!




「初めましてマイズ様、お会いできるのを楽しみにしておりました
お兄様がお世話になっております、義妹のシャルティ.サングイスです」

「こちらこそ宜しくお願いします、マイズ.エースメイスです…………とレオンハルト殿下…!?」

「マイズ久しいな?まあ、今日はただのレオンハルトだ、俺の事は気にするな」



素晴らしいカーテシーを披露してくれる我が義妹のシャルティはやはり可愛い
そして今日、本当は居ないはずのレオンハルト殿下は急遽本気でお忍びで我が家に来ている
マイズと知り合いだって言うから…子犬のように俺は行ったら駄目か?とか言われたら断れなかった…許して…?


本日はお茶会はお茶会でも、非公式な子供の交流目的のゆるいお茶会だ、各自軽く自己紹介を終えてガゼボに用意された菓子や紅茶を楽しみつつ楽しく過ごすのが目的…
一応婚約者候補のおれとレオンハルト殿下は隣同士、そしてシャルティとマイズが隣同士でソファに腰掛ける訳だが、思った通り目の前が天使だった


赤い髪の美少女シャルティと白い髪の美少女?マイズが並んで座っているこの奇跡よ…
目を覆いながら指の隙間から何回も見てしまう…うっ、目の前が可愛いっ!!!妹が増えたみたい可愛い!
シャルティは聞き上手、話し上手な子である、マイズとも直に打ち解けて互いに微笑みながら会話してる美少女なんだよ二人とも…そして性格も可愛い…クソ妹とどうしても比べちゃって可愛いが爆発してしまうんだ…ゆるせ



「ルディヴィス、先程から何をしているんだ…?」


「レオンハルト殿下…気にしてはいけません、目の前が可愛いのでちょっと兄心が擽られてマイズもセットで可愛いって脳内が暴走しているのです…気にしては負けです」


「よくわからないがルディヴィスが幸せなら大丈夫だな…?」



物わかりと理解力の素晴らしい殿下大好きです
生前には無かった癒しが四方八方からおれを襲ってくるからほんと転生してよかったって思えるんだ…

それから4人で色々な話をした、レオンハルト殿下とマイズは古くから教会と王室との交流で友人関係だったとか、学園に通うまでにやりたい事とか、魔力についてとか色々…
来年は殿下とシャルティも魔力が分かる、そしたらピザ釜でピザ焼こうって言ったらやっぱり笑われたけど…とても楽しい時間だった
これぞ平和と言っていいと思う
ゲームの世界ではシャルティを憎み、断罪する筈の殿下やマイズが楽しそうにシャルティと会話しているのはそれだけで幸せになる

ヒロインである聖女が登場したら彼らは心を救われる程の恋に落ちる…そしたらおれとシャルティはしっかりフェードアウトして行くから、本当に邪魔しないから…その日まで素敵な友人関係でいて欲しいとそう思う


シャルティを断罪だけはさせない、させたくないと思われる存在にする…素晴らしい淑女へと成長しているシャルティを認めてやってくれ


あるかも知れない未来の悪役令嬢と攻略対象者が揃うそんなお茶会で、文面で死を告げられるモブであるおれは終始そんな事を考えていた
時々、こうして皆で集まって互いを知れたらいいと思う、知らないからこそ疑って正しい事すらも見えなくなるんだから



あと6年、この世界が本当にゲームの世界であれば、光の聖女が保護され学園でのシンデレラストーリーが始まる


レオンハルト殿下もヘルリもマイズも…これからどんどん攻略対象者の風貌に成長を遂げていくんだろう…ゲームの見た目になった時、聖女への想いに気付くのか…それは誰にもわからない


1歳違いのおれは授業などシャルティと時間を共有出来ないのが懸念点か…
とにかくおれは悪役令嬢の兄として、シャルティを幸せにする…実際に出会っていい奴だってわかった攻略対象なお前たちに断罪なんて悲しい事をさせない、みんな幸せになれたらそれが一番だと心の中で何度も考えている




楽しい茶会はあっという間に終わり、殿下とマイズの事を更に知れたような素敵な時間…なによりシャルティが楽しそうでよかったよ
またお茶会しようと笑顔で帰宅を見送った




自室に戻るとヘルリが着換えを手伝ってくれる
実は攻略対象者だし、おれの大切な従者だし…ヘルリも誘いたかった…きっぱり断られてたけど…

自分は従者ですって、しっかり弁えててとてもいい子なんだよな…後でブラッシングしてやろう
ポチ太郎の飼い主のスキンヘッド兄貴も言っていた、良き愛犬はしっかり褒めろと

ヘルリ、お前も大切な従者で家族みたいな物だから今日は寝るまでとことん褒めてやろうと、ブラシを取り出したおれの1日は深夜寝るまで幸せで包まれていたのだ









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