上 下
6 / 160
幼少期編

新しい家族と攻略対象の気配

しおりを挟む








顔合わせから一月後、自宅の広い庭園を使用しガーデンパーティ形式で父様とペトラさんは無事再婚した
この国では再婚する場合はあまり大きな挙式はしない事を当日知る…世界が違うと変わってくるんだな…
参列者は近しい僅かな人のみの小さな挙式、父様の知人神父様がおり、その人が自宅まで来て二人の祝福をする光景は中々見れるものじゃない


綺麗な花嫁衣装を纏ったペトラさんと寄り添う父様はとても幸せそうだ…おれとシャルティもお揃いの色合いの装いになり、フラワーシャワーを撒く大役を担った


父様の親しい友人達は二人をとても祝福してくれる、サングイス公爵家に連なる親族の皆さんもペトラさんやシャルティに対してとても好意的だった

しかし、ペトラさんの実家は違う、誰も参列者がいなかった…本当に乗っ取られたような形で冷遇されていたらしく、最近相手が父様で公爵家だろうが、関係ないと身一つで追い出されたに等しいらしい…


元々、父様の弟が婿入りを条件にペトラさんがレルム伯爵家を継ぐ事になってた、しかし若くして流行り病で父様の弟が死去、サングイス家との深いつながりがそこで途絶えてしまった
そこを狙い、喪が明けたと同時にレルム伯爵家を実質手中に収めていた親族だ、この幸せしかない祝の輪に不適切だと思うからこれで良かったのだろう…


温かな日差しが優しく父様と新しい母様を祝福するみたいにその日は常に穏やかな快晴が続く
今日からシャルティは本当にぼくの義妹になったんだ





挙式から数日後
新しく母となったペトラさんを母様と呼ぶことなど造作もないおれを筆頭に下から本当の家族のように幸せいっぱいな家庭になっている
仕事が忙しい父様もなるべく帰宅して一緒に食事を摂ろうとするし、メイドや執事達ともペトラさんは公爵夫人として上手くやれていると思う

そして、おれは日々恐ろしいほど癒されて過ごしているのだ…………



「おにいたま、今日もおべんきょういっしょにしてもいいですか…?」

「もちろんだよ、ルティはがんばりやさんだね」


おれの隣にちょこんと座り、一緒に授業を受けるシャルティ…家庭教師がおれの下にくるとすかさず一緒に勉強したいと来てくれる可愛い存在…
頑張り屋だねと頭を撫でるともう猫ちゃん並みにすり寄って甘えてくる……どうしようあまりにも可愛い…
家庭教師の先生、バークさんも子ども好きないい人でシャルティを邪魔にする事なく一緒に受けさせてくれるナイス紳士だ

この国では、貴族に対して15歳から学園への入学が義務付けられている、それまでは自宅で家庭教師に基本的な勉学やマナーを教えてもらい来たるべき入学に備えるのだ

正式に義兄妹となり、今後の話を父様が教えてくれた時、分かったことがある…おれとシャルティはまさかの1歳差だった

おれが6歳、シャルティ5歳…………
年子で顔立ちや目の色が似ているなんてとんでもない事にならなくて、精神年齢が社畜に引き上げられていてよかった…
これ、ほんとに下手したら父様が前の母様捨てて浮気して子供まで!みたいな展開だった…あっ、その状況がゲームの世界でのおれなのかもしれない…悪役令嬢サイドは殆ど描かれなかったから、事実は分からないが

そして、悲しいことに…この世界は高確率で乙女ゲームそのものだ…15歳から通うことになると言われた聖ラピスチアーノ魔法学園
乙女ゲーム、光の聖女に愛を灯すの舞台である…そこにいずれ通うことになると今朝知った…
もう確実に、類似してる世界じゃない…ここは乙女ゲームの世界だ

悪役令嬢、シャルティ.サングイスが断罪され悲惨な末路を辿る場所にいずれ通わなければいけないのだ…
舌足らずで身体も小さいシャルティは肉体、精神共に年齢と釣り合わない…これまでの生活環境…急に父をなくし冷遇され過ごした日々の影響だろう

シャルティが何を切っ掛けに悪役令嬢になったのか、全く分からないが現状はめちゃくちゃ可愛くていい子だ…このまま優しい素敵な淑女に成長して欲しい…そしてゲームなんて関係無しに幸せになって欲しいよ

そのためにも、おれが強くなろう…シャルティを守り道を踏み違えないように支えていこう…
そう、改めて本当の家族となり決意を新たに胸に誓った




「ルディヴィス様、シャルティお嬢様、礼儀作法はお二人共素晴らしい所作で行えるようになっていますね…教師を務める私としても鼻が高いです
今月末に行われる王家の茶会までに完璧にできるようにと旦那様より仰せつかっておりましたので…これなら大丈夫でしょう」

………………んっ?バーク先生、今なんて言った?
礼儀作法?所作がいいね?それは嬉しい
その後なんて言った?王家………?茶会…………???


「バークせんせい、シャルティ達はおうじょうにいくのですか?」


「はい、今年は王太子殿下と高位貴族との顔合わせがあるのですよ
しっかりとした日取りが決まったら旦那様からお話があると思われます、それまでしっかりと礼儀作法を完璧にしましょう」


シャルティは元気に返事をしている…おれも元気…に見えそうな返事をした
王太子殿下に今月末会う……???本気で???
乙女ゲームの攻略対象者、王太子レオンハルト.ロードヴィリア…その幼少期に会う

何か重要な事を忘れている気がしてならなかった
本日分の授業が終わり、ペトラさんに呼ばれて庭でお茶を楽しんだり…夕食時には帰宅した父様から、バーク先生が言っていたように王宮の茶会に呼ばれている事を改めて説明された


「バーク先生から聞いていると思うが、今月末、王妃様主催の非公式な茶会がある
王太子殿下と歳の近い者たちを集め、顔合わせを兼ねていると言ったほうが早いな
我々はサングイス公爵家は王家との繋がりも深い、将来的に私の後を継ぐ可能性もあるのだから準備はしっかりとしなさい」


父様の言葉に頷く事しかできない
就寝前の時間、ベッドに横になるまでひたすらに社畜だった頃のクソ妹がゲームを見せつけてきた頃の記憶を探る…
そして、おれは思い出した

悪役令嬢は何故、ヒロインを虐めて最終的に断罪された?
それは王太子殿下の婚約者だったからだ…








シャルティはレオンハルト殿下と婚約する未来にある…おそらく今回の王宮での茶会、そこで婚約者になる可能性が高い…

自らに破滅の烙印を押す相手との出会いが義妹に迫っていた






しおりを挟む
感想 158

あなたにおすすめの小説

無自覚な

ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。 1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。 それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外 何をやっても平凡だった。 そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない そんな存在にまで上り積めていた。 こんな僕でも優しくしてくれる義兄と 僕のことを嫌ってる義弟。 でも最近みんなの様子が変で困ってます 無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

【第2部開始】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~

ちくわぱん
BL
【第2部開始 更新は少々ゆっくりです】ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

一日だけの魔法

うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。 彼が自分を好きになってくれる魔法。 禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。 彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。 俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。 嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに…… ※いきなり始まりいきなり終わる ※エセファンタジー ※エセ魔法 ※二重人格もどき ※細かいツッコミはなしで

処理中です...