離縁しようぜ旦那様

たなぱ

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騒動編

真実と判決

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「お願いっ、ううっ、フリード様に会わせて!」


そう、何度も何度も涙を零しながら泣きじゃくる聖女を見てフリード様はどんな気持ちでいるのだろう?もしかしたら運命の人…的な存在だったり?

彼女が何かしらの物語の中でそのヒロインが聖女だったら…そう考えてしまうのは、前世でそういう物語が流行ったとか知ってるからだ
ねーちゃん経由で色々無駄に知識だけはあるんだのなー前世のおれ、磯野は

でも、そんな想像をしても全然不安にならないのは、ひたすらおれが狼吸いしてても嬉しそうに受け入れているフリード様が居てくれるから
早く帰りたいな…既にアデルバイト辺境伯の応接室だけど!!!おれは寝室に帰りたい!!!


「レラージェ国の聖女、キミの言い分はよくわかったよ…フリードに会わせたら満足するんだね?ちゃんと話ができるなら会わせてあげるよ」


隣から声が聞こえてくる…顔は見えないが、雰囲気からしてレドラ王子はこの取り調べ的な現場を面白おかしく楽しんでるのがなんとなーくわかる
彼女がおれの誘拐事件を計画し、排除しようと実行したのは事実…取り調べとして今話を聞いているけどそれはほぼ無意味だ
聖女の罪はもっと大きくなるかな?とか、聖女がフリード様が狼って事実を知った時の反応を考えつつ話してるようなそんな感じがする…


「もちろんです!フリード様があたしを見たら全部わかります!誰が間違ってるか!そこのモブがいかに酷い人間かも!!!」


自分の立場わかってるかい!?聖女!!!あと何を根拠におれを酷い人間だと言うのか…聖女よ…
てか、モブなのはモブ顔で生まれてきた自分が一番よくわかってるぜ!
既にドラレイド帝国の辺境伯夫人なおれに対して酷い事を言っている事実も罪に付け加えていそうなレドラ王子は楽しそうに聖女の訴えに対してこう言った


「リデン夫人の祖国で不要だと言われた聖女様はフリード、キミと会いたいそうだけど…ずっと目の前で会い続けてる時ってどうしたらいいかな?
ねぇ、フリード?」



レドラ王子は横にいる巨大な狼に話しかける…けどフリード様は答えない…いや、答えられない
だって獣化していると話せないから…ついでに獣化してると全裸だ
おれがしがみついているとはいえ、喋るために獣化解いたら一糸まとわぬ美しい肉体美を晒す事になる…つまり全裸を晒す事になってしまう
でも、それで良い!おれの旦那の美全裸はおれだけのもんなんで!


「え………?うそ…………そ、その…その化け物がフリード様?モブのバカでかいペットの犬でしょ?
何言ってんのよ…フリード様は獣人よ?
フリード様よフリード様…!あたしが会いたいのはフリード様!!!アデルバイト辺境伯の当主で銀髪の…かっこいい小説のヒーロー………
それがそんな犬なわけ…毛むくじゃらの気持ち悪い獣なわけ無いじゃないの!!!!」


「……………………は?
おい、聖女…今なんて言った?何処が毛むくじゃらの獣だ!!!フリード様はこんなにもスベスベふわふわの最高級な毛並みで良い匂いもして超絶可愛いしかっこいいんだからな!?!
フリード様が気持ち悪い!?!ふざけた事言ってんじゃねーよ!!恐ろしいほど素敵だろ!!おれが居ないと生活できない♡とかいって四六時中甘えてくるこの可愛さを馬鹿にしてんじゃねーよ!!!
おれ、この姿のフリード様にも抱かれていいって思ってますし?この姿の狼ちんこだって愛せますし!?普段のちんこの威力も知らねぇ雌がフリード様を愚弄すんな!!!!」


「………ふふ、くくくっ………あっはっはっ!!!いいねぇ、リデン夫人最高だよ!フリードも嬉しいからって尻尾振りすぎるとホコリが舞うよ?
あー楽しい…ふふふ…っ、帰ったらミルドにも教えてあげなきゃ」


おれは聖女の言葉になんか我慢が出来なかった…
フリード様を気持ち悪い獣っていう部分とか特に許す事なんて出来なかった…だからこそもふもふ胸毛に顔を埋めたまま叫んでしまったのだ
まだ風呂でちょっと見ただけだけど、獣なフリード様のフリード様とか規格外でやばいんだからな!?気持ち悪いっていうより全身が神々しいだろ!?
馬鹿にすんじゃねぇよ!!ていうかフリード様全身、抜け毛の一本までおれのだし!?!

はぁ、はぁと息を整えつつ、フリード様にしがみつき直す…
ふと、見ると本当にレドラ王子が言うようにフリード様はおれの言葉が嬉しいのか、ふっさふさの可愛い尻尾をブンブンブンブンブンブンと激しく振ってる…うん、くそ可愛い

聖女が嘘よ!そんな!信じないわ!とか言ってるけどもう、どうでもよかった
てか聖女、メニラ姫の時もだけどさ…全然学習しないのな?ドラレイド帝国の禁句、余裕で破ってく姿は逆に凄いと思うよ


ひとしきりレドラ王子は楽しそうに笑った後、フリード様はこんな毛むくじゃらの気持ち悪い獣じゃない!信じないわ!と喚き散らす聖女の口を再び封じたような音が聞こえた


「どこまで愚かなのか気になって泳がせてたけど…想像以上に酷いね
こんなのが友好国となるレラージェ国の聖女だと信じたくは無かったよ…ドラレイド帝国で行ってはいけない差別の言葉を辺境伯に向かって連呼した罪で開戦だってあり得るのにね…
でも安心するといい、戦争なんて野蛮な言葉父上達脳筋の考えだからね

聖女、ドラレイド帝国第三王子である僕がお前に下す判決は……奴隷穴嫁としてナッグミッド侯爵家へ嫁ぐ事を命ずる…これでどうかな?リデン夫人?」


「…………え?おれ!?!え!?!よ、よ、よ、ヨロシクテヨ?????」




流石レドラ王子、おれがふと思ってた聖女の罰ドンピシャな判決をしっかりと下して下さった



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