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溺愛編
自覚する話
しおりを挟むおれは何をした!?今、何してた!?!
フリード様におれ、何をした!?!?!
使えてよかった全属性を駆使し、闇魔法で存在を薄くして風魔法を足に纏っておれは今、全力で走ってる
普通にいい感じのカフェで和んで、美味しいケーキ食べてた筈なのに…おれ、おれっ……!!!
唇に触れたふにふにとしたあれ、フリード様の瞳の色も毛穴も見えそうなほど近いあの位置
そして…唇を優しく舐めてきたあれは舌だ…
おれ、フリード様に自分からキスしてた…
友達から始めましょうとか…偉そうに言っておいて
親友になってアデルバイト辺境伯で暮らしていきたいなとか思ってたのに…
自分から何してんだよ…!!!
どうしよう…全然嫌じゃ無かった
…男同士でキスしてる事も気にならない、普通に気持ちよかった…唇を舐められて舌を差し出したくてしょうがなかった事もおれの本心だったと思う…
おれ、おれ……………フリード様の事好きなのか?
いい人だとは思う、優しい人だって…でもそれと好きは違うんじゃないのか?それともこれが番になった者の影響なのか!?
わかんない…わかんねぇよ…なんでこんなに苦しいんだ………番って立場だからなのか?でもそれは本当におれの気持ちなのか…?
何処に向かうかなんてわからずただ走る、無心で走りたいのに頭の中を埋め尽くすのはフリード様の事ばかりで更に混乱してきた
獣人である存在と違って人間には番を認識する事が出来ないって言ってた、でも魂で惹かれ合う影響は計り知れないって…この訳わかんない感情も…もしかしたら…
「はあっ………はあぁ…………ううっ………」
街が遠くなり、森の中まで走ってきて…段々と、なんで逃げたのかわからなくなってきた
おれたち、制裁とか人質とか結ばれたけど…元々婚姻して夫婦になってるじゃん…か?
ならキスくらい…それ以上したって別にいいんじゃないのか…?
なら、なんでおれ…こんな所まで逃げて来たんだろう…
なんで、こんなに涙が溢れてくるんだろう…
「……………リデン」
背後から逃さないって言うように、急に抱き締められて、耳元で名前を呼ばれて…どうして嬉しいなんて思うのか…訳が分からない…
気配を消して、魔法を駆使してこんな森の中まで走ってきたのに…なんでもう居るんだよ…
「…………すまない、リデンから口付けされて…嬉しさのあまり自制出来なくなりそうだった…
お前が、そんなに俺と…触れ合いをしたくないと言うなら、婚姻を嫌だと思ってるなら…ちゃんと距離を取る…
でも、離縁だけはしたくないんだ…それ以外ならなんでもする、契約書を書いてもいい…別邸も自由にお前だけで使っていい…
だから、だから…泣かないでくれ…俺から離れて行かないでくれ…」
おれの肩に頭を埋めるみたいに抱きしめるフリード様の声は震えていた、じんわりと肩が温かくなるのはフリード様の涙なのかもしれない
おれが勝手にキスして混乱して、勝手にここまで逃げて来たのに…おれが悪いのにフリード様が悲しむ事が苦しかった
身長差と体格差を感じるフリード様の腕の中は温かい…不安や混乱が解けていくみたいに落ち着く
ああ…そうか、そうなんだ…
今も、顔が見えなくても抱き締められて居ることに確かに安心感と幸福感を感じる…ここまで追いかけて来てくれたた事が何より幸せで…他の誰でもないフリード様だからこそ感じる感覚…
コレは紛れもなくおれがフリード様を好きって事だ、彼を求めている証拠じゃないか
「…………っ、ごめんなさい…フリード様…こんな所まで走ってきて
おれ、違うんです…嫌じゃなくて怖かったんです…
キスとかした事無かったのに自分からして、唇舐められてもっと先を求めてしまって…これがおれの意志なのか分からなくなって怖かったんです
フリード様の事、嫌いじゃない…おれ、知らない間に物凄く好きになってる…フリード様にもっと触れてほしい、もっと側に居たいって……そうおもっ…………っ…んむっ!?!」
そこまで言って、おれはフリード様の顔を見たくて、向き合うように抱きしめて欲しいと向きを変える為に腕を振り解いた
けど…おれの動きより早く、向きを変えたおれの顔をフリード様が捕まえて、二人の距離が近付いてきて、また唇に柔らかいものが当たる
ちゅっ、ちゅって啄む音と、何度も角度を変えながらおれの唇に触れるそれは…男らしいのに全然カサついてなくて柔らかい、確かにフリード様の唇だった
もっと触れてほしくて、キスもう一回したかったおれの気持ちが丸わかりなのか…?
おれを怖がらせないように優しく労るみたいにキスしてくれてる、どうしよう…嬉しい…
唇が軽く触れているだけなのに、それすら気持ちよくて…さっき唇を舐められた時の幸福感を思い出してしまう
だから、無意識におれは自分から口を少し開いていた
ぬるりと生暖かいおれのじゃない舌が、おれが求めている事を叶えてくれるように口の中へ入ってくる
唇の裏を、八重歯を舐めながら少しずつ中へ舌が入ってくる…ただそれだけなのに、どうしようもなく嬉しくて…気持ちよくて…嘘みたいに甘く感じた
口の中を愛撫しながら、フリード様の舌はおれの縮こまった舌を擽る…おいでって、怖くないよって呼び込むみたいに優しく撫でられて嬉しい…
恐る恐る素直に舌を差し出すと、優しく絡められて、フリード様の口の中に引っ張り出されて…少しだけ噛まれた
「んっ、………んんっ…ぁむっ………んぁ゙あっ♡」
くちゅ♡くちゅ♡ぢゅるる♡って水音が頭に響く
頭を大きな手で固定されて、背中にも片手が回って抱き込まれるみたいにキスされてる
優しく噛まれた舌が痺れて気持ちいい、フリード様とキスして、舌を口の中で愛撫されている事実が嬉しい…
どうしよう…嬉しくて、嬉しくて………たまらない…
好き、好きなんだ…おれ、フリード様のことが…
この世界でする初めてのキスにおれは息の仕方も忘れ、記憶がなくなるまで求めてしまった…
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