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溺愛編
我が家のガチムチコック
しおりを挟む迷子のアデルバイト辺境伯家前当主、ガダケルト様を探して全力で行った迷子探知魔法は見事成功した
どう見ても家の実家の厨房で…どう見てもふわふわオムライスとケーキ作りが得意な家のコック長が画面の向こうで可愛く盛り付けたケーキを微笑ましい顔で見ている
そう言えば…ハミルトン公爵家の料理人…みんな普通なのにコック長だけすごくムキムキなおじさんだったな…父様と仲良しだし野営にも着いてきてくれるいい人だったけど…
よく考えると違和感ありありなムキムキガチムチコック長だったな…
おれが遠い目をしている中、ガダケルト様が生きて楽しそうにケーキ作りしている光景に嬉しそうに涙を零すラヴ様と、涙を堪えてそうなフリード様を見て…え?あれでいいの?探してた最強を求める前当主が乙女心ありそうなコック長になってるけどいいの!?!
とは言えなかった
「リデン、この場所は一体どこなんだ?父上は…前当主は一体何処で料理人をしているんだ!?」
「ガダケルト様は何処にいるの?こんな可愛い顔でケーキ作ってるガダケルト様は何処なの?え、美味しそう!切り口まで美味しそうなケーキ作れちゃうのガダケルト様!?」
ガチムチコック長でいいらしい二人がおれに詰め寄る…いいんだ…最強?なのか?最強?あれでいいのか?って思うのおれだけなのね!?!
そんな気持ちを隠しつつ、おれは素直に教えてあげる…どう見ても見覚えがあってどう考えてもおれが知ってる場所だから
「えーっと、ここは…実家の厨房ですね…?
前当主様は……なんか……あの、うちの……ハミルトン公爵家のコック長になってます!!!!」
精一杯伝えた言葉にフリード様もラヴ様も…事の顛末を見守ってたメアリー達もポカンとしてた
だっておれも知らんよ…実家のコックに隣国の前辺境伯当主がなってるなんて…
…………………
……………
………
衝撃の事実に皆、取り敢えず一旦落ち着こうとなった
もう夜中近くにもなり、おれは若干…いやいつももう寝てる時間なものでおねむでもある…
前当主は元気に生きている、なんかもう目と鼻の先じゃないけど嫁の実家にいるようなものだ
ガチムチコック長は数年前から家で働いてて一回も転職とかそんな感じもなく骨を埋める勢いでハミルトン公爵家に仕えてたと説明するとラヴ様もフリード様も安心されたようで明日、また話をしようとなりましたとさ
そんなこんなで皆驚いた表情のまま、本宅に戻るラヴ様とメアリーさん家令さん、天井裏に戻るチュウ太くん、何故かおれのベッドに入ってくるフリード様…フリード様????
いやいやなんで入ってくるかな!?夜は本宅でお休みじゃないの!?!
てか狼さんフリード様いるから今日は帰ってこないの!?と脳内会議をしてたら抱き締められた…
「リデン…せっかくの誕生会なのに別の話を持ち出してしまってすまなかった…でも、ありがとう…
急に譲嫁を預けられて旅に行かれた父上を恨んでもいた…でも探しても探しても見つからなかったから諦めてたんだ…
リデンが居てくれて良かった、見つかってよかった…父上が無事に生きてくれた事は素直に嬉しかった…リデン、リデン…ありがとう…本当にありがとう…」
お昼寝とは違い薄暗い室内で…ベッドの中でフリードはおれの肩に顔を埋めるようにしながらしっかりと抱きしめてくる…
友達の距離感とはいったい何なのか…それを考えるよりも、少しだけ涙声なフリード様がちょっと可愛く見えて知らぬ間に頭を撫でていた
「誕生会に知りたかった事も知れて良かったです、真の奥様がお姑様だとはそれもびっくりサプライズですね?フリード様が祝ってくれて本当に嬉しかったです…ありがとうございます
おれが少しでもアデルバイト辺境伯家の役に立てたなら形だけでも嫁いできて良かったと思います
大丈夫、大丈夫ですよ?フリード様…おれの里帰り気分でガダケルト様を迎えに行きましょう
コック長になる何か理由があるのかもしれません、もしも逃げようとしたらハミルトン公爵家総出で捕まえて話をさせますから…
大丈夫…今日はもう寝ましょう…?ね?フリード様………」
狼族?獣人の皆さんはリアル獣な方たちと同じくらいふさふさで、フワフワないい毛ざわりをされているのかと思うほど、フリード様の髪質はいつもモフモフさせてくれる狼さんそっくりで…撫で心地抜群だ
ゆっくりとフリード様の頭を撫でながらおれは知らぬ間に寝落ちしていた事は言うまでもない
本当になんで最強目指して旅立った前辺境伯当主様はうちでコック長なんてしてるんだよ…何か深い事情があってアデルバイト辺境伯家に連絡もよこさないなんて事があったら嫌だなと思う…
おれも給仕の時とかコック長と話したことあるけど普通にいい人なんだよな…そんな人が連絡よこさない理由って何なんだろう?
気配で逃げるかもしれないと獣人の思考回路を考えて置こう、フリード様とラヴ様がちゃんと会えるように…万が一逃げ出したら追跡魔法をかけて追いかけられるように…しないと…
この国のガチムチは、人様に迷惑をかけないとすまないのだろうか?と皇帝達の件を思い出してしまった
狼さん無しで眠るのは久々だったけど、フリード様に抱き締められて寝るのも温かくて…なんでか狼さん以上に落ち着くような…心が癒やされるような…そんな気持ちになったのだ
やばい、これはいい睡眠…すごく好き…………
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