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冷遇妻編
夢じゃなかった
しおりを挟む急な寒気に目が覚めると辺りが真っ暗になっていた…
何故!?と、一瞬焦ったが現状を思い出しため息が出る…
そうだ、おれは…ここに嫁いできて…そして愛されない冷遇妻体験の最中だった…
頑張ってお風呂掃除した後の半身浴超気持ちよかったなって…そのままソファで寝落ちしてしまったのか…うそ、真っ暗じゃん?夜中じゃん?それは寒いわ…
まだ季節は梅雨くらい、こっちの世界で梅雨を何ていうか知らないが6月くらいだと思ってる
何も掛けずに寝てたら普通にまだ夜中は寒い時期だ…やらかしたなと思うが、ふと…足元に何かを感じ光魔法で周囲を明るくする
え、ふくらはぎから下にブランケットが掛けてある…
おれこんなブランケット持ってきてないし…誰かが掛けてくれた…?いや、でもふくらはぎから下って…意味ある?ないよね??わざわざふくらはぎから下に掛けるって手間じゃない?これも冷遇って事なのか?
そんなツッコミを心のなかで入れつつ、国が違えば気温も変わるのか獣人の皆さんは暑がりなのか知らないが…おれにはこの部屋はあまりにも寒くてかけてあったブランケットをありがたく纏う
…………………嘘だろ、あったかい
どうしよう…このブランケットゴワゴワしていない…普通にいい生地を使用した温かいやつだ
肌に吸い付くような素晴らしい質感…あったかい…なんかもうあったかい…
ふくらはぎから下にブランケット掛けることに冷遇具合を全振りしてしまって、ゴワゴワにするのを忘れたのか…?
とりあえず、寒いのでありがたく借りることにした
住む所が変われば照明も変わる
レラージェ国では自動で夜になるとライトを付ける魔法が存在し、全体的にある程度発展していた国だったが、ここは手動を好むのかもしれない
部屋にある照明に魔力を流し、明かりを付けるとまだ見覚えの薄い室内…
ここは生まれ祖国ではなく、嫁ぎ先だと再認識してしまった
起きたら実家の布団…とかじゃ無いんだよな…
夢ならよかったなんて現実に思う日が来るとは思わなかった…
おれ以外誰もいない、静まり返った室内は夜中特有の寒さと寂しさがある…こんな広い部屋に、別邸と思われる場所におれただ一人
それがこんなにも寂しい事だと、この国に嫁いで来なかったら感じることなど無かっただろう
「はぁ…実家に帰りたいな…まだここに来て一日ちょっとだけど…」
呟いた言葉に誰からも返答が無いことが寂しい…実家に帰ります攻撃を仕掛けたいが、仕掛ける相手は何処に居るのだろう…
初夜以降、目が覚めてから現在に至るまで書類上の旦那様を見ていない、ついでにうさ耳メイドもお風呂以降見ていない
………………あれ?おれの夕飯は?
急に寂しさから空腹に思考回路がチェンジしてしまった、寂しさよりもお腹すいた方が問題だ
え…まって、夜中じゃん?おれの夕飯無いの?届けてくれないの?うさ耳メイド!?
よくよく考えてみたら昼を運んできたのもベルを鳴らしたから…まじ…?ご飯は申請が必要…なのか?
朝も自主的に運んで来てくれない事に気付いてしまった、それはつまりおれから食事を求めないと運んですら来ない可能性を意味する
嘘だろおい…そんな事ある?あんな斜め上の面白い冷遇飯を準備する時間あったらそれなりに冷遇飯毎回運んでくれないの…?
この最高級肌触りブランケット掛けてくれたのたぶんうさ耳とかだよね?その若干の優しさは食事に反映してくれないの!?
頭の中が混乱する、お腹はぐぅとなってしまう…貴族だって人間だもの腹くらいなるのだよ
しかし現在夜中…こんな時間にご飯無いんですけど!?どうなってんのこの屋敷はなんて言ってみろ…?
とんでもない迷惑な妻が嫁いできたと国との関係にも日々が入る…今日は食事、諦めないといけないのかもしれない…
なんだか悲しくなってきて、お腹も空いてて早く朝を迎えたくてベッドに潜り込んだ
野営で獲物が取れずに水だけを飲んで耐え忍んだ日を思い出せ…思い出すんだ自分…一日一食がなんだよダイエットだと思えばいい…
寂しさと飢えが重なり、これが冷遇妻の気持ちなのかと事前知識で知っていた小説の中の妻たちを思い出す…
みんな、すげぇよ…お腹空いても寝れるのすごいわ
そんな事を思いつつ、空腹でなかなか眠れないと思っていたがいつの間にか寝ていた
人間意外と図太いのかもしれない
小鳥のさえずりで目を覚まし、即座にベルを鳴らすとうさ耳メイドが入室してくる
やはり、呼ばないと来ないのかもしれない…冷遇妻は事前に色々貰うにも申請が必要なのだろう
顔を洗いたい事と食事を頼むと、また舌打ち瓦聞こえた気がしたが気にしない
その後直ぐに届いた氷水と、食事用のカートが届く…氷水は継続なのかよ!
手間を掛けて冷遇してくるメイド魂はすごいな…と感心する…そして食事用のカートを開けておれは衝撃を受けた
なんと、フランスパン的なのが2本…そして丸鶏そのまま焼いたやつが一羽と謎の肉の板一枚、水分抜け果物6個…水差しコップ無しがあったのだ
どう見ても2食分…どう考えても昨日の夕食分を含めた量…
おれは心のなかで叫んでしまった
『朝に2食分持ってくるなら昨日の!起こして夕飯食べさせてくれよ!!!!お腹空いて泣きそうな成人男性がいたんだよ!!!!』
…………と
おれの冷遇妻生活はまだ始まったばかりだ
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