3 / 21
始まる冷遇生活
しおりを挟む目が覚めると昼だった
初夜に旦那様と初めて一言、言葉を交わしただけ…
それだけで、その後何もせずに寝たおれ
朝まで寝ていたと思ったら昼…もう昼?
誰も起こしに来ない事が獣人の国では当然なのか?それすらもわからない…
嫁入り準備も何も、国からの褒美と言うなの命令で急遽嫁いだおれには、ドラレイド帝国での嫁のしきたりも過ごし方も授業とかで習うお隣の国情報くらいしか無いのだ
説明くらいちゃんとしてくれないと困るんですけど旦那様…?
此処に居ない相手に心のなかで語りかけながら、背伸びをすると心地よい疲れ…寝すぎた時のあれである
この国では朝食って食べない風習だっけ?と思いつつ、ベッドサイドにあるベルを鳴らす
昨日、あらぬ所まで洗ってくれたメイドが御用があればと言ってたのを思い出したからだ
チリリンと澄んだ音が部屋に響くと暫くして一人のメイドが室内に入ってきた
昨日は羞恥で死にそうで気付かなかったが、うさ耳にメイド服を着てきた…そうだドラレイド帝国は獣人の国だ…!
リアルにうさ耳メイドとか本当にいるのかと驚く…え、うさ耳メイド、めちゃめちゃ可愛いな!?
「お呼びでしょうかお客様」
能天気にうさ耳メイド可愛いと真顔で思ってたおれの耳に聞こえたのは違和感だった
今、なんと言った?このメイド…お客様…?
一応ドラレイド帝国の教会でフリード様と書類上確実に夫婦になり、盛大に式を挙げて誓いのキスとか無心でこなしたおれがお客様…?
一応フリード様の妻となったおれの呼ばれ方はお客様なのか…?
そんな疑問に胸が何故かざわつきつつも、とりあえず顔を洗いたい、あと食事もしたい…出来たら図書室とかあったら情報収集したい…
奥様ってこの国では何するのかも一応、知りたい…
色々聞きたいこともあったがおれを見つめるメイドの目つきはとても冷たかった
「顔を洗いたくてね、あと食事は出来るかな?」
チッ……………
なんか聞こえた
上から目線だと不味い気がしてフレンドリーに話しかけたのになんか聞こえた気がする
え、このメイド舌打ちした?したよね?幻聴だったりする!?男嫁いで来てそんなに嫌だったりしてる!?
「…………かしこまりました、少々お待ち下さいお客様」
冷たい目で、冷たい声でうさ耳メイドはおれに再びお客様と、そう言って部屋を出ていった
とてつもない違和感…胸がざわつく異様な気配…
これって…まさか…
ざまぁ見学の次は嫁いで冷遇体験…?だったりするのか…?
「顔洗うのに氷水ってどう考えても嫌がらせだよな…」
洗面器に水を入れカートを押してきたメイドは、ベッドサイドにそれを置くと手伝うことも無く直に退室する…おれの予想は悲しくも当たってしまったのである、これはたぶん確実に嫌がらせだと思う
カラカラとわざわざ入れたであろう大粒の氷が水面を埋め尽くす洗面器…少し触れてみると夏場でも凍えるほど冷たい…今、梅雨の時期くらいだから更に冷たい…
旦那様の指示…では無いと思いたい
フリード様はまだあんまり直視した事は無いけど高身長で鮮血の人狼閣下とか呼ばれるほど、恐ろしい見た目では無かった…薄青を含んだ銀髪に青と緑のオッドアイ…どっちかって言うとイケメン優男みたいな方向の人だ
男の妻なんて嫌だとか駄々をこねておれに氷水を届けるよう指示を出す見た目もしていなければ、そんな事してるほど暇でも無いはず…
と、なるとメイドか…?
旦那様にあんな平凡な男が嫁いできて!何様のつもりよ!きっと無理矢理来たんだわ!さっさと追い返さないと!
みたいな方の冷遇かもしれない
おれじゃ無かったらきっと泣いてたぜ?………たぶん
ざまぁも冷遇も異世界転生しているおれは、前世で姉貴が読んでいた小説で履修済みだ、ついでに男同士での方法さえも履修済みとかいらない事を思い出してしまった
とりあえず、この屋敷…あのメイドはおれが嫌いなのだろう事は察した、別に傷付かないけどね?
嫌われ冷遇体験も人生経験としてありかもしれない、そこから図太く生き残るキャラもこれまで読んできたから…おれもそれになればいい!
前向きに行こうと、手のひらに火炎魔法をほんの少量まとい、氷水の洗面器を微温湯になるまで加熱する
あってよかった魔法!素晴らしい異世界転生!
レラージェ国の国防大臣な父を持つおれは野営もしっかりとこなせるのである、肉やお湯を調達するくらいなんてことない
平凡な威力で全属性の魔法が使えるのも異世界転生特典だとこれまで色々勉強してきた甲斐がある
いい感じの適温になった洗面器で顔を洗うと、続いての冷遇攻撃、見た目は豪華なのに触り心地最悪の超ゴワゴワのタオルがおれを待ち構えていて笑った
うさ耳メイド…やるな?二段構えとか笑うしかないし、どうやって洗濯したらこんなにゴワゴワになるんだよタオルって
余りにもゴワゴワ過ぎて逆にすごいタオルを持ちなおし、野営でもよくやったなーと思い出しつつ、水魔法と風魔法、柔軟剤代わりに光魔法を駆使していい感じに洗いたてふわふわタオルへゴワゴワを進化させ顔を拭く
うん、生まれ変わった素晴らしいふわふわタオルでお肌も喜んでいる
鏡が姿見しか無いのが面倒だが、すっきりした
着替えも超ゴワゴワをカートの下に準備されてて再度笑いつつ、こちらもシルクみたいな着心地へと進化させ、忘れてたスケスケネグリジェ姿からきちんとした私服にやっと戻る事ができ少し感動した
男にこんなスケスケ着せちゃ駄目だって…特におれみたいな可もなく不可もなくみたいなやつに…
ネグリジェで思い出したが…昨日、おれのあられもない場所準備したメイドさん達の心境を思うと胸が痛い…
愛するつもりないならもっと早く言ってくれない?フリード様!おれもメイドさん達も非常に嫌な体験になってるんだよ!
そんなツッコミを心のなかでしつつ、食事はまだかなとベッドに腰掛け待つことにした
1,559
お気に入りに追加
3,525
あなたにおすすめの小説
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>
王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。
番って10年目
アキアカネ
BL
αのヒデとΩのナギは同級生。
高校で番になってから10年、順調に愛を育んできた……はずなのに、結婚には踏み切れていなかった。
男のΩと結婚したくないのか
自分と番になったことを後悔しているのか
ナギの不安はどんどん大きくなっていく--
番外編(R18を含む)
次作「俺と番の10年の記録」
過去や本編の隙間の話などをまとめてます
田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
僕の大好きな旦那様は後悔する
小町
BL
バッドエンドです!
攻めのことが大好きな受けと政略結婚だから、と割り切り受けの愛を迷惑と感じる攻めのもだもだと、最終的に受けが死ぬことによって段々と攻めが後悔してくるお話です!拙作ですがよろしくお願いします!!
暗い話にするはずが、コメディぽくなってしまいました、、、。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる