悪役令息はモブに愛を捧ぐ

たなぱ

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モブを吸う

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ヒロイン♂と絶妙な会話を行う苦痛に打ち勝ち、教室へ戻るがエアがいない…
始まる直前になっても…その後も…午後の授業にエが参加しなかった

エアと出会う前の状況、一人で端の席に座り、周囲からの酷い公爵子息だと陰口を言われながら受けるどこかで見たことのある授業
以前はなんとも思わなかったのに…隣にエアが居ないただけでこんなにも孤独を感じる…

前と同じ筈なのに、灰色に見える既視感の世界で周囲の誰も味方で無かったあの頃には感じなかった耐え難い孤独感
おれは孤独を感じること出来たのかと、気楽に流す事が出来ない寂しさ…エアがいつも座る隣の席に無意識触れてしまう、エアが隣に居ない…おれは一人きり…………


エア、なんで授業に参加しないんだ?どうしておれの側に居てくれないんだ…………どうして……


寂しい…………





全く授業など頭にくる入らず、帰宅時間までただエアの座っていた席を時折見つめることしかできなかった
帰ったらエアがいるかもしれない…真っ直ぐに寮へ向かう、しかしおれの部屋には鍵がかかったままだった
もちろん中には誰もいない…ガランと静まり返った人気のない部屋におれは立ち尽くしている、元々一人部屋だった筈なのに大きく見え寂しさが増すばかり…エアはまだラドラ様の調査を頑張っている、それは分かる…わかるんだ…でも………




食欲もやる気も何もわかない事なんてあるんだな
何も手につかない…ベッドに横になり天井を見つめるがエアは帰ってこない…

眠っている間に帰ってきてくれるかもしれないと思っても、孤独感が増すばかりで一層寂しくなった…おれはいつから一人では既に寝れなくなっていたんだろう

エアと出会ってからまだ1ヶ月経過していない…幼い頃から共に過ごしていたと思うほどずっと側にいた気持ちにしかならないのに…
この世界のモブという存在だとエアは自分の事をいてもいなくても困らないそんな存在と何度も言っていたことを思い出した、居たかもわからなくなるような存在感の薄い物語の脇役…

そんなわけ無いだろ…
たった数時間会ってないだけで、おれは…お前が恋しくてどうしようもないんだ…
会いたい…エアに会いたい…触れたい…















……………………
……………
………

「リナルド様!ただいま戻りました、すいません午後の授業出れなくて…………リナルド様………………………?えっ、ちょっ……!!リナルド様!?!?!」


エアの声がする
エアの声だ
会いたかった…もう駄目だと思うくらい会いたかった…前に進みたいのに身体が重い…?
エア、なんでそんな驚いた顔してるんだ?


焦ったような驚いた顔をしたエアがバスタオルを持っておれの所へ走ってくる
おれは気づかなかった、服を着たままシャワーの水を浴び続けていたことを
バスタオルに包まれ、浴室を出て気付いた、そうだおれはエアがいない寂しさに涙が出て…頭を冷やそうとしたんだ
服を脱ぐことすら忘れ、ただ頭を冷やす目的のためだけになんの意味もなくあの場所にいたのか…


「なぁ……エア………おれ、お前がいないと駄目かもしれない…なんでこんなことしてるのか、わからないくらい寂しい…寂しかった…」


バスタオルでは吸いきれなかった水が床に滴る、服が全身がびしょ濡れのおれに気にすることなく抱き締めさせてくれるエアは優しい
ごめん、ごめんな…後で制服乾かすから…今はこのままでいたい…


「リナルド様………遅くなってすいませんでした…一度連絡でもすればよかったです…
僕はちゃんとここに帰ってきました、寂しくさせてごめんなさい………リナルド様、そんな顔もしちゃうんですね………?僕の事を大事に思ってくれてるのわかって嬉しいです…」


床に水たまりが出来ているのがわかる、エアの制服までもびしょ濡れになっている事も…
水を浴び続けて冷えた身体に体温を移してくれるようにおれを抱きしめ返してくれるエアが愛おしい…心が温かい…


おれの側にエアがいる………温かい…………









……………………
………………
………


「ごめんな…エア…ちょっとあまりにもエアの存在が大きすぎて…寂しすぎてな…訳わかんないくらいぼーっとしてて…」


「推しが、僕の事でしおらしく落ち込んでて可愛い………えっ、尊い…!
はっ、そうじゃない!大丈夫です…ちょっとびっくりしたけど…僕もごめんなさい、一言伝えておけばよかったのに…」


魔法で床も服も全て元へ戻す事もできたが、床だけにして、服を着替えエアにバスタオルで髪を拭いてもらう
何気ない事なのに心が満たされる気がする…可愛いのはエアの方だよって言いたかったが、初めてエアの前で泣いてしまったおれはそんなこと言えなかった

エアは何も悪くない、おれがとんでもなくお前に依存しているんだ…二度と手放せないくらいに
ごめんなエア、物凄く重いやおれ…

今はエアを補充したい…エアが側にいるのにエアが足りない…あと一歩でラドラ様の情報が取れるとエアは言う、つまりはまだ我慢の時だ


「なぁ…………エッチなこと絶対しないから……エアを補充させて……?飢えてるんだ………おれ…
………服脱いで一緒に今日は寝たい」


せめてエアの体温を直に感じながら寝たって罰は当たらないと思う…女神ガレリナについてラドラ様から情報さえ得られれば…これまでの生活に戻れるのだから、それまで耐える覚悟はある

エッチな事はしない、おれの言葉赤くなりながらも素直に服を脱いで、おれに抱きしめられに来てくれるのはほんと可愛すぎると思う

下着まで脱ぎ棄てて正面から抱き合うおれ達は端から見たら事後だ、でも本当に抱きしめる以外の事はしない…するとしてもエアの首筋に顔を埋めて吸ってみたくらいだ
少しだけ甘い花のような香りのするエア…香水かと思ったが体臭の可能性もある
すりすりと猫のように擦り寄りながら吸うと癒される事に気付いた、これは猫のお腹を吸いたくなる心理と似ているのかもしれない






純粋にエア不足のおれは本当に体温を直に感じ、添い寝をしながらエア吸いをするだけで、相当癒され夢の世界へと旅立った

まさかエアがなかなか寝れない状況になるなんて知らずに…












「ううぅ…うんんんっ………(推しと裸で………しかも!!!おちんちん触れっ合ってるとかドキドキし過ぎて…期待しちゃって寝れない!やばい………触ってほしい…よぉ)」


おれが寝ている間におれの手を借りて一人で慰めていたという事実を知るのはもっとずっと未来の事だ








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