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平凡と獣が平穏な新生活を望む話

平凡と丸め込んだ平穏

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 おそらく、ミーシア王女のせいだろう…おれでも自分の妹がなんな感じだったらメンタル駄目になると思う…
 シュゼル殿下の辛そうな顔を見ていられなくてセイルくんに預けたが、とてもいい判断だったと自分を褒めてあげたい
半日ほど2人で色々話し合ったりなんかしたのだろう…再び執務室に集まれると連絡が来たため、グレスと共に向かうと驚くほどスッキリした表情のシュゼル殿下がいてホッとした


「ご心配おかけしました…グレス辺境伯、ユウマ様…お気遣いありがとうございました」

「何か吹っ切れたようだな…安心した
 ユウマも言っていたがシュゼル殿下が気に病むことは無いんだ」


 グレスの言葉にシュゼル殿下が少し潤んだ表情をした気がする…何回でもおれだって言うよ…シュゼル殿下も他の使節団の人達も、おれ達と一緒に被害者なんだよ
 改めて始まった今回の件についてどうするか、吹っ切れたシュゼル殿下とグレスの話し合いと調整は悲痛な感じもなく平和に整ったと思う


結果はこうだ
 今回の事件…主犯はヘリック、共犯として獣人の男12名によるミーシア王女を傀儡として操った、浄化の力を持つ他国の要人誘拐、国家への反逆計画

 その事件の気配に気付き、グレスとシュゼル殿下の機転と即座の対応、さらに浄化を使える珍獣おれが囮を名乗り出た事で事実上、両国に被害はなく全員を捕らえ事態を沈静化した
 沈静化に伴い1人の犯人が精神を壊す事態になったがそれはまぁしょうがないだろう
 この流れを両国に伝えて、辺境伯と今回のシュゼル殿下率いる使節団の間には変えようもない戦友の誓いが結ばれ、今後活発な交流をどちらも約束することになった


 うん、完璧な流れだ
 今後も完璧な交流部分にセイルくんとシュゼル殿下の婚約話も盛り込めるとても完璧な流れ
 おれにちんこを咥えさせたあの獣人はルティーリア国に引き渡される前に精神を壊され、性的暴行の件は有耶無耶にしっかりとされる

 あれを目撃していた、ミーシア王女を拘束担当のもう一人の獣人には秘密があった…
 それを利用し事態を丸く収めることで減刑とちょっとした提案をして納得し情報は漏れない
 ヘリックもおれのちんこ咥えさせられる事件は実際は見ていないから問題は無かった

 ミーシア王女は王族として未熟、思った事を現実の内容問わず言いふらしてしまう恐ろしい性格だとシュゼル殿下はルティーリア国王に伝えると言う…それがいいと思います
 おれを見ると性奴隷性奴隷ばっかり言うミーシア王女…実際にその様子をみたら、あの廃教会で見たことすら現実だとは思って貰えないだろう


 ガレナ神聖国側には、グレスが今回の囮作戦のため運命の番と嘘を付くミーシア王女を泳がぜ、事態の早期解決を図っただけであり、婚約の話すらデコイであるとしっかりと既に伝えたとのこと
 後は、罪人を引き渡し、ミーシア王女を強制送還すればとても事態が丸く収まり解決する運びとなった

 万が一情報が錯誤しても、こちら側の偽の情報を鵜呑みにした犯人サイドの勝手な思い込みと言える
 おれの浄化の力もバレたようでバレておらず、むしろグレスの加護下にあると、運命の番で王女の涙に翻弄されていた周囲へ、おれの正しい存在を知らしめたことになったのだ


 誰も犠牲になっていない、不幸にならない計画はこうして実行された…戦争の火種となることもなく、両国の関係の歪となることも無い、責任を取り廃嫡や追放などの被害にも誰も合わない…
みんなが、想像以上に平和に穏やかに事態は収束した…犯人とミーシア王女は知らん、自業自得だ



再度行った晩餐会は大成功を収める、さらに3日後、ルティーリア国から使者と尋問官、軍の面々が到着しヘリック、ミーシア王女をはじめとする面々を自国に送り返した
同時にシュゼル殿下も使節団の皆さんも帰国となった


「色々ありましたが、私は今回この国を…辺境伯を見ることができ本当によかった…
必ず、必ず…セイルとの婚姻を実現させこの地に越してきたいと思います…グレス辺境伯、ユウマ様、そして皆様……我が国を代表し感謝申し上げます」

「シュゼル殿下、こちらこそ礼を言う
貴殿との出会いは今後の未来に必要だったと考えている、何か困った事があれば隣国の友人として力を貸そう」


グレスの言葉に二人は固い握手を交わし、今後の融和を約束していた
ちゃんとおれも別れの挨拶をする
「シュゼル殿下、セイルくんに嫁いでくるの楽しみにしてますから!」


笑顔でこう言ったら真っ赤になってセイルくんを睨んでいた…何故だろう…………??
互いのこれからを讃え合い、別れを告げた
シュゼル殿下達を乗せた馬車と檻を引く馬車が遠くに小さくなるまでグレスと見送りをしていると怒涛の日々で何ヶ月も悩んでいた気分だったけど、1週間ちょいくらいしか経過していなくて驚いた


辺境伯からは誰も被害者は出ていない
運命の番発言で一度ピリピリしたが、現在の街の人から、おれへの印象は前よりも更にいい
セイルくんからはシュゼル殿下と色々あったみたいで感謝された…2人の仲が深まって嬉しいよ


見送りが終わって、溜まっていた仕事をこなす、関係各所への連絡も終わり…対応もおこない……
色々あり日付が変わる頃までグレスと残務をしていた……社畜に時代を思い出すが、あの頃とは違いおれにはグレスがいる
執事さんを先に上がらせて2人で執務室に籠もるのも中々に楽しい…仕事の筈なんだけどな

今日、全て終わらせれば息抜きも兼ねて、明日から3日、休みにできるとグレスは言う
3日だ3日…連休をグレスと過ごせる………?


「ユウマと離宮にいた時のようにゆっくりと過ごしたくてな…今回の事もあり皆内心疲れている…休みは重要だ、だからこそ王宮からの伝言も全て通さない確実な休暇を3日もぎ取るんだ」

「そ、それって…朝から晩までグレスとベッドの上もあり?」

「………ああ、俺はそのつもりだったが…ユウマは乗り気では無いか?」



そんなわけ無い、グレスと寝ても覚めても一緒にゴロゴロできるなんて離宮生活以来なんだ…!
グレスと一緒に過ごしたいと素直に伝え、社畜魂で1週間先の仕事まで、おれはこなしたのだ







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