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平凡と獣が平穏な新生活を望む話
平民は顛末を知る
しおりを挟む穴があったらおれを埋めて欲しい………
あの、グレスに飢えすぎたおれによるご奉仕挑戦の最中、執事さんに呼ばれたおれたち
そうですよ…ええ、事件の真相とか今後の対応とかを話し合わないといけない状況でしたね…思いっきりそこまで頭が回らなかった…
グレスと恥ずかしさで互いにちょっとギクシャクしながら着替え、応接室に向かう、歩いてて気付いたが腕の傷はキレイに治っているしお腹も痛くない…痒くもない………治癒師さんが召喚されたのか?
結構えぐれてたのにこんなキレイに治るんだなと思いつつ、応接室に到着した
応接室では既にシュゼル殿下、セイルくん、執事さんが待っており、各々複雑そうな顔をしている
そんな中、おれは同然のようにグレスと並んで座るこの位置関係が幸せだ…そんなこと考えて現実が見えていなかった
ふと、シュゼル殿下に目が行く、少し顔色が悪い…すごく思い詰めたような苦しい表情…
「お休みの所に申し訳ない…グレス辺境伯、ユウマ様、この度は謝罪のしようもない程の失態を………?ユウマ様、大丈夫ですか…?」
「ううっ…ちょっとあの、見ないでっ!おれを見ないで!おれはもうこの世界にいないと思ってスルーしてくださいお願いしますっ!!!」
顔を隠しおれの存在を隠したい気持ちがこみ上げてくる…見ないで、おれを見ないでくれ!!
ここが真剣な話し合いの場だとわかっていてもだめでした!
おれは気づいてしまった、今後の対応とか話さないといけないよなーとか簡単な話では無いこと、普通考えたらわかるだろう?おれへ!!
社会人を経験し数年が経験していたおれ!!!
今回の件は隣国との戦争にまで発展する本来大事だ、実質おれは怪我をして辱めもちょっと受けてしまった今回一番の被害者だ
隣国の姫が主犯ではないとは言え起こした失態、その妹を管理できなかったこと、国同士にいらない混乱まで起こしてしまった…そんなシュゼル殿下の心情は計り知れない…………
セイルくんも執事さんもそれがわかっているから複雑そうな顔をしてるんだ
グレスは多分一番の被害者のおれの心が壊れないように甘やかしてくれてたと思う…
いや、あの…ほんとすいません
確かにすげー怖かったし、野郎のくせーちんこ咥えさせられてまじでしんどかったけど…グレスに甘えてたらどうでもよくなってしまってた…
お風呂でグレスの咥えて幸せな気持ちになってる間、ここで待ってたみんなの心境を考えるとさ……!!!!
空気読めなくてすいません!!!!!
誰がおれを埋めてくれ!!!!!!
グレス欠乏症により失態を犯したおれを責めることもなく、落ち着いて顔が出せるようになるまで待っていてくれるみんなはやさしい…
ほんと大変取り乱しました!すいません!!
深呼吸を繰り返し
辺りが厳かな雰囲気になった所で、話し合いが再開された
「改めて、この度の我が国の王女ミーシアによる辺境伯当主、並びにユウマ様への名誉棄損、我が国の者によるユウマ様拉致監禁・性的暴行、撤回出来ない我が国の失対です…本当に申し訳ない…
かの者達は現在我が国の軍を呼んでいます、到着次第国に連れて帰り真実を吐かせ相応の報いを受けさせます、もちろんミーシアも同様に…
……………このような事をお願いできる立場では無いことを理解しています…しかし、可能であれば両国の火種とならないようご協力願いたい…」
苦しい表情のシュゼル殿下を見ているのが辛い…セイルも同じくらい辛そうだ…
おれが気絶し辺境伯邸へ戻ってきた時、グレスの策でミーシア王女は利用され、運命の番は嘘、おれの拉致を本当の目的とした計画的な犯行だと、王女の涙に騙されていた人々の目を覚まさせてくれていた
おれが運び込まれた時、騙されていたおれに酷いことを言った人は、地面に土下座していたらしい…商業ギルド長達は地面にめり込み謝り、謝罪の言葉を永遠叫んでいたそうだ…怖い
国の使節団に紛れ込んだ賊の犯行、王族が2人もいてその事実に気づけず、更には治りはした者の怪我を負ったのは浄化の僅かに使える、辺境伯をまもる者の貴重な存在
更には運命の番として王家にミーシア王女との縁談まで持ち込んでしまっている
内密に隠し切るには余りにも事が大きくなりすぎてしまった事件…元第一王子であるグレスが害された、それはこちらに優勢な国家間の火種になってしまう
この辺境伯にセイルくんの元へ嫁ぎたいシュゼル殿下にとっても大きな痛手…やばい妹に振り回されて可哀想なシュゼル殿下が更に可哀そうにみえる…
王女とあの男たちは許せない、けど、火種にならないよう協力ならいくらでもおれはしたい
「俺はシュゼル殿下はこの件に関して俺たちと同様に被害者だと思っている、荒事にはしたくない…しかしユウマが暴力と性的暴行を受けたのは紛れもない事実だ…この問題をどうしたいか、それはユウマに決定権があると考えている
…………ユウマはどうしたいか、素直な気持ちを教えて欲しい、報復を望むなら俺はそれを受け入れよう」
みんなでこちらを見ないで欲しい…そんなしんどい顔で見ないでくれ…
確かに色々あったけど…グレスと一緒にいると対したことなかったなってすげーポジションに考えてるだ…空気読めなくてごめんよ…
グレスはおれに決定権をくれる…それは優しさだ…多少のことはおれの願いに応じて捻じ曲げてでも叶えてくれる、そんな優しさ…
不安そうな顔しないでくれ、大丈夫…おれ平凡で平穏な生活を望む平凡な男なんだぜ?
「おれは…………おれは、この問題で罪を犯した者以外が苦しむのはおかしいと思う、王族が絡む国際問題なんて普通の一般人のおれに、どうべきかはわからない…
でも、シュゼル殿下は他の使節団の皆さんもただこの辺境伯を知りたいとわざわざ来てくれたお客様のはずだ、それがこんな問題で悲しい気持ちのまま帰国される方が嫌だ…
グレスがおれに決定権をくれるなら…おれは真実を捻じ曲げたい…
例えば、ミーシア王女を唆し、悪事を企てる者達に気付いたグレスとシュゼル殿下が最悪の事態を回避するために秘密裏に動き、結果誰も傷付く事なく事態が収束した、そんな感じに………
どちらにも被害が増えない用に、両国に伝えて欲しい」
おれの言葉に周囲が息を呑む音が聞こえる
思っていることは分かる、おれだけが損をすれば事態は結構丸く収まるんだ
拉致だけならいい、犯人をまとめて捕まえるために囮に協力したで言い訳がつく、それ以外は広めてはダメなんだ…
「ユウマくん、それじゃ…それだと…………ユウマくんがされた事も、うやむやにされてしまうよ…?」
「セイルくん、いいんだよそれで
おれは性的暴行なんてされてない、ただ浄化の力目的で拉致された…浄化の力は女神からの授かりもの…そんなことはさせないとグレスとシュゼル殿下が早期に動いて事なきを得た…それが一番いいと思う
おれが怪我した事、性的暴行されたことを明るみにしたらシュゼル殿下側が不利になる、グレスとの協力があったとしても、なぜもっと早く報告しなかったとかになるよ…たぶん
だからこの流れで真実を捻じ曲げて欲しい
じつはな…………おれはグレスが側に居るだけで嫌なことなんてなかったくらい、あんまり堪えてないんだ…」
そう笑ってグレスを見つめる
グレスが上書きしてくれた効果でトラウマにすらなってないのは本当だ
おれの気持ちに気付いたグレスが向きを変えて抱きしめてくれる
………………うん、やっぱすごく落ち着く、本当に好きなんだって何度も再確認できる…幸せだ
おれの意思を汲んでくれたグレスやシュゼル殿下、みんなは、この他に誰も傷付かない真相の捻じ曲げに協力してくれた
まだ何故、どういう経緯で狙うに至ったか、仲間と思われる多くの獣人の男達に対する調査も出来ていない
余計な事を言わないように対応すべきと尋問は拉致をされた者がいる辺境伯の人員である程度行い、ルティーリア国の者と情報を共有することになった
浄化の力を少し持つものを拉致する計画の解明はまだ先だ
そして、運命の番問題は王女の勘違い、ミーシア王女が王族としての心をしっかりと持っていればこんな事態にはならなかったとシュゼル殿下は父に言うと話していた
ガレナ神聖国サイドにはグレスがうまいこと伝えてくれる筈だ、だって未だにグレスを頼ろうとしてくる国王陛下がいる王宮だものな
これまでの話し合いの結果を確認し、両国に向けて情報を共有する
既に賊は全員捕まえており、グレス辺境伯とシュゼル殿下の戦友としての距離が縮まったためこのまま使節団としての交流を続けることも納得させた
今回の事で逆に両国の繋がりが深くなりそうだと当事者が言えば、大きく反論もできないそんな感じだ
辺境伯領土のみんなにも同じように伝えた
おれが気絶してたことはバレていたが、グレスの上着に包まれて怪我まではバレてなかったことが幸いもしている
尋問は明日から行うとグレスがいう
………………えっ?グレスがやんの?尋問?
そう一瞬思ったけど軍服で尋問しているグレスを想像したらとんでもなくドS男前になってしまって何も言えなくなってしまった
ひとまず、事態は収束の方向で固まった
各位運命の番で騒いでいたミーシア王女疲れで疲弊もしている、今日は解散し明日の夜に再度晩餐会を仕切り直すことになったのだ
…………………
…………
…
部屋に戻ると鍵を閉め、上着を脱ぐ間も無く、互いに貪り合うように舌を絡め、キスをする
息を忘れるほど激しく互いを求め合ってしまう…
早く解散したい気持ちがあったのはグレスもおれも一緒だった…ずっと飢えていたんだから…
詳しい事は明日から考えよう
おれは今、グレスだけ見ていたい…グレスが欲しい…
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