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17話 商人の国
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「リロイラは随分と楽に入れるんですね」
「たしかに、普通は国に入る、しかも別の国の人間が入るならもっと徹底的に調べるはずですが……」
カンナが不思議そうに質問を投げて、クレアが同調する。
「さすがは商国というわけね。貿易のために検問で時間をかけるとその分、品物の質は悪くなるし、商売の成功率が低くなるもの」
「その通りですじゃ、大昔はもっと検問に力を入れていたんじゃが、貴族と商売人の力が逆転してから制度が変えられたというわけじゃな」
貴族と商売人の力の逆転ね……
普通ならありえない。
でも可能性がないわけでなく、要因は色々と浮かぶ。
なにせ、今の王国はその縁に立っていると言っても過言ではない。
先日いた辺境の地はもはやそういう状態だった。
貴族としてのロージア・アルスター辺境伯ではなく、一人の商人として領地を経営していた。
貴族はよく自分たちがいるおかげで国が回っていると言ってるが、商国は全くそんなことはないし、前世が日本人の私も貴族なんていなくても国が回ると知っている。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「えぇ、少し考えごとをしていただけよ」
「約束もなしで商会長たちと会えるかどうかということですか?」
「まぁ、それもあるわね」
今回は急を要する事態だったためアポも取らずに来ている。
リロイラの政治的舵取りをする場は商人会議といわれ、特に発言権を持つ商会の会長は議長と呼ばれる。
商会の規模や国への貢献が加味されて議長は選出される。
そして、一人ではなく複数人選ばれ、決まった席数はない。
現在、リロイラの議長は5人。
ガーデイフさんにその五つの商会を案内してもらっているが、すでに4つの商会で商会長にすら会えず、受付で断られている。
「おかしいですよ!! お嬢様がわざわざ来てるのに拒否するなんて」
「カンナ、これは仕方ないわ。こちらに非があるのですから、急に来てそちらのトップに会わせて欲しいだなんて虫がよすぎるもの」
「そうですね、アイヴィロ商会でもこの対応になるかと思います」
アイヴィロ商会はリロイラでもそれなりの知名度がある。
私はそこの商会長ということと、泊まっている宿も受付の人には伝えているので、何らかしらの返事はあると思っている。
まぁ、狂人が嘘を騙っていると思われればそれまでだが……
「ここは衣類を取り扱っているレェーブ商会ですじゃ」
最後の商会に足を踏み入れると、壁に綺麗なドレスやタキシードのような服が飾られている。
入った瞬間に別世界に引き込まれるような感覚だ。
「すみません。私はアイヴィロ商会の会長をしている、オリヴィア・アセルセアと申します。できれば、レェーブ商会会長に挨拶をと思ったんですが……」
「少しお待ちくださいませ」
受付の女性は顔色ひとつ変えずに奥の方へと行ってしまった。
ここから断られるのが今までの流れだったが、今回は勝手が違ったようだ。
私たちも奥へと通された。
「こちらでお待ちくださいませ、すぐにリサ商会長が来ます」
なんと話ができるようだ。
応接間に座って、出された紅茶をいただく。
「たしかに、普通は国に入る、しかも別の国の人間が入るならもっと徹底的に調べるはずですが……」
カンナが不思議そうに質問を投げて、クレアが同調する。
「さすがは商国というわけね。貿易のために検問で時間をかけるとその分、品物の質は悪くなるし、商売の成功率が低くなるもの」
「その通りですじゃ、大昔はもっと検問に力を入れていたんじゃが、貴族と商売人の力が逆転してから制度が変えられたというわけじゃな」
貴族と商売人の力の逆転ね……
普通ならありえない。
でも可能性がないわけでなく、要因は色々と浮かぶ。
なにせ、今の王国はその縁に立っていると言っても過言ではない。
先日いた辺境の地はもはやそういう状態だった。
貴族としてのロージア・アルスター辺境伯ではなく、一人の商人として領地を経営していた。
貴族はよく自分たちがいるおかげで国が回っていると言ってるが、商国は全くそんなことはないし、前世が日本人の私も貴族なんていなくても国が回ると知っている。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「えぇ、少し考えごとをしていただけよ」
「約束もなしで商会長たちと会えるかどうかということですか?」
「まぁ、それもあるわね」
今回は急を要する事態だったためアポも取らずに来ている。
リロイラの政治的舵取りをする場は商人会議といわれ、特に発言権を持つ商会の会長は議長と呼ばれる。
商会の規模や国への貢献が加味されて議長は選出される。
そして、一人ではなく複数人選ばれ、決まった席数はない。
現在、リロイラの議長は5人。
ガーデイフさんにその五つの商会を案内してもらっているが、すでに4つの商会で商会長にすら会えず、受付で断られている。
「おかしいですよ!! お嬢様がわざわざ来てるのに拒否するなんて」
「カンナ、これは仕方ないわ。こちらに非があるのですから、急に来てそちらのトップに会わせて欲しいだなんて虫がよすぎるもの」
「そうですね、アイヴィロ商会でもこの対応になるかと思います」
アイヴィロ商会はリロイラでもそれなりの知名度がある。
私はそこの商会長ということと、泊まっている宿も受付の人には伝えているので、何らかしらの返事はあると思っている。
まぁ、狂人が嘘を騙っていると思われればそれまでだが……
「ここは衣類を取り扱っているレェーブ商会ですじゃ」
最後の商会に足を踏み入れると、壁に綺麗なドレスやタキシードのような服が飾られている。
入った瞬間に別世界に引き込まれるような感覚だ。
「すみません。私はアイヴィロ商会の会長をしている、オリヴィア・アセルセアと申します。できれば、レェーブ商会会長に挨拶をと思ったんですが……」
「少しお待ちくださいませ」
受付の女性は顔色ひとつ変えずに奥の方へと行ってしまった。
ここから断られるのが今までの流れだったが、今回は勝手が違ったようだ。
私たちも奥へと通された。
「こちらでお待ちくださいませ、すぐにリサ商会長が来ます」
なんと話ができるようだ。
応接間に座って、出された紅茶をいただく。
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