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3話 婚約の裏

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「これは本当なの?」
「その通りです。アラン様は元々、金遣いが荒く、グリフィス家現当主であり、親でもあるクライス様には半ば見捨てられて、多額の借金をしておりました」
「そこで目をつけたのが、オーブリー領というわけね」
「はい、オーブリー領はアイヴィロ商会の本拠地でもあり、今後栄えることは間違いないでしょうから」
 私からむしり取るだけむしり取って、婚約破棄をするすつもりだったらしい。
 婚約仲介人もグルらしく、婚約破棄が正当なものだったと証言することになっているとのことだ。

 許せない……

 怒りが込み上げてくる。
 騙した奴らにもムカつくけど、脳内お花畑になっていた自分自身にも苛立ちを感じる。

「本当にありがとう。助かったわ」
「申し訳ありませんでした」
 ヴィクターは深々と頭を下げる。
 最初から今回の婚約が怪しいとは思いつつも私に話さなかったことを悔やんでいるらしい。

「気にしなくていいわ、それとこれからは仲間なんだからそこまで堅苦しく話すのはよしてよ」
「騙していた私を許してくれるのですか?」
 騙していたも何もあの時点ではヴィクターはアランのことを怪しいと思っていただけだ。
 ここにある物的証拠だってあの件以降に集められたものだ。

「もちろんよ、あなただって被害者の一人じゃないの」
「ありがとうございます」
 そして、アランの計画ではヴィクターも最初から捨てる予定だったのだろう。
 どうもヴィクターは真面目すぎるところがあり、アランの行動を怪しいと思っているところを察知されて先に捨てられたようだ。
 先に捨てることによりヴィクターの信頼は落ちる。
 信頼のないヴィクターが何を騒ぎ立てようとも誰も信用しない。

「それよりも気になるのはどうして急に婚約破棄になったのかね」
 計画では私からお金をむしり取るはずだが、今のところは一銭たりともアランにお金は渡していない。

「それもそうですね。私の調べた限りではそこまでは……」
「これだけ集められただけでも十分凄いわ。これからは私の方でも調査をしてみようと思うし、ヴィクターにも手伝ってもらうから、よろしくね」
「誠心誠意、オリヴィア様のために働かさせていただきます」

「もう……言ったでしょ、もう少し楽に喋ってよ」
「しかし、私は……」
「まぁ、いいわ少しずつ慣れていけばいいから」
「はい、よろしくお願いします」

 さて、アランがどうして私をこんなにも早く捨てたのか。
 もしも、婚約破棄の理由を突きつけて慰謝料などを取ろうとしているのなら、ここにある証拠だけで何とかなりそうだけど……
 どちらにせよ、深く探る必要がありそうね。

 ヴィクターの帰った後、遅くまでアランの悪事について書かれた書類を整理していると、ドアがノックされる。
 夜更けの来訪者。

「入っていいわ」
 ドアが開いて入ってきたのは黒短髪の少年と少女だ。
「お久しぶりですご主人様」
「もしいいのであれば、すぐにでも首を落としてきますが」
 瓜二つの顔の2人が物騒なことを言っている。

「だーめ、あなたたちに頼みたいのはアランについての情報収集よ」
「それが命令なら、ぼくたちはオリヴィア様の望む結果を捧げます」
「ぼくも同じく、ご主人様に結果を捧げます」
「それではお願いね」
 2人は闇に溶けるように部屋から去った。
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