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2話 超レアスキル
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室内演習場に集められた生徒たちの心は打ち砕かれていた。
寒い親父ギャグを混ぜた校長の長い長い挨拶は学校創設の歴史から始まり、昨今のスキルの重要性を経て、勉学と青春に打ち込んだ昔話を語るとようやく終わったようだ。
クライは睡眠不足が重なり頭を上下に揺らして、失神寸前で耐えていた。
校長の挨拶が終わったと思えば別の教員から追い打ちをかけるようにスケジュールの説明があったがこちらは淡々と進んでいく。
教員も校長の長話には嫌気がさしていたらしい。
そして、少しの休憩を挟めばこの日一番のイベントが始まる。いや、人生で一番のイベントが始まる。
教員に連れられて神殿のような建物に入ると、祭壇の上に真っ白で巨大な球体が浮いていた。
球体は『真理の球体』 と呼ばれ国内に数個しかない国宝でもある。
横に立つのは女性の聖職者とその後ろに控える二人の聖職者。
「これより、皆様のお名前を1人づつ呼んでいきますので、呼ばれたものは前に出てください。 この真理の球体に触れれば神のご加護により、スキルが授けられます」
女性聖職者によって名前が呼ばれていく。
「クライ、震えてるけど大丈夫」
「これは感激して震えてんの!! あれが真理の球体だぞ、神々しすぎるだろ。それにエレナだって青ざめて緊張してるじゃん」
「まっ、まぁね、ちょっとだけよ」
「何のスキルになるかな? レアスキルになった日には英雄の仲間入りだよな、すべてを平伏させる『重力操作』やどこにでも自由自在に移動できる『空間転移』に『召喚』で強力なドラゴンや百匹以上のモンスターを使役するってのもいいよな」
クライは手に持っていたスキル大全を見ながら熱く語る。
「レアスキルなんてそうそうでないからレアなのよ」
「確かに、ありきたりなスキルでも英雄になってる人はいるもんな。すべてを然やし尽くす『火炎操作』、地形を変動させる『大地操作』、竜巻を起こす『烈風操作』なんかいいな」
クライのスキルマニアに火がついて止まらなくなっている一方で続々と名前が呼ばれスキルが授けられていく。
そしてスキルが授けられたものは横へはけて待機しているが、喜びを表すもの、顔を下に向けて悲しむものと様々な様相を見せている。
有能なスキルを得ることができれば将来は安泰したといっても過言ではないため、一喜一憂するのは当然だろう。
「……エレナ・ブライゼ、 前へ」
「じゃあ行ってくるわね」
名前を呼ばれたエレナは少しの緊張を胸に真理の球体の前に立つ。
球体に両手をつけ、目を閉じて心を落ち着かせると、一つの言葉が頭にスッと入ってきた。
それは『重力操作』だった。
それと同時に球体にもその単語が表れ、周りの人間たちは
驚嘆の声を漏らす。
「まじかよ、超レアスキルじゃん」
「一生安泰だろうな、今から仲良くなっといた方がいいんじゃないか」
エレナの番が終わり、次のものが名前を呼ばれスキル判定に入るが、そんなもの誰も気にせず、エレナの周りに人が溢れる。
少しでも目をかけてもらおうという人間でごった返していた。
さすがに見かねた教員がエレナを少し距離の置いたところへ移動させる。
その頃、クライは後ろのほうにいたのでエレナのスキルを人づてに聞きつけ心の中で驚嘆の声とともに賛辞を送る。
スキル判定は続き、最後に名前を呼ばれたのがクライだった。
「クライ・バートナー、前へ」
「よしよしよし、やっと俺の番がやってきたぞ」
真理の球体に手をつけるが心の中では様々なスキルを想像してしまう。邪念だらけでなかなかスキルが入ってこない。
「クライ君、心を無にしなさい」
「そんなこと言われても………」
クライはなんとか想像しているスキルを消して頭の中を無にしていく。そしてスキルが入ってきた感覚を感じる。
「えっ!?」
クライは困惑していた。
愛読書のスキル大全は穴が空くほど読んできた。
スキル大全には現存する全てのスキルが載っていて、その全てを暗記しているはずだ。
しかし今、頭に入ってきたスキルは初めて目にするものだった。
同様に聖職者や教師も困惑する。
生徒たちはスキルを全て知っていて暗記しているものなど少なく、エレナの時のようなパニック状態にはなっていない。
それでも聖職者や教師の反応を見て普通ではないことは何となく察知していた。
「もしかして新スキルじゃないか?」
生徒の一人がそう咳くと一斉に広まり少し遅れて部屋の中はパニック状態に陥る。
どういうことか分からず頭がパンクして呆然と立ち尽くすクライは別室へ教師に連れられていった。
クライの頭の中では『触手操作』という得体のしれないスキル名がくるくると回っていた。
寒い親父ギャグを混ぜた校長の長い長い挨拶は学校創設の歴史から始まり、昨今のスキルの重要性を経て、勉学と青春に打ち込んだ昔話を語るとようやく終わったようだ。
クライは睡眠不足が重なり頭を上下に揺らして、失神寸前で耐えていた。
校長の挨拶が終わったと思えば別の教員から追い打ちをかけるようにスケジュールの説明があったがこちらは淡々と進んでいく。
教員も校長の長話には嫌気がさしていたらしい。
そして、少しの休憩を挟めばこの日一番のイベントが始まる。いや、人生で一番のイベントが始まる。
教員に連れられて神殿のような建物に入ると、祭壇の上に真っ白で巨大な球体が浮いていた。
球体は『真理の球体』 と呼ばれ国内に数個しかない国宝でもある。
横に立つのは女性の聖職者とその後ろに控える二人の聖職者。
「これより、皆様のお名前を1人づつ呼んでいきますので、呼ばれたものは前に出てください。 この真理の球体に触れれば神のご加護により、スキルが授けられます」
女性聖職者によって名前が呼ばれていく。
「クライ、震えてるけど大丈夫」
「これは感激して震えてんの!! あれが真理の球体だぞ、神々しすぎるだろ。それにエレナだって青ざめて緊張してるじゃん」
「まっ、まぁね、ちょっとだけよ」
「何のスキルになるかな? レアスキルになった日には英雄の仲間入りだよな、すべてを平伏させる『重力操作』やどこにでも自由自在に移動できる『空間転移』に『召喚』で強力なドラゴンや百匹以上のモンスターを使役するってのもいいよな」
クライは手に持っていたスキル大全を見ながら熱く語る。
「レアスキルなんてそうそうでないからレアなのよ」
「確かに、ありきたりなスキルでも英雄になってる人はいるもんな。すべてを然やし尽くす『火炎操作』、地形を変動させる『大地操作』、竜巻を起こす『烈風操作』なんかいいな」
クライのスキルマニアに火がついて止まらなくなっている一方で続々と名前が呼ばれスキルが授けられていく。
そしてスキルが授けられたものは横へはけて待機しているが、喜びを表すもの、顔を下に向けて悲しむものと様々な様相を見せている。
有能なスキルを得ることができれば将来は安泰したといっても過言ではないため、一喜一憂するのは当然だろう。
「……エレナ・ブライゼ、 前へ」
「じゃあ行ってくるわね」
名前を呼ばれたエレナは少しの緊張を胸に真理の球体の前に立つ。
球体に両手をつけ、目を閉じて心を落ち着かせると、一つの言葉が頭にスッと入ってきた。
それは『重力操作』だった。
それと同時に球体にもその単語が表れ、周りの人間たちは
驚嘆の声を漏らす。
「まじかよ、超レアスキルじゃん」
「一生安泰だろうな、今から仲良くなっといた方がいいんじゃないか」
エレナの番が終わり、次のものが名前を呼ばれスキル判定に入るが、そんなもの誰も気にせず、エレナの周りに人が溢れる。
少しでも目をかけてもらおうという人間でごった返していた。
さすがに見かねた教員がエレナを少し距離の置いたところへ移動させる。
その頃、クライは後ろのほうにいたのでエレナのスキルを人づてに聞きつけ心の中で驚嘆の声とともに賛辞を送る。
スキル判定は続き、最後に名前を呼ばれたのがクライだった。
「クライ・バートナー、前へ」
「よしよしよし、やっと俺の番がやってきたぞ」
真理の球体に手をつけるが心の中では様々なスキルを想像してしまう。邪念だらけでなかなかスキルが入ってこない。
「クライ君、心を無にしなさい」
「そんなこと言われても………」
クライはなんとか想像しているスキルを消して頭の中を無にしていく。そしてスキルが入ってきた感覚を感じる。
「えっ!?」
クライは困惑していた。
愛読書のスキル大全は穴が空くほど読んできた。
スキル大全には現存する全てのスキルが載っていて、その全てを暗記しているはずだ。
しかし今、頭に入ってきたスキルは初めて目にするものだった。
同様に聖職者や教師も困惑する。
生徒たちはスキルを全て知っていて暗記しているものなど少なく、エレナの時のようなパニック状態にはなっていない。
それでも聖職者や教師の反応を見て普通ではないことは何となく察知していた。
「もしかして新スキルじゃないか?」
生徒の一人がそう咳くと一斉に広まり少し遅れて部屋の中はパニック状態に陥る。
どういうことか分からず頭がパンクして呆然と立ち尽くすクライは別室へ教師に連れられていった。
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