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八章 白の断罪者編
87話 教え
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結局戦うハメになってしまったわけだけど、どうにもごぶはやる気がなさそうだ。
3人が俺を弱い思うのは仕方ない。
元々、隠者系統というのは気配が薄い。
強者になれば逆にその薄さで不自然さを感じたりするので自然とそこの景色に溶け込むのが隠者の最終奥義だったりする。
セバスさんも攻撃するときすら不自然さを感じさせては行けないと言っていた。
殺気ははもちろんのこと、妙な緊張や雰囲気というものは必ず相手に伝わるとのこと。
息をするように当たり前に、歩くという動作にわざわざ意識をしないように自然とナイフを振る。
そうすれば相手は斬られたことすら気づかずに逝く。
俺の場合は職業的に少し道がズレているが概ねの目標はセバスさんの教えであるそこだ。
ただ、3人はそのレベルにまで達していない。
圧力を感じない、弱そうな雰囲気の相手は安直に弱いと決めつけている。
これでは今後、帝国に行けたとしても将来的に困ったことになるはずだ。
その考えは隠者系統と戦う際に大きなディスアドバンテージとなる。
俺が本気で戦った方が彼らのためになるはずだ。
それならば本気でやろう。
「3人同時にかかってきていいよ」
俺は睨眼髑髏の仮面を被り、ナイフを構える。
本気といっても殺すわけにはいかないので訓練用のゴムナイフを選択する。
このゴムナイフのいいところはダメージ量は極端に低いが痛みはあるというところで、痛みがある方が訓練にも精が出るだろうと導入してみた。
復活できる球が手に入ればお役御免となるが手に入る算段はついていないので、当面はお世話になる予定。
何度かメンバーとも訓練をして既に効果は検証済みなのだ。
「はっ、それはさすがに……」
ごぶは俺がゴムナイフを構えて戦闘態勢に入っているのにまだ油断して構えてすらいない。
「そっちがその気でもこっちは攻撃するから油断するなよ」
俺は3人に向けて忠告する。
「そうは言っても……」
「なんていえばいいんだろう」
トロンとラムは顔を見合わせて困惑している。
ラムは顔という概念がないのだが、そんな様子だ。
ごぶで十分だと思っていることだろう。
それに自分たちは攻撃の範囲内にはいなくて安全圏にいると思っているのも原因か。
ごぶも俺と数メートル離れているため、俺が動き出してからでも間に合うと思っている。
俺の速度ならとっくにそこは射程距離なのだ。
後ろにいるトロンとラムも射程圏。
つまり後衛が危険な位置にいて何を油断しているのか。
「えっ!?」
目の前から消えた俺の姿にごぶは驚きの声を上げる。
俺はラムの背後に回りナイフを突き立てた。
ゼリーに刺したような感覚で手応えというものは特にない。
「キャアッ」
痛みでラムは悲鳴を上げるが反撃はこない。
何が起きているのか分かっていないトロンの胸を蹴り飛ばした。
「カハっ」
骨の体は思いのほか軽く、予想よりも吹き飛んだ。
魔法使い系統で防御力が弱いというのも大きいか。
「ごぶ、実戦なら二人は死んでたよ」
実際は一撃で倒すのはさすがに厳しいとは思うが、発破をかけるためにもそう言っておく。
やっとやる気になったのか拳を振り回してくる。
「速すぎる……」
しかし、どれも俺に届かせるには遅すぎる。
油断はしないよ。
そっちと違ってこっちはまともに攻撃を受けると瀕死になるんだからね。
下手すれば死ぬ。
「乱刀・斬」
無数の斬撃がごぶの体を四方八方から襲う。
ガードを固めて急所は守っているが、ゴムナイフには殺傷能力はないので痛みだけがごぶを襲っている。
ダメージはなくてもフラフラと後退して膝をつくごぶを見下げてゴムナイフの効果を教えてあげる。
そういえば伝えていなかった。
「これはゴムナイフだから死ぬことはないよ。痛みは多少あるかもしれないけどね」
それを聞いたごぶは苦悶の表情を浮かべた。
何故だろうか?
死なないと分かれば安堵しても良さそうなのに。
「深き闇より穿て『深淵槍』」
トロンが魔法を放ってくる。
避けるのは簡単だがここは勉強の意味を込めて迎撃を選択しよう。
「ディー、よろしく」
「キュイキュイ」
トロンの放った深淵槍とディーの闇槍がぶつかり合って互いに消滅する。
「そっ、そんな馬鹿な!? 僕の深淵槍が下位魔法の闇槍と互角だなんて」
互いに黒い槍を放つ魔法だけど、エフェクトが微妙に違うので使い手であればすぐに分かるだろう。
確かに魔法のランクは向こうが上だけど、ディーとトロンの実力の差かな。
「アシッドテンタクル」
ラムの触手攻撃。
3人は何というか戦い方が単調だな。
オウカ戦と同じ技しか使ってこない。
そもそもオウカと俺への対応が同じはずがない。
そこは単純に経験が足りていない。
特に強者との戦闘に慣れていない。
相手が格上なら工夫に工夫を重ねないとまず勝ち目はない。
相手が弱いと自分の得意なことを押しつけても何とかなる。
これは自身で感じている最近の悩み。
「キュイキュイ」
ディーがトロンの時と同じように迎撃してくれるようだ。
黒炎の息で触手を燃やし尽くす。
3人は戦意を喪失してその場にへたり込んでいた。
3人が俺を弱い思うのは仕方ない。
元々、隠者系統というのは気配が薄い。
強者になれば逆にその薄さで不自然さを感じたりするので自然とそこの景色に溶け込むのが隠者の最終奥義だったりする。
セバスさんも攻撃するときすら不自然さを感じさせては行けないと言っていた。
殺気ははもちろんのこと、妙な緊張や雰囲気というものは必ず相手に伝わるとのこと。
息をするように当たり前に、歩くという動作にわざわざ意識をしないように自然とナイフを振る。
そうすれば相手は斬られたことすら気づかずに逝く。
俺の場合は職業的に少し道がズレているが概ねの目標はセバスさんの教えであるそこだ。
ただ、3人はそのレベルにまで達していない。
圧力を感じない、弱そうな雰囲気の相手は安直に弱いと決めつけている。
これでは今後、帝国に行けたとしても将来的に困ったことになるはずだ。
その考えは隠者系統と戦う際に大きなディスアドバンテージとなる。
俺が本気で戦った方が彼らのためになるはずだ。
それならば本気でやろう。
「3人同時にかかってきていいよ」
俺は睨眼髑髏の仮面を被り、ナイフを構える。
本気といっても殺すわけにはいかないので訓練用のゴムナイフを選択する。
このゴムナイフのいいところはダメージ量は極端に低いが痛みはあるというところで、痛みがある方が訓練にも精が出るだろうと導入してみた。
復活できる球が手に入ればお役御免となるが手に入る算段はついていないので、当面はお世話になる予定。
何度かメンバーとも訓練をして既に効果は検証済みなのだ。
「はっ、それはさすがに……」
ごぶは俺がゴムナイフを構えて戦闘態勢に入っているのにまだ油断して構えてすらいない。
「そっちがその気でもこっちは攻撃するから油断するなよ」
俺は3人に向けて忠告する。
「そうは言っても……」
「なんていえばいいんだろう」
トロンとラムは顔を見合わせて困惑している。
ラムは顔という概念がないのだが、そんな様子だ。
ごぶで十分だと思っていることだろう。
それに自分たちは攻撃の範囲内にはいなくて安全圏にいると思っているのも原因か。
ごぶも俺と数メートル離れているため、俺が動き出してからでも間に合うと思っている。
俺の速度ならとっくにそこは射程距離なのだ。
後ろにいるトロンとラムも射程圏。
つまり後衛が危険な位置にいて何を油断しているのか。
「えっ!?」
目の前から消えた俺の姿にごぶは驚きの声を上げる。
俺はラムの背後に回りナイフを突き立てた。
ゼリーに刺したような感覚で手応えというものは特にない。
「キャアッ」
痛みでラムは悲鳴を上げるが反撃はこない。
何が起きているのか分かっていないトロンの胸を蹴り飛ばした。
「カハっ」
骨の体は思いのほか軽く、予想よりも吹き飛んだ。
魔法使い系統で防御力が弱いというのも大きいか。
「ごぶ、実戦なら二人は死んでたよ」
実際は一撃で倒すのはさすがに厳しいとは思うが、発破をかけるためにもそう言っておく。
やっとやる気になったのか拳を振り回してくる。
「速すぎる……」
しかし、どれも俺に届かせるには遅すぎる。
油断はしないよ。
そっちと違ってこっちはまともに攻撃を受けると瀕死になるんだからね。
下手すれば死ぬ。
「乱刀・斬」
無数の斬撃がごぶの体を四方八方から襲う。
ガードを固めて急所は守っているが、ゴムナイフには殺傷能力はないので痛みだけがごぶを襲っている。
ダメージはなくてもフラフラと後退して膝をつくごぶを見下げてゴムナイフの効果を教えてあげる。
そういえば伝えていなかった。
「これはゴムナイフだから死ぬことはないよ。痛みは多少あるかもしれないけどね」
それを聞いたごぶは苦悶の表情を浮かべた。
何故だろうか?
死なないと分かれば安堵しても良さそうなのに。
「深き闇より穿て『深淵槍』」
トロンが魔法を放ってくる。
避けるのは簡単だがここは勉強の意味を込めて迎撃を選択しよう。
「ディー、よろしく」
「キュイキュイ」
トロンの放った深淵槍とディーの闇槍がぶつかり合って互いに消滅する。
「そっ、そんな馬鹿な!? 僕の深淵槍が下位魔法の闇槍と互角だなんて」
互いに黒い槍を放つ魔法だけど、エフェクトが微妙に違うので使い手であればすぐに分かるだろう。
確かに魔法のランクは向こうが上だけど、ディーとトロンの実力の差かな。
「アシッドテンタクル」
ラムの触手攻撃。
3人は何というか戦い方が単調だな。
オウカ戦と同じ技しか使ってこない。
そもそもオウカと俺への対応が同じはずがない。
そこは単純に経験が足りていない。
特に強者との戦闘に慣れていない。
相手が格上なら工夫に工夫を重ねないとまず勝ち目はない。
相手が弱いと自分の得意なことを押しつけても何とかなる。
これは自身で感じている最近の悩み。
「キュイキュイ」
ディーがトロンの時と同じように迎撃してくれるようだ。
黒炎の息で触手を燃やし尽くす。
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