79 / 91
最終決戦の部屋5
しおりを挟む
余裕綽々ですがなにか? というように立っているが、その実ここに至るまでの準備が大変だったのは、当インキュバスしか知り得ぬ事実だ。
(テンリィが巻き込まれないように移動させて部屋の位置変えて電気系統の配線変えてあいつが渡り廊下のどこから出てくるか当たりつけて触手に言うこと聞かせて! どんだけしんどかったと思ってんだ卑怯だと思うならお前がやってみろや!!!)
もはや八つ当たりである。
なお、八面六臂の大活躍をしている触手生物はテンリィの眷属である。
どこぞの戦場でタコ殴りにしたのを切欠に、懐かれたので連れてきたのだとか。
知能や性質が犬に似ている彼はあくまでテンリィを主人とみなしているため、キューが言うことを聞かせるのは結構な労力を使うのだ。
閑話休題。
「ぐ、……この……」
なんとか転がりながら触手の攻撃を交わし続けているが、スライの動きは目に見えて鈍くなってきている。
ある意味当然の結果とも言えた。
体力魔力共に尽きた状態で運び込まれ、機械触手によりなんとか回復したとはいえ、その後穴の部屋で麻酔液を掛けられるなどしながら大暴れし続けたのだ。
いつ限界を迎えてもおかしくない状態と言えた。
「あんた、頑張ったよ」
湧いたのは憐れみか。
とうとう床に這いつくばり、動かなくなった黒鎧に声を掛ける。
攻撃を途中で止めさせられた触手生物は不機嫌そうに唸っている。
機嫌は後で取ることとして、キューは言葉を続けた。
「敗戦したとか言ってたけどさ、たぶん劣勢だとわかってても手は抜かずに一生懸命戦ったんだろうな。大した愛国心だ、なんて皮肉言って悪かった」
だけどもうこれまでだ。
(テンリィが巻き込まれないように移動させて部屋の位置変えて電気系統の配線変えてあいつが渡り廊下のどこから出てくるか当たりつけて触手に言うこと聞かせて! どんだけしんどかったと思ってんだ卑怯だと思うならお前がやってみろや!!!)
もはや八つ当たりである。
なお、八面六臂の大活躍をしている触手生物はテンリィの眷属である。
どこぞの戦場でタコ殴りにしたのを切欠に、懐かれたので連れてきたのだとか。
知能や性質が犬に似ている彼はあくまでテンリィを主人とみなしているため、キューが言うことを聞かせるのは結構な労力を使うのだ。
閑話休題。
「ぐ、……この……」
なんとか転がりながら触手の攻撃を交わし続けているが、スライの動きは目に見えて鈍くなってきている。
ある意味当然の結果とも言えた。
体力魔力共に尽きた状態で運び込まれ、機械触手によりなんとか回復したとはいえ、その後穴の部屋で麻酔液を掛けられるなどしながら大暴れし続けたのだ。
いつ限界を迎えてもおかしくない状態と言えた。
「あんた、頑張ったよ」
湧いたのは憐れみか。
とうとう床に這いつくばり、動かなくなった黒鎧に声を掛ける。
攻撃を途中で止めさせられた触手生物は不機嫌そうに唸っている。
機嫌は後で取ることとして、キューは言葉を続けた。
「敗戦したとか言ってたけどさ、たぶん劣勢だとわかってても手は抜かずに一生懸命戦ったんだろうな。大した愛国心だ、なんて皮肉言って悪かった」
だけどもうこれまでだ。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
【完結】我が侭公爵は自分を知る事にした。
琉海
BL
不仲な兄の代理で出席した他国のパーティーで愁玲(しゅうれ)はその国の王子であるヴァルガと出会う。弟をバカにされて怒るヴァルガを愁玲は嘲笑う。「兄が弟の事を好きなんて、そんなこと絶対にあり得ないんだよ」そう言う姿に何かを感じたヴァルガは愁玲を自分の番にすると宣言し共に暮らし始めた。自分の国から離れ一人になった愁玲は自分が何も知らない事に生まれて初めて気がついた。そんな愁玲にヴァルガは知識を与え、時には褒めてくれてそんな姿に次第と惹かれていく。
しかしヴァルガが優しくする相手は愁玲だけじゃない事に気づいてしまった。その日から二人の関係は崩れていく。急に変わった愁玲の態度に焦れたヴァルガはとうとう怒りを顕にし愁玲はそんなヴァルガに恐怖した。そんな時、愁玲にかけられていた魔法が発動し実家に戻る事となる。そこで不仲の兄、それから愁玲が無知であるように育てた母と対峙する。
迎えに来たヴァルガに連れられ再び戻った愁玲は前と同じように穏やかな時間を過ごし始める。様々な経験を経た愁玲は『知らない事をもっと知りたい』そう願い、旅に出ることを決意する。一人でもちゃんと立てることを証明したかった。そしていつかヴァルガから離れられるように―――。
異変に気づいたヴァルガが愁玲を止める。「お前は俺の番だ」そう言うヴァルガに愁玲は問う。「番って、なに?」そんな愁玲に深いため息をついたヴァルガはあやすように愁玲の頭を撫でた。
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる