75 / 91
最終決戦の部屋1
しおりを挟む
訓練室よりも、落とし穴の部屋よりも更に広い部屋。
渡り廊下すらも内包した空間にて、二体の男が対峙していた。
触手生物を後ろに従えた男。
黒騎士を施設へ運び入れ、様々な試練を与えた黒幕、インキュバスのキュー。
木剣ながらも構える姿は美しく、堂に入っている。
謎に果敢に立ち向かい、同胞の遺体に義憤を抱く黒騎士、スライムのスライ。
とうとう同じ場にて相対した二体の戦いは、伸ばされた触手の一撃から始まった。
鞭のようにしなり、その巨体に違わぬ重さを乗せた衝撃がスライへと襲いかかる。
それを軽くいなし、わずかに身体を移動させながらも即座に構え直すスライの動き。
染付くほど繰り返されたであろう鍛錬の片鱗を感じとり、キューは口笛を吹いて讃えた。
「提案なんだがな。あんたの体調はまだ万全じゃない。もうしばらくここに滞在するってのは、どうだろう」
「お気持ちだけ受け取っておこう。私には心配しているであろう部下達の元へ、国へ戻り、これまでの事を報告する義務がある。たとえ国を敗戦に導き、おめおめと逃げ帰ってきた臆病者とそしられようとも!」
スライの断り文句に、キューはぴくりと片眉を上げる。
斜に構えたような仕草も様になっており、嫌味なほど整った顔だな、と兜の下でスライは少し面白くない感情を抱いた。
「あんたのとこの内情は知らないがね。わざわざ戦争で敗けた国へ戻ろうなんて、大した愛国心だな」
「騎士として当然のことをしているだけだ」
と。
再び触手の攻撃が放たれる。
今度は二本に増えていた。
渡り廊下すらも内包した空間にて、二体の男が対峙していた。
触手生物を後ろに従えた男。
黒騎士を施設へ運び入れ、様々な試練を与えた黒幕、インキュバスのキュー。
木剣ながらも構える姿は美しく、堂に入っている。
謎に果敢に立ち向かい、同胞の遺体に義憤を抱く黒騎士、スライムのスライ。
とうとう同じ場にて相対した二体の戦いは、伸ばされた触手の一撃から始まった。
鞭のようにしなり、その巨体に違わぬ重さを乗せた衝撃がスライへと襲いかかる。
それを軽くいなし、わずかに身体を移動させながらも即座に構え直すスライの動き。
染付くほど繰り返されたであろう鍛錬の片鱗を感じとり、キューは口笛を吹いて讃えた。
「提案なんだがな。あんたの体調はまだ万全じゃない。もうしばらくここに滞在するってのは、どうだろう」
「お気持ちだけ受け取っておこう。私には心配しているであろう部下達の元へ、国へ戻り、これまでの事を報告する義務がある。たとえ国を敗戦に導き、おめおめと逃げ帰ってきた臆病者とそしられようとも!」
スライの断り文句に、キューはぴくりと片眉を上げる。
斜に構えたような仕草も様になっており、嫌味なほど整った顔だな、と兜の下でスライは少し面白くない感情を抱いた。
「あんたのとこの内情は知らないがね。わざわざ戦争で敗けた国へ戻ろうなんて、大した愛国心だな」
「騎士として当然のことをしているだけだ」
と。
再び触手の攻撃が放たれる。
今度は二本に増えていた。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
あざといが過ぎる!
おこげ茶
BL
自分のかわいさを理解して上手いこと利用しているつもりの主人公、美緒のあざとさは本人が思ってもいない方向に作用していた!?
「や、僕女の子が好きなんだけど!?」
※基本的に月曜日の19時更新にする予定です。
※誤字脱字あれば、ぜひふわふわ言葉で教えてください。爆速で直します。
※Rは今のとこ予定ないです。(もしかしたらあとから入るかも。その時はごめんなさい)
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる