黒騎士爆走物語

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最終決戦の部屋1

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訓練室よりも、落とし穴の部屋よりも更に広い部屋。
渡り廊下すらも内包した空間にて、二体の男が対峙していた。

触手生物を後ろに従えた男。
黒騎士を施設へ運び入れ、様々な試練を与えた黒幕、インキュバスのキュー。
木剣ながらも構える姿は美しく、堂に入っている。
謎に果敢に立ち向かい、同胞の遺体に義憤を抱く黒騎士、スライムのスライ。

とうとう同じ場にて相対した二体の戦いは、伸ばされた触手の一撃から始まった。
鞭のようにしなり、その巨体に違わぬ重さを乗せた衝撃がスライへと襲いかかる。

それを軽くいなし、わずかに身体を移動させながらも即座に構え直すスライの動き。
染付くほど繰り返されたであろう鍛錬の片鱗を感じとり、キューは口笛を吹いて讃えた。

「提案なんだがな。あんたの体調はまだ万全じゃない。もうしばらくここに滞在するってのは、どうだろう」
「お気持ちだけ受け取っておこう。私には心配しているであろう部下達の元へ、国へ戻り、これまでの事を報告する義務がある。たとえ国を敗戦に導き、おめおめと逃げ帰ってきた臆病者とそしられようとも!」

スライの断り文句に、キューはぴくりと片眉を上げる。
斜に構えたような仕草も様になっており、嫌味なほど整った顔だな、と兜の下でスライは少し面白くない感情を抱いた。

「あんたのとこの内情は知らないがね。わざわざ戦争で敗けた国へ戻ろうなんて、大した愛国心だな」
「騎士として当然のことをしているだけだ」

と。
再び触手の攻撃が放たれる。
今度は二本に増えていた。
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