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黒騎士爆走物語2
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この階が目的の三階であるはず、と最後の段を降り切ろうとして。
「むっ!」
鉄靴ごしに伝わる振動。
これまでのものより大きい。
直感が働き、足先を引っ込めた、次の瞬間。
がごん!
辿り着くはずだった床が突如として消えた。
落とし穴か、と下を覗き込み、鎧の内側で眉をひそめる。
そこに溜まっていたのはピンク色の液体だった。
竹槍が敷き詰められているより殺傷力は低いように見えるが、水責め用だとするなら性格の悪い罠だ。
問題は、三階へ至るための扉の前にそれが出現した、ということである。
「仮に落ちて渡ったとしても私なら問題ないだろうが……」
先程の戦いで、かなりの体液を失った。
水分を欲する私にとっては、むしろ魅力的な物とも言える、が。
四角の空間に並々と注がれたそれを、よく観察する。
時折たゆたう波の様子から見て、ただの水ではない。
もっと粘性のあるなにかだ。
無駄に派手な彩色のせいで底がどこにあるのかも分からない。
「嫌な予感がするな」
そもそもこの施設でまともな設備を見た記憶がない。
得体のしれない液体に触れるべきてはない、と己の頭脳が告げる。
「よし、飛び越えよう」
と決めたはいいものの。
問題は勢いをつけるために助走したくとも、後ろが階段のせいで走りづらい、という点だ。
しかしこればかりはやるしかない。
私は降りてきたばかりの階段を数段上りなおし、呼吸を整える。
タイミングを見計らい、
「行くぞ!」
ガシャン!
鉄靴を鳴らして駆け下り、穴の縁ぎりぎりで思い切り踏み込む!
「むっ!」
鉄靴ごしに伝わる振動。
これまでのものより大きい。
直感が働き、足先を引っ込めた、次の瞬間。
がごん!
辿り着くはずだった床が突如として消えた。
落とし穴か、と下を覗き込み、鎧の内側で眉をひそめる。
そこに溜まっていたのはピンク色の液体だった。
竹槍が敷き詰められているより殺傷力は低いように見えるが、水責め用だとするなら性格の悪い罠だ。
問題は、三階へ至るための扉の前にそれが出現した、ということである。
「仮に落ちて渡ったとしても私なら問題ないだろうが……」
先程の戦いで、かなりの体液を失った。
水分を欲する私にとっては、むしろ魅力的な物とも言える、が。
四角の空間に並々と注がれたそれを、よく観察する。
時折たゆたう波の様子から見て、ただの水ではない。
もっと粘性のあるなにかだ。
無駄に派手な彩色のせいで底がどこにあるのかも分からない。
「嫌な予感がするな」
そもそもこの施設でまともな設備を見た記憶がない。
得体のしれない液体に触れるべきてはない、と己の頭脳が告げる。
「よし、飛び越えよう」
と決めたはいいものの。
問題は勢いをつけるために助走したくとも、後ろが階段のせいで走りづらい、という点だ。
しかしこればかりはやるしかない。
私は降りてきたばかりの階段を数段上りなおし、呼吸を整える。
タイミングを見計らい、
「行くぞ!」
ガシャン!
鉄靴を鳴らして駆け下り、穴の縁ぎりぎりで思い切り踏み込む!
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