65 / 91
黒騎士爆走物語2
しおりを挟む
この階が目的の三階であるはず、と最後の段を降り切ろうとして。
「むっ!」
鉄靴ごしに伝わる振動。
これまでのものより大きい。
直感が働き、足先を引っ込めた、次の瞬間。
がごん!
辿り着くはずだった床が突如として消えた。
落とし穴か、と下を覗き込み、鎧の内側で眉をひそめる。
そこに溜まっていたのはピンク色の液体だった。
竹槍が敷き詰められているより殺傷力は低いように見えるが、水責め用だとするなら性格の悪い罠だ。
問題は、三階へ至るための扉の前にそれが出現した、ということである。
「仮に落ちて渡ったとしても私なら問題ないだろうが……」
先程の戦いで、かなりの体液を失った。
水分を欲する私にとっては、むしろ魅力的な物とも言える、が。
四角の空間に並々と注がれたそれを、よく観察する。
時折たゆたう波の様子から見て、ただの水ではない。
もっと粘性のあるなにかだ。
無駄に派手な彩色のせいで底がどこにあるのかも分からない。
「嫌な予感がするな」
そもそもこの施設でまともな設備を見た記憶がない。
得体のしれない液体に触れるべきてはない、と己の頭脳が告げる。
「よし、飛び越えよう」
と決めたはいいものの。
問題は勢いをつけるために助走したくとも、後ろが階段のせいで走りづらい、という点だ。
しかしこればかりはやるしかない。
私は降りてきたばかりの階段を数段上りなおし、呼吸を整える。
タイミングを見計らい、
「行くぞ!」
ガシャン!
鉄靴を鳴らして駆け下り、穴の縁ぎりぎりで思い切り踏み込む!
「むっ!」
鉄靴ごしに伝わる振動。
これまでのものより大きい。
直感が働き、足先を引っ込めた、次の瞬間。
がごん!
辿り着くはずだった床が突如として消えた。
落とし穴か、と下を覗き込み、鎧の内側で眉をひそめる。
そこに溜まっていたのはピンク色の液体だった。
竹槍が敷き詰められているより殺傷力は低いように見えるが、水責め用だとするなら性格の悪い罠だ。
問題は、三階へ至るための扉の前にそれが出現した、ということである。
「仮に落ちて渡ったとしても私なら問題ないだろうが……」
先程の戦いで、かなりの体液を失った。
水分を欲する私にとっては、むしろ魅力的な物とも言える、が。
四角の空間に並々と注がれたそれを、よく観察する。
時折たゆたう波の様子から見て、ただの水ではない。
もっと粘性のあるなにかだ。
無駄に派手な彩色のせいで底がどこにあるのかも分からない。
「嫌な予感がするな」
そもそもこの施設でまともな設備を見た記憶がない。
得体のしれない液体に触れるべきてはない、と己の頭脳が告げる。
「よし、飛び越えよう」
と決めたはいいものの。
問題は勢いをつけるために助走したくとも、後ろが階段のせいで走りづらい、という点だ。
しかしこればかりはやるしかない。
私は降りてきたばかりの階段を数段上りなおし、呼吸を整える。
タイミングを見計らい、
「行くぞ!」
ガシャン!
鉄靴を鳴らして駆け下り、穴の縁ぎりぎりで思い切り踏み込む!
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる