黒騎士爆走物語

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従業員は動き出す3

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「いいなぁ」

呟いた頬は、紅潮している。

「あいつ、戦場で鎧を与えられる程度には戦闘員として活躍してたってことだ。まともに剣さえもてなさそうなあのスライムの身体で! 相当努力しただろう、戦えるようになったときは自分に誇らしささえ感じただろう」

その姿は、熱に浮かされたよう。
視線は画面に固定されたままなのに、操作盤に走らせる指はひたすら正確なのが恐ろしい。

「そんなあいつに比べたら、他のスライムなんて地べたを這いずるだけの軟体生物だろう? 俺はあいつとスライムが同じ存在だとは思えないよ」

ふらり。
キューの肩が傾ぐ。
椅子から落ちるのではないかと思うほどの角度をつけたかと思えば、今度は逆方向へ。
彼が興奮している時の癖だ。

「なのに、あいつはスライム達の死を悲しんでる! 同胞として!」

俺はあんなことできやしないのに。
風評被害を恐れ、インキュバスとしての生き方を否定してしまった男が、己の心情を吐露する。

「うらやましい。そんな綺麗事をいつまでも吐けるわけがないって、他のスライムと自分の命を天秤にかけて無様な姿を笑ってやりたい。
大事にしたい。仲間を想う姿こそ尊重されるべきだ。あいつを襲うであろう全ての悪意から守ってやりたい。
あいつから目が離せない。
なんだろうな、この気持ち」

嫌悪と好意は入り混じり、相殺されて浮かぶ表情は、無に近かった。
感情の強さを放つ目だけが、ギラギラと輝いていた。

「ほしいなぁ、あいつ」
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