黒騎士爆走物語

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恐るべき真実の部屋2

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身を起こして辺りを伺えば、そこには先程までの部屋とはうってかわった光景が広がっていた。
天井にはところ狭しと張り巡らされた配管に、なにを測っているのかよくわからない計器。
いわゆる裏方が使用する空間である。

「もしかすると、私は黒幕の予想の範疇を超えた行動をとったのかもしれない」

ということはすなわち、脱出の可能性が見えてきたということだ。
かすかながらも湧いてきた希望を胸に、私は歩み続けるのであった。

空間は色々なものがむき出しで、生き物が長時間くつろぐようにはできていないようだった。
鎧がようやく通れそうなそこを、天井の配管を追いかける形で移動していく。

「さすがに私の正体はバレているだろうが、まさか向こうもスライムがここまでやるとは思っていなかったに違いない」

スライムの底力を見たか! と誰に言うでもなく得意気に腕を振る。
これを期にスライムへの評価が改められれば良いのだが。
しかしあまりに注目されすぎても同胞たちの障害になるかもしれない。
なにせ自分で言うのも憚られるが、兵士としてここまで戦えるのは私という個体が変身能力やセンス等諸々を高め続けた結果である。
他のスライムも同じように動けるかというと答えに困るのだ。

下手したら物珍しさゆえの乱獲や、敵とみなされて殲滅させられたり、なんてこともあるかも……。
まだ脱出すらできていないのに、もしものことを考えてしまって身を震わせた。

「私がここに入れられたのは、サムニエ国の兵士だからではなく、私がスライムだからか?」

はた、と。
一つの可能性に気づき、足を止める。
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