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穴の部屋4
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陶器のようなつるりとした質感のそれは、左の壁にかけられているものと酷似していた。
一点違うところを上げるとするならば、破損はしているものの向こうの部屋に掛けられたプレートの文字は読めそうだ、というところだ。
初めて手がかりになりえそうな物を発見し、喜びいさんで目をこらす。
が、問題が発生した。
「……っ、ギリギリのところで、見えん……」
プレートの配置が絶妙なのだ。
穴を覗くだけでは赤い図形の端がちらりと見えるだけで、おそらく文字ではないか、ということしかわからない。
完全に読み取るためには、頭部を穴の中に突っ込まないといけない、と理解するのに時間はいらなかった。
となるとやるかどうか、を選択せねばならないわけだが。
この世界に存在する知的生命体は、ニ通りに分類できるというのが私の持論だ。
すなわち、得体のしれない穴に指を突っ込めるか否か。
私は突っ込める派である。
子供の頃からわくわくして突っ込み、そこに巣を作っていた毒虫に刺されて泣きを見たことは数知れず。
しかし後悔はしていない。
知的好奇心を満たすためには仕方のない犠牲であったし、そもそも我々の祖先は穴を覗き込むことで必要な物を得てきたからこういう習性が備わったのだ。
つまり穴に突っ込む行為は自然の摂理である。
「罠は、ないと思う。たぶんないんじゃないかな、うん」
ヘリのクッションや周りの様子を探ってみるが、特に警戒に足る要素はない。
『そんな曖昧な偵察結果でいいわけないでしょうが』と心の副官が吐き捨てた気がするが、正直なところこの部屋全体の技術レベルが高すぎて私の知識では危険なものか判別がつかないのだ。
向こうの壁に見える直線の溝がデザインによるものなのかただの傷なのかもわからない。
唯一わかっているのは、このまま立ち尽くしていたとしても事態は進まないということだ。
一点違うところを上げるとするならば、破損はしているものの向こうの部屋に掛けられたプレートの文字は読めそうだ、というところだ。
初めて手がかりになりえそうな物を発見し、喜びいさんで目をこらす。
が、問題が発生した。
「……っ、ギリギリのところで、見えん……」
プレートの配置が絶妙なのだ。
穴を覗くだけでは赤い図形の端がちらりと見えるだけで、おそらく文字ではないか、ということしかわからない。
完全に読み取るためには、頭部を穴の中に突っ込まないといけない、と理解するのに時間はいらなかった。
となるとやるかどうか、を選択せねばならないわけだが。
この世界に存在する知的生命体は、ニ通りに分類できるというのが私の持論だ。
すなわち、得体のしれない穴に指を突っ込めるか否か。
私は突っ込める派である。
子供の頃からわくわくして突っ込み、そこに巣を作っていた毒虫に刺されて泣きを見たことは数知れず。
しかし後悔はしていない。
知的好奇心を満たすためには仕方のない犠牲であったし、そもそも我々の祖先は穴を覗き込むことで必要な物を得てきたからこういう習性が備わったのだ。
つまり穴に突っ込む行為は自然の摂理である。
「罠は、ないと思う。たぶんないんじゃないかな、うん」
ヘリのクッションや周りの様子を探ってみるが、特に警戒に足る要素はない。
『そんな曖昧な偵察結果でいいわけないでしょうが』と心の副官が吐き捨てた気がするが、正直なところこの部屋全体の技術レベルが高すぎて私の知識では危険なものか判別がつかないのだ。
向こうの壁に見える直線の溝がデザインによるものなのかただの傷なのかもわからない。
唯一わかっているのは、このまま立ち尽くしていたとしても事態は進まないということだ。
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