25 / 91
穴の部屋4
しおりを挟む
陶器のようなつるりとした質感のそれは、左の壁にかけられているものと酷似していた。
一点違うところを上げるとするならば、破損はしているものの向こうの部屋に掛けられたプレートの文字は読めそうだ、というところだ。
初めて手がかりになりえそうな物を発見し、喜びいさんで目をこらす。
が、問題が発生した。
「……っ、ギリギリのところで、見えん……」
プレートの配置が絶妙なのだ。
穴を覗くだけでは赤い図形の端がちらりと見えるだけで、おそらく文字ではないか、ということしかわからない。
完全に読み取るためには、頭部を穴の中に突っ込まないといけない、と理解するのに時間はいらなかった。
となるとやるかどうか、を選択せねばならないわけだが。
この世界に存在する知的生命体は、ニ通りに分類できるというのが私の持論だ。
すなわち、得体のしれない穴に指を突っ込めるか否か。
私は突っ込める派である。
子供の頃からわくわくして突っ込み、そこに巣を作っていた毒虫に刺されて泣きを見たことは数知れず。
しかし後悔はしていない。
知的好奇心を満たすためには仕方のない犠牲であったし、そもそも我々の祖先は穴を覗き込むことで必要な物を得てきたからこういう習性が備わったのだ。
つまり穴に突っ込む行為は自然の摂理である。
「罠は、ないと思う。たぶんないんじゃないかな、うん」
ヘリのクッションや周りの様子を探ってみるが、特に警戒に足る要素はない。
『そんな曖昧な偵察結果でいいわけないでしょうが』と心の副官が吐き捨てた気がするが、正直なところこの部屋全体の技術レベルが高すぎて私の知識では危険なものか判別がつかないのだ。
向こうの壁に見える直線の溝がデザインによるものなのかただの傷なのかもわからない。
唯一わかっているのは、このまま立ち尽くしていたとしても事態は進まないということだ。
一点違うところを上げるとするならば、破損はしているものの向こうの部屋に掛けられたプレートの文字は読めそうだ、というところだ。
初めて手がかりになりえそうな物を発見し、喜びいさんで目をこらす。
が、問題が発生した。
「……っ、ギリギリのところで、見えん……」
プレートの配置が絶妙なのだ。
穴を覗くだけでは赤い図形の端がちらりと見えるだけで、おそらく文字ではないか、ということしかわからない。
完全に読み取るためには、頭部を穴の中に突っ込まないといけない、と理解するのに時間はいらなかった。
となるとやるかどうか、を選択せねばならないわけだが。
この世界に存在する知的生命体は、ニ通りに分類できるというのが私の持論だ。
すなわち、得体のしれない穴に指を突っ込めるか否か。
私は突っ込める派である。
子供の頃からわくわくして突っ込み、そこに巣を作っていた毒虫に刺されて泣きを見たことは数知れず。
しかし後悔はしていない。
知的好奇心を満たすためには仕方のない犠牲であったし、そもそも我々の祖先は穴を覗き込むことで必要な物を得てきたからこういう習性が備わったのだ。
つまり穴に突っ込む行為は自然の摂理である。
「罠は、ないと思う。たぶんないんじゃないかな、うん」
ヘリのクッションや周りの様子を探ってみるが、特に警戒に足る要素はない。
『そんな曖昧な偵察結果でいいわけないでしょうが』と心の副官が吐き捨てた気がするが、正直なところこの部屋全体の技術レベルが高すぎて私の知識では危険なものか判別がつかないのだ。
向こうの壁に見える直線の溝がデザインによるものなのかただの傷なのかもわからない。
唯一わかっているのは、このまま立ち尽くしていたとしても事態は進まないということだ。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
手切れ金
のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。
貴族×貧乏貴族
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
婚約破棄は計画的にご利用ください
Cleyera
BL
王太子の発表がされる夜会で、俺は立太子される第二王子殿下に、妹が婚約破棄を告げられる現場を見てしまった
第二王子殿下の婚約者は妹じゃないのを、殿下は知らないらしい
……どうしよう
:注意:
素人です
人外、獣人です、耳と尻尾のみ
エロ本番はないですが、匂わせる描写はあります
勢いで書いたので、ツッコミはご容赦ください
ざまぁできませんでした(´Д` ;)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる