黒騎士爆走物語

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穴の部屋2

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身につけようとして、そういえばと思い当たる。
今のこの状況も観察されているのだろうか。

雑音混じりの声は完全に聞き取れたわけではないが、実験を行うと言っていた気がする。
ならば被験体となった私のこともどこからか見ているに違いなかった。

今更ながら己の身体を他者に晒している、という事実にむずがゆさを覚える。
特に鎧と人間体への変身に慣れ始めた頃、『えっ、隊長、全裸で直鎧着けるんすか……えっ!?』と部下に五度見されて以降、自分が鎧を身につけるところはあまり人に見せたくない。
違うのだ、私にとってはそもそも裸であることが通常の種族であるし、人間の身体は色々身につけなければいけないとその頃知らなかったし、

と、色々言い訳ところで知識を得た今も全裸で鎧を着けようとしている事実は変わらないわけで。

「私には外殻の代わりになる鎧さえあればいいから……そう、今他に着るものがないから仕方ない」

誰に対してかわからない理屈をこねて、私は鎧をえいやと身につけた。
奇妙に思うなら思え、窓の向こうの黒幕よ。



さて。
ようやくいつもの格好となり、やや落ち着いた。
改めて私は今の状況を確認する。

今いる部屋は、やはり四方を白い壁に囲まれている。
背後には扉を壊してできた大穴と、最初の部屋。
横たわっていた寝台と、散らばる残骸が見える。

前方にはやはり穴がある。
私が開けた穴より小さく、丸い形に整えられている。
設計してわざわざ開けられたもののようだ。
そばには私が飛ばした、ちょっとかわいそうな形になった扉の残骸がある。

左の壁にはプレートがあり、なにか文字が書かれていたようだが破損がひどく読めない。

右には簡素ではあるが、扉が備え付けられていた。
へしゃげてはいない。
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