黒騎士爆走物語

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黒騎士になにがあったか4

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倒れふした時から数分か、それとも数時間か。
緩やかに体力を取り戻しつつあった私の意識へ響いたのは、やけに嬉しそうな声だった。

次いで、がしゃん、と持ち上げられる。

(!?)

「こりゃあ高く売れるぞぉ」

なにが起こったのか分からず、咄嗟に抵抗しようとするも、いまだ回復途中の身体は尺取虫ひとにじりの動きすら取れない。
黒鎧ごと抱え上げられた私はガッシャガッシャと運ばれ、しばらくしてから乱暴に落とされた。

ゴン! という音が鳴ったのは思っていたよりも早く、地面よりも高い位置に置かれたのがわかった。

「あやっべ、馬車に傷! や、セーフセーフ。それにしても珍しいもんだな、見たことねえ。こういうの買い取ってくれる好事家が確かいたっけ」

誰かと会話しているわけでもないのにぺらぺらと喋るその声からの情報で、私は段々と現況を理解し始めた。
要するに、声の主は売ろうとしているのだ。
私を。

珍しいもんというのは、私の種族のことに違いない。
私は私の他に戦場を駆け回る同族を見たことがないから。

(奴隷商人……!)

声の主の正体に青ざめる。
私に顔色を変えるような血液など流れていないが、そう形容したくなるような気分であった。

これまで生まれのせいで散々バカにされてきた子供時代、見返してやる一心でひたすら己を鍛え上げた。
国の守り手となるにはいささか不純な動機であったが、その努力は実り、一部隊を率いるまでにのしあがったのだ。
それが、まさかこんなところで貶められるなど。
死ぬことは覚悟していたというのに、どうやら私の中で、矜持は生死よりも価値が高かったらしい。

「んじゃ、こんなもんかね」

奴隷商人は私の他になにやら物品を詰め込むと、馬車を走らせはじめた。
馬の嘶きと車輪が地面を転がる音が続く。

私はどうすべきか考え始めた。
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