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黒騎士になにがあったか2
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目を見開く彼にも分かっているはずだ。
戦線は自国よりも伸びきり、兵站支援が間に合っていない。
物資は補給が遅れ、自軍は相当に弱体化している。
今この場に、全員を逃しきれるほどの実力がある者は自分しかいない、と。
「しかし……貴方は指揮官です、我々の頭だ! 生き残った者を導くのが使命のはずでしょう!」
「負けたのだ、サムニエ国は。もう戦いの指揮をする必要はどこにもない。今は貴殿らを無事に逃がすことが使命である」
淡々と説得すれば、副官は頷いた。
全く納得していない、といった面持ちで。
「……帰ったらお説教五時間はお覚悟してくださいよ!」
「これは手厳しい」
そう言い捨て、撤退の準備に加わった副官の後ろ姿を視線のみで追いかけながら、私は己の恐怖を気取られなかったことに安堵した。
種族柄元々感情が分かりにくいうえ、常に黒鎧を身に着けているのだから気取られるはずもないのだが。
十中八九、自分はここで死ぬ。
自分の実力は十分に理解しているつもりだ。
訓練は人並み以上にこなしてきた、そこらの一般兵士が束になって掛かってきたとしても一撃で吹き飛ばせる自信がある。
だが、追ってくる大軍を抑え込めるほどの、英雄のごとき力は自分には備わっていない。
「せめて、未来ある若人達が生きのびるまでの時間稼ぎくらいにはなってもらおうか」
頼んだぞ、相棒。と胸部を叩けば、長年私の一部となってくれている黒鎧はガシャンと頼もしい返事を寄越したのだった。
戦線は自国よりも伸びきり、兵站支援が間に合っていない。
物資は補給が遅れ、自軍は相当に弱体化している。
今この場に、全員を逃しきれるほどの実力がある者は自分しかいない、と。
「しかし……貴方は指揮官です、我々の頭だ! 生き残った者を導くのが使命のはずでしょう!」
「負けたのだ、サムニエ国は。もう戦いの指揮をする必要はどこにもない。今は貴殿らを無事に逃がすことが使命である」
淡々と説得すれば、副官は頷いた。
全く納得していない、といった面持ちで。
「……帰ったらお説教五時間はお覚悟してくださいよ!」
「これは手厳しい」
そう言い捨て、撤退の準備に加わった副官の後ろ姿を視線のみで追いかけながら、私は己の恐怖を気取られなかったことに安堵した。
種族柄元々感情が分かりにくいうえ、常に黒鎧を身に着けているのだから気取られるはずもないのだが。
十中八九、自分はここで死ぬ。
自分の実力は十分に理解しているつもりだ。
訓練は人並み以上にこなしてきた、そこらの一般兵士が束になって掛かってきたとしても一撃で吹き飛ばせる自信がある。
だが、追ってくる大軍を抑え込めるほどの、英雄のごとき力は自分には備わっていない。
「せめて、未来ある若人達が生きのびるまでの時間稼ぎくらいにはなってもらおうか」
頼んだぞ、相棒。と胸部を叩けば、長年私の一部となってくれている黒鎧はガシャンと頼もしい返事を寄越したのだった。
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