黒騎士爆走物語

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事の発端1

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どうしてこうなってしまったか。
ことの発端は、掘り返していけば世界情勢にまで及ぶ。

長きに渡る人魔戦争が、魔王の討伐という形で終結を迎えた今日この頃。
とはいえ、全てが平和になったとはいかず、いまだあちこちで小競り合いや小さな問題が戦争の後遺症として色濃く残っていた。

それはキューがなんでも屋を営むラタ街でも同じこと。
むしろ、戦争に負けた避難民や少数民族が逃げ込んでできた隠れ家のような街だからこそ、様々なトラブルが舞い込んできやすいと言っても過言ではない。

「頼むよキュー、この通り!」
「断る」

キュー本人はトラブル、中でも飯の種にならなさそうな類はご遠慮する方針である。
今回は特に厄介そうだと、インキュバス特有の端正な顔立ちを盛大にしかめた。

「そんなこと言わないでくれよぉ、もうお前しかなんとかしてくれそうな心当たりがないんだよ!」
「他の心当たりには断られたんだろ? 誰だってそうする、俺だってそうする」

ばっさりと切り捨てられ、ひぃんと情けない声をあげるのは昔からの腐れ縁であるシンだ。
得意とする幻術で国境や関門を潜り抜け、文字通り『なんでも』運ぶ運び屋を自称している。
自力では入手できない品物も調達してくれるという点においてキューにとってもありがたい存在なので、対価次第では頼みも聞いてやらなくはない、という仲ではある。
が、今回ばかりは内容が悪すぎた。

「『モンスターを引き取ってくれ』、だなんて……生憎だがうちは人身売買はやってない」
「一言で言うとそうなんだけど厳密には違うんだよぉ!」

せめて話を聞いてくれ! とシンが必至ですがりついて叫んだ説明によると。

先日訪れた戦場跡にて売れそうなものを物色していたところ(火事場泥棒……というキューの感想は黙殺された)、とても高価そうな鎧を発見した。
全てのパーツが揃っているそれは多少の傷みはあったが丁寧に手入れされており、年季の入っていそうなところが古美術品として売れそうだ、とシンは大喜びで鎧を持ち帰ったという。
が、問題はそれがただの鎧ではなかった、ということだ。

「まさかお前、デュラハンを鎧ごと拐ってきたわけじゃないだろうな」
「そうだったらさすがに気づくさ。
ああでも正体としちゃ似たようなもんかな……
もしくはミミックを箱ごと持ってきちゃったみたいな……?」
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