狼男が恋をした(仮)

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第四章

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 それは日ノ本に来たばかりの頃だった。
荷ほどきを手伝ってくれていた隣の家の子は、コンビニという所に行ってくると言ったきり帰ってこない。
黙々と作業は続けていたけれど、それも疲れてしまった。
だから、ちょっとだけと自分に言い訳して外に出てみようと思ったのだ。

 特に目的もなし、景観を一通り見たらすぐに戻ろうと思っていたのだ。
なのに、似たような灰色の道路に迷い、信じられないくらいの人の流れに押し潰されそうになり、あれよあれよと言う間に現在地はすっかり分からなくなってしまった。

 日ノ本は地面が灰色だし、時折暴力的なほどに派手な色が視界に殴り込んでくるし、なんて目に優しくない世界なのだろう。
来て早々にやっていける自信が薄れていく自分の鼻腔に、ふわりと薫るものがあった。
丸めていた背を伸ばせば、映るのは見事に咲き誇る桜だった。
優しく風に揺れるピンク色に、おお、と感嘆の声が漏れる。
留学先に日ノ本を選んだ理由の一つが、現地の植物を見てみたかったからだ。
自分達の習性にはこれらが必要不可欠になる。

 サクラ、とこちらでは呼ばれているその木は、故郷にもあるがこんなに見事な花は咲かせない。
風に揺られて一つ、二つと落ちてくるピンク色を手のひらに乗せてしばらく眺めていたが、落ちてくるのは散らされた花弁だけと気づいてふと好奇心がうずいた。

 額ほどまでの漆喰の壁は一見立ち入ることを許されないかに見えたが、数メートル離れた所に戸口が備え付けられていた。
あれなら不自然なく木に登れる。
もっと間近で見たい。
彼女には一旦発生したその感情を収めることは難しかった。

 五枚の花弁が均等に並び、更に濃いピンクの雄しべと雌しべは中央で仲良く寄り添っている。
形状を、感触を一通り確かめて満足して、自分が桃色の世界に包まれていることに気づいた。
視界いっぱいに埋め尽くされた花弁は差し込む日差しをちらちらと反射して、まるでそのものが輝くような世界を作り出していた。
丸い目を見開いてその光景を焼きつけた彼女は、綺麗、とその単語だけを心に浮かべた。

 そんな日常から離れた景色の中にいたからだろうか。
時折見える空の隙間から蜜を吸わんと突っ込んでくる小鳥の他に、ふと気配がした。
今まですれ違ってきた日ノ本の人間たちとは違う、異質な存在。
なにがいるのか、と身を乗り出した時に、乗っていた枝がみしりと嫌な音を立てて――

 以下、割愛。

 一連の出来事が過ぎ去った後、彼女は興奮ぎみに居間に飛び込んだ。
手には彼が落としたのだろう、ニットの帽子を握りしめて。

「明亜、まだ慣れてないんだから出かけるならあたしが一緒に」

 目を輝かせ、頬を紅く染めて。
とうの昔に帰宅していた隣人に向かって、途切れそうな息を吐き出しながら叫んだ。

「つばさちゃん、わたし、下僕にしたい子ができた!」





 魔女。
薬草や呪いの知識を持って陰から人間の生活を支え、時に支配してきた存在。
己が内包している魔力を使用して魔法を使う事もできる。
箒で空を飛ぶ、鍵無しで施錠された扉を開ける、そして――蛙や蝙蝠などの動物を使い魔として操る、など。

「鈴木さんは魔女だよ。
ホームステイはしていないけれど、隣の家で瀬野さんが補佐役をやっているんだ。
いわば鉄也くんとみつるみたいな関係ってことだね」

 鈴木さんが鉄也に衝撃のお誘いをかける前の事。
父さんがさらりと口にした事実に、ぼくの意識は宇宙へと旅立った。
どうせならこのまま金星辺りまでトリップしていたかったが、正面に座る野村部長が手を叩いたことで残酷な現実に引き戻される。

 鈴木さんの傷害事件の事情を話すために、ぼくは父さんと部長に呼び出されて病院の小部屋に来ていた。
折り畳み式の長机に、向かい合っているとはいえ三人の男が着席するとぎゅうぎゅう詰めの小ささで、ぼくは捕食モードの狼男を止めるのとはまた違った精神的疲労を感じていた。

「結論から言おう。
先日小林君が戦った河童、あれと同グループの日ノ本産モンスターが鈴木さんを襲ったと我々はみている」

 眉間をぎゅっと寄せ、深く息を吐いた部長が語った見解に、事情を話し終えたぼくはえっと声を漏らした。

「モンスターが関係あるんですか? 
てっきり、不審者に襲われたんだと思ってたんですけど」

 長い事喋っていたものだから、渇いた口をまた開く。
父さんに手渡された紙コップにはウォーターサーバーから汲まれたらしき水が入っていたので、ありがたくいただくことにした。

「こうも立て続けに留学生が襲われているんだ、繋がりを感じざるを得まいよ」

 そうして水を口に含んだ途端、部長のこの言葉である。
吹き出しそうになった水を唇の内側でせき止めているところへ、冒頭の父さんの宣言が追い打ちをかけてきた。

「目的はやっぱり危害を加えることによる追い出しかなぁ……なんだかもうひとひねり加えられてそうな気がするんだけど」

「鈴木 明亜ほどの魔女が正面そうやすやすと襲われたりするかというと疑問を感じざるを得ないのですが。
むしろ不意打ちの得意なモンスターと考えれば、犯人の手掛かりにもなりうるか・・・・・・?」

 たっぷんたっぷんに水を詰め込んだぼくの様は自分のことながらさぞかし滑稽だったが、そんな餌を頬袋に詰め込むハムスターの物まねは完全にスルーされて父さんと部長の話し合いは続く。

 なんとかリバースすることなく水を呑み込み、つんと痛む鼻をつまみながらぼくははたと気づく。
鈴木さんが魔女ならば、人間ではない訳で、狼男の鉄也が恋をしても統括部が決めたルールには抵触しない!

 今までの苦悩はなんだったんだ、いやでも良かったな鉄也、と机の下でガッツポーズをとっていると、話し合いを一旦止めた父さんが声を掛けてくる。

「時間を取らせて悪かったね、みつる。
もう聞きたいことは聞けたから、鈴木さんと鉄也くんの様子を見に行ってきたらいい」

「あ、うん」

「あと二人がまた襲われる可能性が大いにあるから、見張っててくれると嬉しいなぁ」

「うん。・・・・・・うん?」

 ようやく自由になったと解放感で満たされた心が、勢いに任せて了承ととれる言葉を返してしまう。
飛び出した返事は残念ながらキャンセルできなかった。





「おまたせ。待った?」

「ううん、今来たところ」

 ショッピングモールの入り口。
金属の輪が奇妙に組み合わされたオブジェは、地元の待ち合わせスポットとして有名だ。
その真ん前、ではなく、やや距離を置いた植え込みの側で、ぼくと瀬野さんは合流した。
賑わう人達の中にクラスメイトがいて、からかわれたりしないだろうか、今のやり取りはあきらかにデートっぽい、と脳裏をよぎる。

「なにきょろきょろしてんの。
明亜はまだ服選びに没頭してるだろうから、来てないわよ」

 しかし瀬野さんは目の前の問題に集中しているらしい。
僕が気にしているのはそこじゃない、と言えないくらいには真剣な目だった。

 お買い物にいそしむ主婦、お昼のヒーローショー目当てではしゃぐ少年、そして今日は休日だ。
人ごみを学生たちがかなりの割合を占めていた。

「・・・・・・あの中の誰かもモンスターなのかもしれないんだよね」

「誰か、っていうより何割か、っていった方が正しいと思うわ。
あたしだって狼男の血筋がこんな間近にあるなんて思ってなかった」

 ぼくの視線につられてモールの入り口を見渡していた瀬野さんは、いつものやる気のなさそうな猫背で呟く。
とても遠い目をしていた。

 鈴木さんの補佐役として、ぼくの後に瀬野さんも見張り役を頼まれた。
ポケットには二人それぞれに渡された携帯が入っている。
鉄也達がピンチの時に登録してある番号に掛ければ、誰か出なくてもエージェントが駆けつけてくれるらしい。
被害が及ばない距離で自分たちの安全を確保するようにとは言われたが、だったらこんな危険なこと任せないでほしい。

彼女も魔女だしちょうどいいから親交を深め合うといいよ、と言った父さんを少し睨んでしまったがぼくは後悔していない。

「魔女、っていうより呪い師っていった方がぽいかも。
占いとか、ちょっとしたことしかできないし」

 そう言って黒のぼんぼりがついたポシェットから取り出したのは、タロットカードのケースだ。
中央にでかでかと雑誌のタイトルが書かれているあたり、付録だったのだろう。
ぼくと同じく渡された携帯がいっしょくたに入れられていたが、いいのかそんな雑な扱いで。

 見張りを任されてから、少しお互いの詳しい話をした。
瀬野さんと鈴木さんの立ち位置は、ほとんどぼくと鉄也の立ち位置と同じらしい。
違うところといえば、鉄也が鈴木さんを獲物(比喩表現でなく)として捉えていることに対して、鈴木さんの方は鉄也を下僕、つまり使い魔にしたいと考えていることだろうか。
いや、恋心をこれまでの物騒な経験と間違えている点は全く変わらないが。
厄介なことこの上ない。

「ちなみにぼく、魔女に関してはよく知らないんだけど、その、下僕にするっていうのは」

「下僕の使い方は魔女によって変わるんだけど。
伝言やお使いをさせる、自分が入れない場所へ行かせて偵察させる、自分が作った薬の実験台にする、とか」

 どの用途目的で下僕にしたいのかはさすがに聞いていないそうだ。
それはしょうがない、とぼくは少し顔色の悪くなった瀬野さんを見て察した。

「・・・・・・ごめん」

 ふいに告げられた謝罪に、ぼくは戸惑い無意味に両手をわたわたとさ迷わせる。

「え、いや、別に瀬野さんが謝ることじゃ! むしろこちらこそ鉄也がごめん、っていうか」

「そっちじゃないわ。お互い様だし」

 花壇のへりに座った瀬野さんの表情はうかがい知ることができない。
そろえた白い両足がスカートから覗いて、むしろそちらを注視してしまいそうだったのでぼくは瀬野さんの隣へ座る。

「前に、あんたに言ったでしょ。何しにここに来てるのかって」

 記憶を手繰り寄せ、ああと思い出す。
鈴木さんに誘われ、鉄也と園芸部にお邪魔した時のことだ。

「あれ、あたしの八つ当たりも入ってた」

 外国の、自分よりも強いモンスターに振り回されて、自分は今までの生活を保つために必死で。
ぼくと同じ状況だったのならば、あの言葉は自分にも向けられたものだったのだろう。

 オブジェの前で学生が通話して笑って、ベビーカーを押すお母さんの集団が談笑して、もはや何人いるのかも分からない人の群れで。
ぼくの一番近くに座る瀬野さんの身体は、とても小さく見えた。

 なんと声をかければいいか、ためらってしまう。
だって、ぼくだってそうしてしまうと思ったからだ。
思い通りにいかなくて、苛立っているときに自分と似たような立場の癖にへらへらしてる奴がいたら。
ん、とふともう一つ思い出す。

「使い魔にしたい、ってことは、ペットのようなものって捉えていいのかな」

「そういう用途もあるわ」

「ということは、飼うための知識も仕入れたはずだよね」

「使い魔を無意味に死なせるのは魔女としては三流らしいわよ」

「・・・・・・あの玉ねぎドレッシングは・・・・・・」

 無知な飼い主が犬に玉ねぎを食わせてあわや殺しかける、そんな状況だってある。
そんな一縷の望みをかけて問う。
二人の間に沈黙が広がる。
また周囲の喧騒が大きくなった。

 なにか言ってよ!

「狼男とは、知らなかったんじゃないかしら」

「そうだね、分かんないよね腐通は」

 数十秒かけて苦悩の表情で吐き出された瀬野さんの台詞が、あまりに希望にすがっているような響きだったので、ぼくは全力でのっかることにした。
これは深く掘り下げても誰も幸せにならない話題だった。

「とりあえず明亜にはあたしが今日ついてきてることは知らせてある。
人間らしく振る舞うようにこっそりアドバイスできるようにって名目で」

 あからさまに話題は変えられるが、素知らぬ顔をする。
確かに下手に尾行してバレるよりも、別の目的を提示してついていく許可をとった方がリスクが少ない。
なるほどと感心していると、瀬尾さんがあ、という声を発した。

 金属のオブジェ、もとい待ち合わせスポットへ歩いてくる少女がいる。
淡い紫のワンピースに白のカーディガン、瞳と同系色の髪留めは控えめでかわいらしい。
学生服とは違う新鮮な格好に、ほう・・・・・・と声を漏らしてしまう。
きょろきょろ首を動かしてお相手を探す鈴木さんに、はたと気づく。
オブジェとぼくらがいる植え込みは、距離があるとはいえ見つけられてしまう位置にある。
このままここにいればまずいんじゃないか?

「大丈夫よ、話してあるから」

 ぼくの不安を先読みしたのか、瀬尾さんが冷静な顔で言い含める。
と、まるで見計らったかのように鈴木さんがぱちりとこちらに視線を向けた。
あ、と思う間もなく、鈴木さんはぱぁと顔を輝かせ。
力強く親指を立てた。
いっそ誇らしげに。

「あれは、どういう意味?」

「『明亜と小林くんを見張るという名目で 篠原くんをデートに誘うので協力してほしい』と言ってある」

 既に尾行がバレる事態も対策済み、と。
女子って怖い、ぼくは胃の辺りがぞわっとした。

「というかまだ待ち合わせまで三十分はあるでしょうに」

「ああ、それは大丈夫」

 腕時計を見下ろし、やれやれとため息をつく瀬尾さんにぼくが答える。
よほど楽しみだったのだろう。
長い時間をかけて念入りに整えた身嗜みだろうに、鈴木さんは折りたたみの手鏡を取り出して変なところがないかチェックをしていた。
そこへ暗雲が覆い被さるようにして影が現れる。
顔を上げれば、鈴木さんの目の前には緊張で顔が強ばっている狼男がいた。

「顔怖いし登場の仕方考えろ!」

 思わず小声で突っ込んでしまった。
大柄な体格なのだからそう静かに距離を詰められては恐怖以外の何者でもないだろうに。
しかし鈴木さんは怯むどころかぱぁと顔を輝かせて小さく手を振った。
愛(仮)の力ってすごい。

「夜明け前から叩き起こされて日ノ本で変に見えない服装と髪型その他諸々を教え、寝付けずにそわそわする奴をスルーしてなんとか一時間の睡眠をもぎとったたのはぼくです」

「そのうっすら見える隈でなんとなく察してたわ、おつかれさま」

 隈だったら君にもうっすら見えてるよ、とは言わずに眼前で繰り広げられる会話に集中する。

「待ってないな?」

「ううん、今来たとこ・・・・・・って、えっと、うん?」

 デート開始数秒で破綻している会話にぼくは額に手を当てた。
鉄也が何故そう言ったかは分かる。

「じっとしてたら体温は下がっていく。おまえはまだ温かそうだ」

「すごい、よくわかったね。うん、待ってないよ」

 男女の待ち合わせ定番のやり取りをあっさりと裏切られたにも関わらず、鈴木さんは鉄也の洞察力、もとい狩りの経験から来る獲物の状況判断に手を合わせて驚く。

「めっちゃいい子じゃん」

「思い出しなさい、いい子は下僕とか言わない」

 男ってほんとに騙されやすいわね、と呆れる瀬野さんは自分にも言い聞かせているようだ。
そんな会話を交わしていると、鉄也がぼくらに気付いた。
こちらは言い訳もなにも告げていないので、見るまに目と鼻の付け根に皺がよる。
犬が威嚇する時の顔にそっくりだった。
鉄也の目線と表情でぼくらの状況に気付いたらしい。
鈴木さんは目線を動かしたあと、鉄也の腕をとった。

「行こう、小林くん。
前に連れてきてもらった時、ここすごく楽しかったんだよ!」

 そっと、しかし離さないようにしっかりと、鈴木さんの手が、鉄也に触れた。
次の瞬間、鉄也が爆発した。

「・・・・・・! ・・・・・・? ――!」

 なにを大袈裟に、と言われるかもしれない。
しかしお年頃の男が女の子にどこかしらを触られるというのは学生生活で一、二を争う大事件である。
対象が好きな子であれば尚更だ。
言葉になっていないが、なにか言いかけて失敗している鉄也の口は開いて閉じてを繰り返す。
雪国出身の白い肌が災いして、赤くなっていく様がありありと分かる。
細められたアイスブルーの不機嫌さはどこへやら、目は真ん丸に見開いて混乱と戸惑いその他諸々をありありと写し出していた。
もちろん一番多くを占めるのは喜びだ。

 そしてそれらを一瞬で引き起こした鈴木さんはその変化に全く気づかず、鉄也をこの場から無理矢理引っ張っていった。
去り際にぼくらに向かってもう一度親指を立てるのを忘れずに。

「じゃ、行きましょうか」

 更にそれらの一切をスルーして平然と立ち上がる瀬野さん。
ポシェットを肩にかけ直し、すたすたと歩いていく様に、ぼくは呆然と見送るしかなかった。
その後すぐ急かされて追いかけたけれども。

 女子って怖い。
特殊な力なんてなくても簡単にぼくらを殺せる。




 総人口は少ないとはいえ、この町で最大級のショッピングモールだ。
尾行するのが厄介なほどには建物内も人で溢れていた。

「今日は映画というやつを見よう」

「えいが」

 鈴木さんが少し自慢げな顔で一階案内板の横に並べられた映画の宣伝ポスターを指している。
この人混みの中、会話内容までは聞こえないがどんなことを話しているか予測くらいはできる。
男女が観るものといえば恋愛映画、なんて相場は決まっているものだが、さてどうするのか。

「先回りするわよ」

 なにを観るか既にわかっている、とばかりに瀬尾さんがエスカレーターへと足を踏み出す。
慌ててそれを追いかけ、何を観るか知っとかなくていいのか、と問えば。

「一応占いでどんなことが起こるかある程度予想はついてる。
まああの顔を見ればなに考えてるかは大体分かるけど」

 せりあがるステップから少しだけ身を乗り出せば、まだ映画の宣伝を覗きこむ二人の顔がちらりと見えた。
視線の先にはファンタジー映画。
CGをふんだんに使った幻想的な生物たちが売りのようだが、日常でけして見ることのできないその世界観に向けられた眼差しに浮かぶのは未知への憧れではない。
懐かしの故郷を思い出している郷愁だ。
たぶん二人が見るのはあれだろう。
というか、ポスターにはドラゴンとかそんなのもいるんですが。
実際いるの? 少年心がうずいたぼくは帰ったら鉄也に故郷について少し聞いてみようと決意した。

「二人が行く可能性が高いのはゲームコーナー、フードコート、雑貨屋ってところかしら」

挙げられた三点はそれぞれ階層がバラバラだが、瀬尾さんの足に迷いはない。

「じゃあ、鉄也たちが次に行くのはそこなの?」

「いえ。先に一番危険度が高いところを解決しときたいの」

 そこで予想していることが起きれば、騒ぎになるどころじゃないからと。
連れてこられたのは三階、ゲームコーナー。
取り出し口にお菓子を落とそう、キャラクターのおしゃれカードを取ろう、スロットでコインを獲得しよう。
躍起にならない者は誰もいない、ノリのいい音楽や誰かがパンチを放つ掛け声、はたまた馬が駆ける蹄の音でそこは今日も騒がしかった。
ここに来て鉄也は大丈夫かな、と耳を塞ぎながらぼくは顔をしかめる。

「耳、痛いの?」

「いや、大丈夫」

 満月でないぼくでも辛いこの騒音だが、鈴木さんの手前行こうと言われれば鉄也は行く。
そちらを優先せねばとちょっぴり見栄をはって答えたが、瀬尾さんはならば問題はないとノーリアクションでゲームコーナーへ踏み込んでいった。

 それを慌てて追いかけ、派手な色彩の床に一歩、踏み込んだ瞬間。

 並ぶクレーンゲーム、その一番手前に設置されたガラスケースの景品が一斉にこちらを向いた。
ざざざと。音がはっきり聞こえる勢いで。
偶然その様子を見ていた幼子がひきつった声を漏らして泣き出す。

「明亜の魔力につられてるんだわ。これ、動かないように説得しないと」

「え、全部を?」

「生き物の形してる景品、全部」

 可愛らしいはずの手のひらサイズで山積みになるねこのマスコット。
それらが数十体、下敷きになっているものまでこちらへ視線を向けているだけで既に怖い。
そこへ更に瀬尾さんのこの台詞である。
恐る恐る視線を奥へ向ければ、二列に並ぶクレーンゲームの景品は、お菓子の詰め合わせやアニメプリントの万年筆といった変わり種以外はほぼ全てぬいぐるみだ。
ゲームに出てくる美少女のフィギュア、そうだあれも生き物の形だから範囲に入るのか。
今少し首が揺れたのを目にして、ぼくの腰は完全に引けた。
見事なほどのへっぴり腰である。

 瀬尾さんがクレーンゲームのディスプレイに近づき説得をしている間、ぼくはそれを怪しまれないように当たり障りのない会話を繰り広げる。

「動いたらあんたたちが廃棄処分になるのよ、そこらへん考えてる?」

「予想外の方向に転がると殺意沸くよねぇ」

「アピールしたってあんた達があの子の所へいく確率は限りなく低いんだから、諦めなさいな」

「そうそう、執着心をなくした方が逆に上手くいくよね」

 品定めをしてクレーンゲームに燃える彼女と、それをなだめる彼氏。に、見えているといいのだが。時折瀬野さんがうっとおしそうにこちらを見てくるが、ぼくがそばで立って喋ってなかったら君はただの危ない人たぞ。
諦めてほしい。

 それにしても瀬尾さんはきちんとどういう事態が起こるか予測して対処にかかっている。
もちろん魔女としての能力もあるだろうが、ぼくもなにか役にたたなければ、という思いでさりげなくゲームコーナーを見渡す。
狼男の視点で、人間にとって危険になりそうなこと。

「瀬尾さん、あれもどうにかした方がいいかも」

 景品達への説得が終盤に入った頃、ちょいちょいと肩をつつく。
指をさした先にはパンチングマシンがあった。
画面の前にはところどころスポンジの剥げた棒状のターゲットが設置されている。

「あれ、たぶん鉄也やるよ。そして壊す」

「小林くん、人間としての生活はできてるじゃない。やるにしても加減するんじゃないの?」

 あまり人気のないそれを一瞥する瀬尾さんの言い分はもっともだ。しかし、ぼくは否と首を振る。

「男って、かっこいいところ見せたい生き物なんだよ・・・・・・」

 今のところ、デートへの誘いや映画の選び方など、鈴木さんにリードしてもらっている状態だ。
鉄也は少しでも頼れるところをアピールしておきたいだろう。
そこへ腕っぷしを数値化して分かりやすく示してくれるこの機械ときたら、絶対にやる。
全力でやる。

 漢を語るぼくに対する瀬野さんの眼差しは冷たかったが、理解はしてくれたようだ。
少し考えて、ゲームコーナーから出ていった。

「あの、どこへ?」

「ちょっと待ってて」

 特に説明もなく姿を消した瀬野さん。
指示だけもらってはその場から動くこともできず、ぼくの中でもやもやとした感情がたちこめてくる。
これは覚えがある。
一体全体ぼくはなにをやっているのだ、という自問自答だ。
そもそも休日に尾行みたいな、他にもっと、普通の学生らしいなにか、と気持ちばかりがぐるぐると焦る。
そんな時、脳裏にふと疑問が浮かび上がった。
ぼくと瀬野さんに共通点が多いなら、もしかして。

「おまたせ」

 しかしその疑問を煮詰める前に、瀬尾さんが戻ってきた。
手には近くの雑貨店で買ってきたのだろう、ロゴの入ったビニール袋が握られていた。
とりだしたるはマジックとノート、『故障中』と書いて一枚破き、パンチングマシンの画面に貼り付けるだけ。

「ひとまずこれで」

 雑だなぁ、と真っ先に脳裏をよぎったが、じゃあ他にどうすんの、と冷たい眼差しも同時に浮かんできたのでぼくは口をつぐむことにした。

「あとは二人が映画から出てくるまで他に危険な箇所がないか見回りましょうか」

「あ、待って瀬野さん」

 用はなくなったとばかりに駆け回る子供の間をすり抜け、踵を返す瀬野さんを慌てて追いかけて、ぼくは呼び止める。床の幾何学模様の端に、ピンクのヒールが止まった。

「ここらへんでお昼でもとらない? 狼男についていくなら体力つけとかないと」




 食事処はちゃんとしたレストランだってあったけれど、なにかあったときすぐに抜け出せないから、という理由で一階のフードコートに足を運んだ。
休日で昼食時というのもあるだろう、ここは特に親子連れや若者が多かった。
すれ違う人に肩をぶつけたり、突進してくる子供が膝に直撃したりしながらやっとの思いで席を確保する。

「あんたって狼男のくせにわりとどんくさいわね」

 容赦ない言葉を放つ瀬野さんの両手には水の入った紙コップが握られていた。
あの人波をすり抜けてちゃっかり持ってきたらしい。
ほうほうのていで席にもたれ掛かるぼくとは対照的に、どこまでもスマートだ。

「瀬野さんは、人間でない生まれって、どう思ってる?」

 注文した食べ物ができたら音が鳴る仕組みになっているブザーを手のひらでいじくりながら、正面の魔女に問いかける。
瀬尾さんはコップを傾ける手を止め、訝しげにこちらを見た。
切れ長で眼力のある眼差しはこちらを睨んでいるようにも見える。

「・・・・・・?」

「えっと、その、ぼくの父さんはちょっと特殊な職だから、小さいときから事情は知ってたんだけど、他はそうでもなかったのかなーって」

 ぼくと同じように、普通の人間に憧れたりもしたのかな。
先ほど浮かんだ疑問を伝えた。

 切り出し方がいきなりすぎたかな、ああその前に水のお礼を言ってない。
ぐるぐる回る思考をよそに、瀬尾さんは目線を少しだけ右上にさ迷わせて、答えてくれた。

「両親は魔女とは全く関係ない仕事についているわ、生活も人間と変わらない。
知らされたのも私が小学校を卒業したくらいね」

 淀みなくすらすらと流れる解答は、まるで事前に用意されたもののようだった。
こんなところもスマートか、と内心唸っていると、でも、と瀬尾さんは一つ間を空けた。
そうして再び放たれた言葉は、人混みの喧騒で埋め尽くされているはずのぼくの耳によく響いた。

「憧れたわ。普通と違う立場というものを」

 視線はぼくの方を見ていない。
どこか遠いところを見ているような言葉は、実体を持ったようにぼくの中にすとんと落ちてきた。
フードコートの仕切りなんてあってないような物だ、少し身を乗り出せばそこにソフトクリームを頬張る幼児の姿も、騒ぐ女子高生の喧騒も分かるというのに、この両手で抱え込める小さなテーブルだけがぼくらの世界だった。
かつてぼくが誇らしげに自分たちのことを発表した時のように。

 あの時、先生に止められた後、父さんはどうしたんだっけ。
茶化すにはあまりにも真剣な空気でどう返せばいいか分からず、結局ぼくは調理完了のブザーがなるまで間抜けに瀬尾さんを見つめるしかなかったのだった。




 味の濃いオムライスを適当に腹の中に詰め込んで、他に生き物の形をした品物がありそうな場所を順に回っていく。
キッズコーナー、雑貨店、玩具売り場、エトセトラ。
映画が終わり、鉄也たちが戻ってくるのを待つ頃にはぼくと瀬野さんはへとへとになっていた。
説得とそのフォローを続けた結果、ぼくらの間に長年戦ってきた戦友のような絆さえ芽生えつつある。
ぼくの一方通行かもしれないが。

 映画館特有の真っ黒なフロアからエスカレーターで降りる鉄也たちの姿を認識した時、戦友は膝から崩れ落ちた。

「映画館の土産物っ!」

 ゲームコーナーの景品、そして休憩後雑貨屋、玩具屋のぬいぐるみや人形を説得して回ったのだ。
大衆の中で無機物に話しかけるというプレイはなかなかに堪えたのだろう。
それが報われなかったならば、なおさら。

 鈴木さんの手には映画で登場したらしきぬいぐるみが抱かれていた。
フォルムは熊だが毛皮の模様がつぎはぎだったりしたのでひょっとしたらファンタジー的な何かの生物かもしれない。
そしてガラス玉で作られている濁った目がギョロリとこちらを見たのを発見し、ぼくらの努力は無駄だったことを悟った。

「今、動いたね」

「もうあれは帰るまで明亜から離れて動かないことを祈るしかないわ、そういうおもちゃで押し通せばなんとか」

 自分に言い聞かせているらしい瀬野さんの肩に手を添え、ひょっとして彼女の家では色んな人形が動き回っているのかと想像してしまった。映画でファンタジー気分に浸る必要がどこにあるのか。

「いやでもほら、鉄也たちゲームコーナーへ行くよ、頑張りは無駄じゃなかったよ!」

「ちょっと・・・・・・先に行ってて」

 あの羞恥プレイをかました後に戻る勇気を捻り出すから、と瀬尾さんはエレベーター脇のソファに座ってしまった。
真っ白に燃え尽きた戦友の姿に涙をこらえざるを得ない。

 犠牲は無駄にすまいと二人の後を追う。
時折鈴木さんが抱えているぬいぐるみを撫で、鉄也がそれを面白くなさそうに睨んでいる。
布の塊に嫉妬する奴の心情が見ているだけでありありと浮かんできそうだ。
というかお前、ちゃんとそのぬいぐるみ買ってあげたんだろうな? 結構なポイント稼ぎどころだぞ! 
・・・・・・いや、影に隠れてこっそり財布確認したな、あれは出してるな金。

「ぬいぐるみ、じゃまだろ。かばんいるか」

「かばん?」

「折りたためる便利なやつが向こうで売ってた」

「え、ほんとう? じゃああとで見に行ってもいいかな」

 ぶっきらぼうだが楽し気な会話が細々と聞こえてくる。
内容は完全にぼくの受け売りだが、役に立ったならよしとしよう。
思わぬところで人間ってすごいだろうキャンペーンが上手くいっていたので、誇らしげに鼻の下あたりを擦っておいた。
ぼくとそのかばん、なんの関連性もないけど。

 ゲームコーナーへ向かう途中で通りすぎるレストラン街で、鉄也が鼻を鳴らした。
足が遅くなったのは以前訪れた甘味処の前だ。濃厚なクリームの乗ったパフェのディスプレイに、ふらりと進行方向がずれる。
が、鈴木さんが楽しそうにゲームコーナーへの足取りを止めないことを察知し、あわてて涎を拭い歩みを修正する。

 十メートルほど離れて後をついていくぼくの心境はもうすっかり子供が心配でついていく親のそれだ。
あるいはテレビの企画で様々な誘惑に耐えて目的をこなせるか飼い犬を見守る素人さん。
あの『気をとられてなんかいませんよ』と首をぷるぷるしてキリッとした顔を作る一連の動作を最近テレビに映ってたコッカースパニエルがやってた。

 何軒も並ぶレストラン、そこから漂ってくるあらゆる匂いにふらふらよれよれと何度も負けそうになる鉄也。
そこまで我慢しなくても、いい時間なんだから昼御飯に誘えばいいのに。

「つばさちゃんに聞いたんだけど、ゲームコーナーにはお人形さんたちがたくさんあって・・・・・・どうしたの?」

「ナンデモナイ」

 くるりと振り返ると白目を向き瀕死の男子がいたら怖いなんてもんじゃないだろう。
事実すれ違う人たちが鉄也の表情にすわゾンビかと距離をとった。
いいえ、そいつは狼男です。

 ところが鈴木さんはそんな怖いとしか言い様のない鉄也の姿を見て、穏やかに微笑むばかりだ。
愛の力なのか、この後に下僕にするのだから関係ないと思っているのか。
いや、それも魔女の愛情表現なのか? 
鉄也のあわやカニバリズムかとつっこみたくなるような恋の始まりといい、モンスターの恋愛観は分からない。

「わ、すみません」

 と、考え込んでいる間に二人がゲームコーナーの方へ進んでいってしまった。
女子高生の後頭部に阻まれ、鉄也達の姿が見えなくなる。
肩にぶつかりそうになった男の人へ謝罪し、人ごみの間をすり抜けながらぼくはレストラン街を抜けた。

 ゲームコーナーで遊んで、それからお昼を食べるのか。
頼むのはたぶん肉料理かな、涎や肉汁で服を汚さないといいけど。
など、これからの展開を頭の隅で考えていた時だった。

 どおん!

 空気を震わす轟音と共に、床が揺れた。
人の波は一瞬静かになったかと思うと、なにが起きたかとざわめき出す。

「ここにいたら危ないぞ」

「逃げた方がいいんじゃないか」

 誰かが言った、その言葉を皮切りに。
波はパニックを起こして激しく暴れだす。

「ちょ、うわ」

 音のした方と反対側へ、向かい来る力は強く、押された身体が一瞬宙に浮くほど。
しかしぼくはそのまま流される訳にもいかず、なんとか隙間に自分をねじ込んだ。

 なぜって、この震動の原因が大体分かっていたからだ。
もしパンチングマシンに貼った紙が剥がれていたら、そしてそれを鉄也が見つけてやりたくなってしまっていたら。

 以前公園で目の当たりにした狼男の攻撃力を思い出して、顔から血の気が引いていくのが分かる。

「おい、なにすんだ!」

「押さないでぇ!」

「ごめんね、ごめんなさい」

 むりやりさかのぼるぼくに罵倒が飛ぶが、謝罪を口にしつつ進み続ける。
誰かのバッグに腹を殴られ、足の隙間を子供が通り、それでもタックルするように道をこじ開ける。
身体のそこかしこに痛みが増えていく、たぶん痣になっているだろう。
体育の成績はそんなに良いわけでもないのに、どうしてこんなことしなけりゃいけないのか。

 騒ぎにしたくないから? 
普通の生活を送りたいから? 
もうそんなこと、考える余裕もなかった。

 たった数十メートルの距離を一歩一歩ひたすら踏み出し続けて、ようやく視界がひらけたと思ったらそこはゲームコーナーが目の前だった。

 昼前は子供やカップルで賑わっていたのに、そこはがらんどうに感じるくらい人がいなかった。
近くの階段からまだ逃げ切れていない人や警備員の声が響く。
入り口に設置されたUFOキャッチャーの隙間から、もくもくと煙が出ている。
出火場所は、その奥。
ぼくが危険かも、と言った所だ。
心臓が早鐘のように鳴り響く。
呼吸を懸命に落ち着けて、震える足をむりやり動かして、キャッチャーのへりに手を掛けて顔を出せば――

「そら見ぃ、だから言うたやろ! こないなもん、俺の手にかかれば大したことないて」

「・・・・・・」

「あ? なん、せやな。ちょおっと壊してもうたな」

「・・・・・・」

「分かったて、悪かった! ここまで粉々になるとは思っとらんかったんや」

 硬い金属でできているはずのゲーム機は外側が大きくへしゃげて、黒っぽい煙を吐き出している。
時おりバチバチと電気が漏れているから、コードも何本かちぎれたのだろう。

 その前に立つ二人組が、なにやら言い争っている。
内の一人は以前に見た顔だ。軽薄そうな顔つきに染めた金髪、頭頂部を注視したら怒られた。

 公園で鉄也と死闘を繰り広げた、日本産の妖怪。
会話というよりもそいつが一方的に喋っている内容で、破壊されたパンチングマシンが奴の仕業であると理解できる。
理解できるが、なぜあいつがここにいるのか? 
今は妖怪とモンスター、複雑な事情で緊張状態にあるんじゃなかったのか? 
なんであんな派手な真似をする?

「あんたも、ある意味日本産のモンスターよね」

 背後から声がかかる。休憩していたはずの瀬野さんだ。
柔らかい感触と、耳に吹きかかる冷たい息。
思いがけぬ密着感が頭を埋め尽くす中に意図の分からない話題を振られ、更にごちゃごちゃになる。

「妖怪連中からあんたに声が掛けられなかったのは、どうしてだと思う?」

 近い近いと心の中で唱えていると、ポケットに手が入り込む。
いよいよもってどう動いたらいいか分からず、固まっていると、その手と身体は案外簡単に離れていった。
同時に軽くなるポケット。
何が入っていたかって、緊急用の携帯だ。
はっと振り向いた。

 相当な混乱だったろうに、こちらを見据える瀬野さんの頭髪や衣服に乱れはない。
スマート過ぎて背後の人間たちの喧騒がいっそ不自然だ。

 まるで魔法でも使っているかのように。

「あんたがモンスター留学エージェントの身内だからよ」

 近づいてきた瀬野さんの姿と、ふわりと匂った甘い香り。
それを最後に、ぼくの意識は反転した。

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