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夢魔と人形

人間の反撃・2

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人工宝石の瞳、その膜一枚分。
たったそれだけの距離を空けて、突きつけられたのは剣の切っ先だった。

勢いのままに刺さるような間抜けはしなかったが、突きつけられなかった他の恋するゴーレム達も動きを止める。
剣という危険物に警戒したわけではない。
それを構える人間。
マッピー・マーフィーに驚いたのだ。

従業員用のエプロンを身に着け、かつ長剣を装備している職員は彼女しかいない。
なにより、ゴーレムに埋め込まれた人相識別システムが、正体を断定していた。

だというのに、恋するゴーレム達は目の前の人物に疑いを持たずにはいられなかった。
ウィル・オ・ウィスプやインキュバスのやらかしに地団駄を踏んで対処する姿。
仕事を手伝えば笑顔を浮かべてお礼を言う姿。
自分のことのように仕事の押しつけに怒ってくれた姿。
記録に残っているマッピー・マーフィーの顔はどれも感情豊かだった。
現実のゴーレムは彼女の表情を表現の参考資料として保管していたほどだ。

それが、今はどうだろう。
まだ子供の特徴が抜けきっていない彼女の顔に、表情と呼べそうなものはない。
口角も目元も眉の位置も、生理現象として最低限の動きしか有していなかった。

『どうして?』
「どうしてもなにもないでしょう」

自信満々に道を歩いていたが、自分が迷子なのではと気づいたような。
そうではないと言ってくれとでも言うような問いかけに、しかしマッピーはバッサリと切り捨てた。
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