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夢魔と人形
機械人形の苦悩・4
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口籠っていたことを本人にずばりと指摘され、マッピーはごにょりと唇を歪める。
ここでゴーレムは立ち止まり、体ごと後ろのマッピーへと振り返った。
光の反射でやけに輝く人工虹彩が、人間を捉える。
「マッピー・マーフィーの疑問は適切です。当方は解答として『当業務の実行権限を譲渡されている』と報告します」
「権限、を……譲渡……?」
「13時48分の会話ログより抜粋──『だからね、業者が来たら代わりに対応しといてくんない? 物受け取ってはんこ押すだけだから!』『指定作業の対処権限は当方に与えられていません』『大丈夫だって、そんな滅多なこと起こらないから!』『……権限を移籍。納品対応の実行者を種族:ゴーレムに指定します。予定外の状況が発生した場合の責任者を──』」
会話の内容を理解し、マッピーはあ然と立ち尽くした。
軽薄にゴーレムへ話しかける声は聞いた覚えがある。
先程会釈だけした職員の一人だ。
「これっ、仕事の押しつけじゃないですか! しかもまるきりゴーレムと関係ない業務の!」
「マッピー・マーフィーの心拍数の上昇を感知。深呼吸を推奨します」
「心拍が上がってるのは怒ってるからです! ゴーレムは腹立たしくないんですか!?」
ウィル・オ・ウィスプへ剣を振るったときよりも強い勢いでゴーレムへ食ってかかるが、マッピーの訴えの後に続いたのは、静寂だった。
怒鳴り声の反響が終わり、しん、と無音が支配する。
これにはゴーレムへ怒鳴るのはお門違いだと薄々自覚していたマッピーも黙るしかない。
相手が落ち着いたのを待って、美しい人工物の顔は言葉を紡ぎ始めた。
ここでゴーレムは立ち止まり、体ごと後ろのマッピーへと振り返った。
光の反射でやけに輝く人工虹彩が、人間を捉える。
「マッピー・マーフィーの疑問は適切です。当方は解答として『当業務の実行権限を譲渡されている』と報告します」
「権限、を……譲渡……?」
「13時48分の会話ログより抜粋──『だからね、業者が来たら代わりに対応しといてくんない? 物受け取ってはんこ押すだけだから!』『指定作業の対処権限は当方に与えられていません』『大丈夫だって、そんな滅多なこと起こらないから!』『……権限を移籍。納品対応の実行者を種族:ゴーレムに指定します。予定外の状況が発生した場合の責任者を──』」
会話の内容を理解し、マッピーはあ然と立ち尽くした。
軽薄にゴーレムへ話しかける声は聞いた覚えがある。
先程会釈だけした職員の一人だ。
「これっ、仕事の押しつけじゃないですか! しかもまるきりゴーレムと関係ない業務の!」
「マッピー・マーフィーの心拍数の上昇を感知。深呼吸を推奨します」
「心拍が上がってるのは怒ってるからです! ゴーレムは腹立たしくないんですか!?」
ウィル・オ・ウィスプへ剣を振るったときよりも強い勢いでゴーレムへ食ってかかるが、マッピーの訴えの後に続いたのは、静寂だった。
怒鳴り声の反響が終わり、しん、と無音が支配する。
これにはゴーレムへ怒鳴るのはお門違いだと薄々自覚していたマッピーも黙るしかない。
相手が落ち着いたのを待って、美しい人工物の顔は言葉を紡ぎ始めた。
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