40 / 129
花と触手
部屋の中、ふたり・2
しおりを挟む
「ほぎゃあ?!」
ぐちり。
触手が動き出す。
宙吊りにされているために視界は向けられないが、触られている側のミミックにはどこで動いているかが明確にわかってしまう。
濡れた感触と、生暖かい体温が這っている事実にぞわぞわとないはずの産毛を逆立てた。
「あの、テンタクル? なんで、そんなとこ、」
「花にはね、それぞれ意味があるのよ。人間たちがつけた勝手な妄想のようなものだけどね」
花言葉、っていうのよ。
1本、テンタクルが束から花を取り出す。
根本が白く、小ぶりな花を枝にいくつもつける薄桃。
名をハナミズキ。
「意味は『私の想いを受け止めてください』」
「ひ、」
1本、触手の先が宙吊りになったミミックのふくらはぎを舐めるように這った。
緑と白の特徴的な葉の間に咲く、白く小さな花。
名をオリヅルラン。
「意味は『子孫繁栄』」
「へっ、」
1本、テンタクルの指が逆さまのミミックの頬をなぞる。
寄りそい、睫毛の生え際まで見えそうな距離まで近づいた唇が、淫靡に形を変える。
すっと高く伸びた茎に、縦に連なった白い花。
名をチューベローズ。
「『危険な快楽』」
「…………!!!」
「ちなみにあなたがおまけでくれたこれは、『子宝に恵まれる』よ。
……ねえミミック、もう一度聞くわ」
もう片方の手でいじるのは、ドロップ型の内側に肉色の実を覗かせる瑞々しい果実。
名をイチジク。
ほう、と悩ましげに魔族は息を吐く。
それは貴様が叩きつけた挑戦状を言い値で買ってやる、という意趣返しでもあった。
「わたしに、この花たちを送る、その意味を理解したかしら?」
どざあ、とミミックの血の気が引いていく。
真っ赤になったり真っ青になったり、そもそも元から真っ黒なので変化はほとんど見てとれなかったが、彼はようやく悟った。
自分がよく考えずともセクハラぶっちぎりの意味を秘めたものを渡し、なおかつその相手はちょっと公共の場では言えない方法で他生物を自分達の繁殖に利用する(エロ同人御用達のモンスター代表格)テンタクル。
今の彼は大きく開いた口に放り込まれんとする、据え膳状態である、ということを。
ぐちり。
触手が動き出す。
宙吊りにされているために視界は向けられないが、触られている側のミミックにはどこで動いているかが明確にわかってしまう。
濡れた感触と、生暖かい体温が這っている事実にぞわぞわとないはずの産毛を逆立てた。
「あの、テンタクル? なんで、そんなとこ、」
「花にはね、それぞれ意味があるのよ。人間たちがつけた勝手な妄想のようなものだけどね」
花言葉、っていうのよ。
1本、テンタクルが束から花を取り出す。
根本が白く、小ぶりな花を枝にいくつもつける薄桃。
名をハナミズキ。
「意味は『私の想いを受け止めてください』」
「ひ、」
1本、触手の先が宙吊りになったミミックのふくらはぎを舐めるように這った。
緑と白の特徴的な葉の間に咲く、白く小さな花。
名をオリヅルラン。
「意味は『子孫繁栄』」
「へっ、」
1本、テンタクルの指が逆さまのミミックの頬をなぞる。
寄りそい、睫毛の生え際まで見えそうな距離まで近づいた唇が、淫靡に形を変える。
すっと高く伸びた茎に、縦に連なった白い花。
名をチューベローズ。
「『危険な快楽』」
「…………!!!」
「ちなみにあなたがおまけでくれたこれは、『子宝に恵まれる』よ。
……ねえミミック、もう一度聞くわ」
もう片方の手でいじるのは、ドロップ型の内側に肉色の実を覗かせる瑞々しい果実。
名をイチジク。
ほう、と悩ましげに魔族は息を吐く。
それは貴様が叩きつけた挑戦状を言い値で買ってやる、という意趣返しでもあった。
「わたしに、この花たちを送る、その意味を理解したかしら?」
どざあ、とミミックの血の気が引いていく。
真っ赤になったり真っ青になったり、そもそも元から真っ黒なので変化はほとんど見てとれなかったが、彼はようやく悟った。
自分がよく考えずともセクハラぶっちぎりの意味を秘めたものを渡し、なおかつその相手はちょっと公共の場では言えない方法で他生物を自分達の繁殖に利用する(エロ同人御用達のモンスター代表格)テンタクル。
今の彼は大きく開いた口に放り込まれんとする、据え膳状態である、ということを。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【書籍化進行中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!
菊月ランララン
恋愛
異世界に転生して美少年になれたと思ったら、どこもかしこも美形ばかりだった… あの令嬢が美しい、あの令息がかっこいい、うん、美しいのはわかるけど…どこで格差が付いてるのかな?!!?皆綺麗だよ!!!!!
地球の感覚だと全員美しい世界に来てしまった元日本人・アマデウスはなかなか美的感覚を掴めない。化物令嬢と呼ばれる令嬢も、アマデウスの目から見ると―――…
美醜逆転ならぬ美形インフレ世界で化物令嬢と呼ばれる娘が、前世の知識で荒稼ぎすることにした少年と出会って恋をする話―――…
の予定です。
追記:(小説家になろう公式さんの方でアイリス異世界ファンタジー大賞銀賞を頂きまして、書籍化進行中です。新情報があればこちらでも近況ボードなどでお知らせしたいと思っています。よろしくお願いします…!)
王妃となったアンゼリカ
わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。
そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。
彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。
「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」
※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。
これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
とびきりのクズに一目惚れし人生が変わった俺のこと
未瑠
BL
端正な容姿と圧倒的なオーラをもつタクトに一目惚れしたミコト。ただタクトは金にも女にも男にもだらしがないクズだった。それでも惹かれてしまうタクトに唐突に「付き合おう」と言われたミコト。付き合い出してもタクトはクズのまま。そして付き合って初めての誕生日にミコトは冷たい言葉で振られてしまう。
それなのにどうして連絡してくるの……?
ある平凡な女、転生する
眼鏡から鱗
ファンタジー
平々凡々な暮らしをしていた私。
しかし、会社帰りに事故ってお陀仏。
次に、気がついたらとっても良い部屋でした。
えっ、なんで?
※ゆる〜く、頭空っぽにして読んで下さい(笑)
※大変更新が遅いので申し訳ないですが、気長にお待ちください。
★作品の中にある画像は、全てAI生成にて貼り付けたものとなります。イメージですので顔や服装については、皆様のご想像で脳内変換を宜しくお願いします。★
さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~
遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」
戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。
周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。
「……わかりました、旦那様」
反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。
その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。
聖女の魅了攻撃は無効です
まきお
恋愛
ある日突然現れた、異世界から召喚された聖女モモカ。彼女を前にするとどんな異性も途端に心を奪われてしまう。公爵令嬢であるアルスリーアの婚約者もまた、彼女に心奪われた内のひとりであった。
婚約破棄を求められたアルスリーアだが、すぐに承諾するのはなんだか癪である。それに、彼女にはあるひとつの疑念があった。
もしかして、あの聖女様、怪しい魔法とか使ってるんじゃない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる