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箱と触手
夜の空の下・5
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訳が分からない。
その一言に尽きる。
下水道の先は、会館の外側だ。
一人で流されていけば確実に脱出できたというのに、ミミックはわざわざ戻ってきたのだ。
それも自分の半身と言っても過言ではない箱を取り戻すためではなく、マッピーに告げ口したテンタクルを連れていくために!
混乱する思考が、手を止めかける。
だが、咄嗟に我を取り戻し、下ろしそうになった剣を再び構え直す。
意見が噛み合わない以上、行動不能にさせる予定に変わりはないのだ。
再び刃が閃く。
だが、今度のミミックはしぶとかった。
全ての能力をひび割れに染み込んだ身体を引っ張ることと復元に集中させているらしく、二の腕を切られても、背中から切りつけられても、呻き声すらあげず瞬時に身体をくっつけてしまうのだ。
「どうしてそこまで……!」
「だって、『あなた』じゃなくて『わたし』って言ったんだ。
『わたし達』って言ったんだ」
鍛えたものの、影そのものを切り離すほどの剣聖には至っておらず。
切っても切ってもまるでダメージのない身体にマッピーが疲弊を隠せなくなってきた頃、壁を引っ張り続けるミミックの口が、誰に向けるでもなく言葉を紡ぐ。
「あれ、絶対ぼくにじゃなくて自分に向けて言ってたよ。
顔は見てないけど、 わかるもん」
『身の程をわきまえなさい。
自由なんてないわたし達は、どこにもいけずに死ぬのよ』
不自然に震えた振動が、納得なんてしていないと叫んでいた。
いまだに諦めきれぬ心を、正論と現実を振りかざし、自分で引き潰して凪にしようとしていた。
矛盾した気持ちが揺さぶりとなって触手ごしに伝わったのを、ミミックは確かに受け取ったのだ。
「友達の心が死んでいくのを黙って見てるくらいなら、ぼくはバカでいい!」
大声が反響して、壁の一部が崩れて落ちる。
向こう側からより強い光が漏れてきた。
まばゆさに目がくらみながらも粘液に汚れるタイルの色が見えた。
その一言に尽きる。
下水道の先は、会館の外側だ。
一人で流されていけば確実に脱出できたというのに、ミミックはわざわざ戻ってきたのだ。
それも自分の半身と言っても過言ではない箱を取り戻すためではなく、マッピーに告げ口したテンタクルを連れていくために!
混乱する思考が、手を止めかける。
だが、咄嗟に我を取り戻し、下ろしそうになった剣を再び構え直す。
意見が噛み合わない以上、行動不能にさせる予定に変わりはないのだ。
再び刃が閃く。
だが、今度のミミックはしぶとかった。
全ての能力をひび割れに染み込んだ身体を引っ張ることと復元に集中させているらしく、二の腕を切られても、背中から切りつけられても、呻き声すらあげず瞬時に身体をくっつけてしまうのだ。
「どうしてそこまで……!」
「だって、『あなた』じゃなくて『わたし』って言ったんだ。
『わたし達』って言ったんだ」
鍛えたものの、影そのものを切り離すほどの剣聖には至っておらず。
切っても切ってもまるでダメージのない身体にマッピーが疲弊を隠せなくなってきた頃、壁を引っ張り続けるミミックの口が、誰に向けるでもなく言葉を紡ぐ。
「あれ、絶対ぼくにじゃなくて自分に向けて言ってたよ。
顔は見てないけど、 わかるもん」
『身の程をわきまえなさい。
自由なんてないわたし達は、どこにもいけずに死ぬのよ』
不自然に震えた振動が、納得なんてしていないと叫んでいた。
いまだに諦めきれぬ心を、正論と現実を振りかざし、自分で引き潰して凪にしようとしていた。
矛盾した気持ちが揺さぶりとなって触手ごしに伝わったのを、ミミックは確かに受け取ったのだ。
「友達の心が死んでいくのを黙って見てるくらいなら、ぼくはバカでいい!」
大声が反響して、壁の一部が崩れて落ちる。
向こう側からより強い光が漏れてきた。
まばゆさに目がくらみながらも粘液に汚れるタイルの色が見えた。
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