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第1部 高級クラブのお仕事
水面下の争い
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「そういえば、佐々木さん、桂木さんの首が危ないって言ってたやないですか。大丈夫やったんすか?」
たった一日休んだだけでいろいろと変化があり、ただ桂木だけは普段と変わらなかったことに思い至ってそう聞くと、佐々木マネージャーは、オージーザス、と言ってまたせっせとボトルの中身を流し出す。その様子を見ていたチーフ補助の諸橋が、あはは、と笑うと、
「佐々ヤンは桂木さんが嫌いやからなあ~」
と言って、代わりに説明してくれた。
「ほら、この場所ってよくホステスたちが休憩しにくるやろ?だから込み入ったことも聞いてしまうことがあるんやけど、月曜の終わりにな、桂木さんが明日菜を送って帰ってきたとき、ちょうどここにいた貴代ママに、ルイママのチクリのせいで俺もクビかもって漏らしはってん。それを貴代ママが、何でオーママはルイちゃんの言うことばっかり聞くんやって怒りはって、桂木さんを残して欲しいってオーママに直談判したそうやねん。それで、桂木さんは首の皮が繋がったってわけや」
諸橋さんが話終えたとき、佐々木はチラッと涼平を見て口をへの字に曲げた。
そこへ、酒の匂いを嗅ぎ付けた後藤店長がやってきた。店長は当たり前のように佐々木に手を差し出すと、佐々木ははいはい、と言って減らす予定の焼酎をグラスに入れて渡した。
「涼平、お父さんが危篤やったそうやないか。出てきて大丈夫なんか?」
後藤店長はクイッと一口目を飲んでから、傍らにいた涼平に聞いた。
(え!?危篤て…あ!桂木さんやな…ベタな言い訳してくれてからに…だからみんな、やたらと優しかったんや。ていうか、スカウトレース気にする前にそこを教えといてくれよ)
「は、はあ~意外と大したことなかったみたいです…」
(意外ととか言ってもたし…)
咄嗟のことでおかしなことを言ってしまい、これ以上詰められてボロが出ないように話題を変える。
「それより今の話なんですけど、何で貴代ママはそんなに桂木さんをかばうんですか?」
慌ててそう聞くと、佐々木がチッチと人差し指を振る。
「そんなことも分からへんのか?涼平もまだまだやなぁ。メタボはハデハデやイケイケにヒイキばっかりするやろ?だから顔デカにとったらあんなエロガッパでも使いこなして自分に有利な配置をして欲しい訳や」
(うわ、得意顔で言ってくれてるけど、何言ってるかぜんっぜん分からへん…)
「あの…誰か通訳してもらえますか?」
涼平のその訴えに後藤店長が、
「それはやなあ~」
と手持ちのグラスをぐっと空け、ほれ、とまたマネージャーに差し出した。
「後藤さん、チーフがいたらまた怒られるとこやで」
諸橋の言葉に店長はにやっとし、
「お!チーフは買い出しか?」
と嬉しそうに破顔した。それを見て、諸橋は、しまった、と舌打ちし、佐々木に手を合わせる。佐々木は嘆息して店長のグラスに焼酎を注ぎ足し、二杯目をもらった店長はまた一口目をぐっと飲んでからご機嫌に語り出した。
「売り上げをするホステスはな、どんな女の子が席に着くかでその売り上げが左右される。その配置の仕事をしている男を花形というのは、その配置の仕方によってその日の店の売り上げをも左右するからなんや」
そこまで言うとまた、店長はグラスを空にした。ロックの焼酎を二口である。
「ちょ、ゴトテン、さすがにそのペースはやばいって!」
佐々木の言うことなど聞く訳もなく、後藤は佐々木の前に雑然と置かれた焼酎のボトルを一つ取って自分のグラスに注いだ。そして呆れ顔の涼平に向く。
「ルイママは派手系、貴代ママは飲んで盛り上げられる子、佐和子ママは安心して接待を任せられる礼儀正しい子、瞳ママは三十代前後の落ち着いた会話の出来る女性、そして、りなママはまだ年が若いから、自分が使いやすい若くてキャピキャピした子、というように、うちはママのカラーがはっきり別れてるからまだやり易いと思うけど、それでもいい女の子は取り合いになる。
そのときに、どこに優先的に回すかは配置の男のさじ加減になるわけやけど、そこで自分の入れた窓口には甘くなる。山田常務は自分の入れたりなをヒイキしがちになるんや。
窓口のおらんルイはそこで、山田をてなずける。そうすると、貴代は不利になるから、桂木を子飼いにして自分の言うことを聞かせようとする訳や。
男の方も、実力のあるママに味方になってもらったら何かと安心やから、ある程度はヒイキのママの肩を持つようになる。
というわけで、男と女の共存関係が出来る訳や」
言い終える頃にはまた、グラスが空になっていた。
「ゴトテンは酒と共存し過ぎやで」
佐々木が後藤の言葉尻を捉えると、何を!と赤ら顔の店長は激昂し、
「佐々木!だいたいお前はやなあ~」
と説教タイムに突入しそうになる。
「あ!電話番がおらへんやん。涼平、行こ行こ」
言ってボトル室から逃げ出すのもいつものパターンだった。
(てことは…月曜にルイママが明日菜を辞めさせたのは、単に可愛がってる樹理を守るためだけやなくて、桂木さんに去ってもらって、自分有利に配置してもらうためもあったとか…いや、そこまでは考え過ぎかな?)
水面下の女性の争い、そんなものがあったら怖いな、と涼平は思った。
クロークへ行くと、その日はイベントの最中ということもあってか、開店作業を終えたマネージャー以下全員が、スカウトには出ずに集結していた。
(電話番がいないどころか、い過ぎやん)
一番役職が上の佐々木マネージャーがレジ用の椅子に座り、涼平はクローク前に立った。
「なあなあ~お前らがもしこの店に客として来たら、誰指名する?」
佐々木がホステスの名簿を指差して言うと、その隣りに座っていた河村主任がまず口を開いた。
「ぼくはですねえ~やっぱ無難にマリアさんとかですかねえ」
「おお、正統派やん。手堅い河ちゃんらしいなあ。関ちゃんは?」
「そうですねえ~自分としましては…瞳ママとかタイプですねえ。フェロモンむんむんな感じがたまりません」
関は四角い頭をかきながら照れ笑いする。
「おお!このスケベ野郎!フェロモンで言えばきのう、なるちゃんの入れた麗子ちゃんもなかなかやろ?あと関ちゃんの樹理もなかなかいいフェロモン出してるやん。窓口やねんから言ってあげえや」
「そうですねえ、確かにきのうの麗子さんはヤバいっすねえ。樹理は…ちょっとダメかもしれません…」
樹理の名前を言うとき、関は顔を曇らせた。
「何でや?ハデハデに気に入ってもらって、きのうもダブルで同伴付けてもらってたやん。このまま黒の軍団入りしたら安泰やで」
「はい、そうなんですけど……ルイママに迷惑かけなければいいな、と…」
関の沈んだ口調を聞き、涼平はシャレードでの夏美さんの言葉を思い出し、問題児の窓口は大変だなあ、と思った。しかしそれはそのまま自分にも当てはまり、自嘲する。すると、
「俺は…ゆ…由奈ちゃん…かな?」
と、ちょうど由奈の名前が聞こえ、ハッとして場の話題に戻ると、西口が顔を赤らめていた。
「お~っと!にしぐっちゃん、意外とロリ!?」
寡黙な西口がコクコクと頷くと、全員、おお~と言って笑った。
(由奈…よかったやん。お前のファンも一人はいたぞ)
「にしぐっちゃん、小学生とかにイタズラして捕まらんといてや~。じゃあ次~朝やんは?」
「ぼ、僕ですかあ?そうですねえ~春樹さんのクールな感じもいいしぃ~みくさんのわがままお嬢様っぽい感じもいいですねぇ~。あ!マネージャーがきのう連れてきはったラムさんもボンキュッボンでいいっすよねぇ~。それから~」
「て、まだあるんかい!朝は気が多すぎやで」
夢中で喋り出したのを止められる朝倉であった。
「最後は~りょーちん!」
「う~ん、俺っすか~」
ドルチェに入って3週間以上経つが、正直、優香以外のホステスとはほとんど挨拶以外に会話を交わすことはなく、涼平は首を傾げながら店のホステスたちの顔を思い浮かべた。
今名前が上がったマリア、春樹、みくといったホステスたちは同伴で常にナンバー入りしており、確かに容姿も優れているが、20歳のぺーぺーの涼平には彼女らとはかなりの距離感を感じていた。
「しーくんはあの若名の美人さんやんねぇ」
朝倉が口を挟む。朝倉は由奈に倣って涼平をしーくんと呼んでいた。
「おお、あれはベッピンやんなあ。あんなんが身近にいたら、そらそんじょそこらのクラブのホステスなんてくすんでしまうよなあ」
実は萌未とは彼らが思っている以上に親密な付き合いなのだが、それを言えるわけもなく……
「あいつは友達です。俺は…ゆ、優香さんです」
ときっぱりと言った。
「なるほど~りょーちんは地味キャラが好きなんやあ。うん、でも何か、らしい気がするわ」
佐々木が得心したように頷く。
「そういうマネージャーはどうなんですか?」
河村に振られると、
「俺?そんなん決まってるやん。全員や」
と佐々木はニシシと笑い、ズルいの声が輪唱する。営業前の平和な一時だった。
たった一日休んだだけでいろいろと変化があり、ただ桂木だけは普段と変わらなかったことに思い至ってそう聞くと、佐々木マネージャーは、オージーザス、と言ってまたせっせとボトルの中身を流し出す。その様子を見ていたチーフ補助の諸橋が、あはは、と笑うと、
「佐々ヤンは桂木さんが嫌いやからなあ~」
と言って、代わりに説明してくれた。
「ほら、この場所ってよくホステスたちが休憩しにくるやろ?だから込み入ったことも聞いてしまうことがあるんやけど、月曜の終わりにな、桂木さんが明日菜を送って帰ってきたとき、ちょうどここにいた貴代ママに、ルイママのチクリのせいで俺もクビかもって漏らしはってん。それを貴代ママが、何でオーママはルイちゃんの言うことばっかり聞くんやって怒りはって、桂木さんを残して欲しいってオーママに直談判したそうやねん。それで、桂木さんは首の皮が繋がったってわけや」
諸橋さんが話終えたとき、佐々木はチラッと涼平を見て口をへの字に曲げた。
そこへ、酒の匂いを嗅ぎ付けた後藤店長がやってきた。店長は当たり前のように佐々木に手を差し出すと、佐々木ははいはい、と言って減らす予定の焼酎をグラスに入れて渡した。
「涼平、お父さんが危篤やったそうやないか。出てきて大丈夫なんか?」
後藤店長はクイッと一口目を飲んでから、傍らにいた涼平に聞いた。
(え!?危篤て…あ!桂木さんやな…ベタな言い訳してくれてからに…だからみんな、やたらと優しかったんや。ていうか、スカウトレース気にする前にそこを教えといてくれよ)
「は、はあ~意外と大したことなかったみたいです…」
(意外ととか言ってもたし…)
咄嗟のことでおかしなことを言ってしまい、これ以上詰められてボロが出ないように話題を変える。
「それより今の話なんですけど、何で貴代ママはそんなに桂木さんをかばうんですか?」
慌ててそう聞くと、佐々木がチッチと人差し指を振る。
「そんなことも分からへんのか?涼平もまだまだやなぁ。メタボはハデハデやイケイケにヒイキばっかりするやろ?だから顔デカにとったらあんなエロガッパでも使いこなして自分に有利な配置をして欲しい訳や」
(うわ、得意顔で言ってくれてるけど、何言ってるかぜんっぜん分からへん…)
「あの…誰か通訳してもらえますか?」
涼平のその訴えに後藤店長が、
「それはやなあ~」
と手持ちのグラスをぐっと空け、ほれ、とまたマネージャーに差し出した。
「後藤さん、チーフがいたらまた怒られるとこやで」
諸橋の言葉に店長はにやっとし、
「お!チーフは買い出しか?」
と嬉しそうに破顔した。それを見て、諸橋は、しまった、と舌打ちし、佐々木に手を合わせる。佐々木は嘆息して店長のグラスに焼酎を注ぎ足し、二杯目をもらった店長はまた一口目をぐっと飲んでからご機嫌に語り出した。
「売り上げをするホステスはな、どんな女の子が席に着くかでその売り上げが左右される。その配置の仕事をしている男を花形というのは、その配置の仕方によってその日の店の売り上げをも左右するからなんや」
そこまで言うとまた、店長はグラスを空にした。ロックの焼酎を二口である。
「ちょ、ゴトテン、さすがにそのペースはやばいって!」
佐々木の言うことなど聞く訳もなく、後藤は佐々木の前に雑然と置かれた焼酎のボトルを一つ取って自分のグラスに注いだ。そして呆れ顔の涼平に向く。
「ルイママは派手系、貴代ママは飲んで盛り上げられる子、佐和子ママは安心して接待を任せられる礼儀正しい子、瞳ママは三十代前後の落ち着いた会話の出来る女性、そして、りなママはまだ年が若いから、自分が使いやすい若くてキャピキャピした子、というように、うちはママのカラーがはっきり別れてるからまだやり易いと思うけど、それでもいい女の子は取り合いになる。
そのときに、どこに優先的に回すかは配置の男のさじ加減になるわけやけど、そこで自分の入れた窓口には甘くなる。山田常務は自分の入れたりなをヒイキしがちになるんや。
窓口のおらんルイはそこで、山田をてなずける。そうすると、貴代は不利になるから、桂木を子飼いにして自分の言うことを聞かせようとする訳や。
男の方も、実力のあるママに味方になってもらったら何かと安心やから、ある程度はヒイキのママの肩を持つようになる。
というわけで、男と女の共存関係が出来る訳や」
言い終える頃にはまた、グラスが空になっていた。
「ゴトテンは酒と共存し過ぎやで」
佐々木が後藤の言葉尻を捉えると、何を!と赤ら顔の店長は激昂し、
「佐々木!だいたいお前はやなあ~」
と説教タイムに突入しそうになる。
「あ!電話番がおらへんやん。涼平、行こ行こ」
言ってボトル室から逃げ出すのもいつものパターンだった。
(てことは…月曜にルイママが明日菜を辞めさせたのは、単に可愛がってる樹理を守るためだけやなくて、桂木さんに去ってもらって、自分有利に配置してもらうためもあったとか…いや、そこまでは考え過ぎかな?)
水面下の女性の争い、そんなものがあったら怖いな、と涼平は思った。
クロークへ行くと、その日はイベントの最中ということもあってか、開店作業を終えたマネージャー以下全員が、スカウトには出ずに集結していた。
(電話番がいないどころか、い過ぎやん)
一番役職が上の佐々木マネージャーがレジ用の椅子に座り、涼平はクローク前に立った。
「なあなあ~お前らがもしこの店に客として来たら、誰指名する?」
佐々木がホステスの名簿を指差して言うと、その隣りに座っていた河村主任がまず口を開いた。
「ぼくはですねえ~やっぱ無難にマリアさんとかですかねえ」
「おお、正統派やん。手堅い河ちゃんらしいなあ。関ちゃんは?」
「そうですねえ~自分としましては…瞳ママとかタイプですねえ。フェロモンむんむんな感じがたまりません」
関は四角い頭をかきながら照れ笑いする。
「おお!このスケベ野郎!フェロモンで言えばきのう、なるちゃんの入れた麗子ちゃんもなかなかやろ?あと関ちゃんの樹理もなかなかいいフェロモン出してるやん。窓口やねんから言ってあげえや」
「そうですねえ、確かにきのうの麗子さんはヤバいっすねえ。樹理は…ちょっとダメかもしれません…」
樹理の名前を言うとき、関は顔を曇らせた。
「何でや?ハデハデに気に入ってもらって、きのうもダブルで同伴付けてもらってたやん。このまま黒の軍団入りしたら安泰やで」
「はい、そうなんですけど……ルイママに迷惑かけなければいいな、と…」
関の沈んだ口調を聞き、涼平はシャレードでの夏美さんの言葉を思い出し、問題児の窓口は大変だなあ、と思った。しかしそれはそのまま自分にも当てはまり、自嘲する。すると、
「俺は…ゆ…由奈ちゃん…かな?」
と、ちょうど由奈の名前が聞こえ、ハッとして場の話題に戻ると、西口が顔を赤らめていた。
「お~っと!にしぐっちゃん、意外とロリ!?」
寡黙な西口がコクコクと頷くと、全員、おお~と言って笑った。
(由奈…よかったやん。お前のファンも一人はいたぞ)
「にしぐっちゃん、小学生とかにイタズラして捕まらんといてや~。じゃあ次~朝やんは?」
「ぼ、僕ですかあ?そうですねえ~春樹さんのクールな感じもいいしぃ~みくさんのわがままお嬢様っぽい感じもいいですねぇ~。あ!マネージャーがきのう連れてきはったラムさんもボンキュッボンでいいっすよねぇ~。それから~」
「て、まだあるんかい!朝は気が多すぎやで」
夢中で喋り出したのを止められる朝倉であった。
「最後は~りょーちん!」
「う~ん、俺っすか~」
ドルチェに入って3週間以上経つが、正直、優香以外のホステスとはほとんど挨拶以外に会話を交わすことはなく、涼平は首を傾げながら店のホステスたちの顔を思い浮かべた。
今名前が上がったマリア、春樹、みくといったホステスたちは同伴で常にナンバー入りしており、確かに容姿も優れているが、20歳のぺーぺーの涼平には彼女らとはかなりの距離感を感じていた。
「しーくんはあの若名の美人さんやんねぇ」
朝倉が口を挟む。朝倉は由奈に倣って涼平をしーくんと呼んでいた。
「おお、あれはベッピンやんなあ。あんなんが身近にいたら、そらそんじょそこらのクラブのホステスなんてくすんでしまうよなあ」
実は萌未とは彼らが思っている以上に親密な付き合いなのだが、それを言えるわけもなく……
「あいつは友達です。俺は…ゆ、優香さんです」
ときっぱりと言った。
「なるほど~りょーちんは地味キャラが好きなんやあ。うん、でも何か、らしい気がするわ」
佐々木が得心したように頷く。
「そういうマネージャーはどうなんですか?」
河村に振られると、
「俺?そんなん決まってるやん。全員や」
と佐々木はニシシと笑い、ズルいの声が輪唱する。営業前の平和な一時だった。
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