投獄

藤堂Máquina

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プロローグ

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牢獄に転がるのはいくつかの本だ。 

ここに入れられて何日経ったのか、もうすっかり数えるのを諦めたほどだ。

隣の部屋には既に何人かが入れ替わっている。 

それを眺めるのがすっかり習慣になっている。

新入りはいつだって緊張している。 

落ち着いている奴ほど凶悪犯なのかもしれない。 

ここにいる理由をしっかり理解しているようだ。

声をかけるのはいつも私からだ。 

収監されている状況で人付き合いをしようだなんて誰が考えるだろうか。 

大抵は何事もなく、ここでの生活を終えようとするだけだ。 

決まった日数さえこなせば、それこそ何もしなくても外へは出られるのだ。 

ここさえ出てしまえばもうここの住人に会うことはない。

会ったとして声をかけようだなんて余計に誰も考えない。 

人間なんてそんなものだ。 

都合の良い関係以外に馴れ合いを好まないのだ。 

手に取った本を一冊開く。 

何の面白味の無い出会いから付き合いの始まる人々の話だ。 

そんなことはこの場所では起こり得ない。 

だが、劇的な出会いを求めれば求めるほど、それは誰かの決めた演出のようにも感じられるのだ。 

その誰かは時には神かもしれない。 

演出は馬鹿馬鹿しい。 

きっと脚本家はすっかり飽きているのだ。 

役者だってそうだ。 

同じような台本を渡されて誰が楽しいものか。 

本なんてものはくだらないのだ。 

斬新であればあるほど世界の一つのパターンを潰す。 

既出のものとする。 

人生はきっと本を読まない方が楽しめる。 

ここにいるおかげでさらにどれほどの寿命を消費するかは分からないが、それでも残りの人生を楽しむために、何を
選択するのかは私自身が決めることであり、どんな結果になったとしても自分のせいにするしかないのだ。
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