草稿集

藤堂Máquina

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毒虫

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 物心ついた時から体感していたことだが、人々の私を見る目というのは恐ろしく残酷で、そして冷たいものであった。

 今思い返してもそう感じるのだ。

 私のすることと言えば、おそらく当たり障りのない、誰もがするようなことであった。

 私自身、自分を平均的な人間だと思いこんでいて疑いの余地もなかった。

 自分が毒虫だと気づいたのはかなり後のことだった。

 よく考えてみると私に触れようとするものなど一人もいなかったのだ。

 それが何よりの証拠で、それ以上のものはもはや必要のないものであった。

 私も好んで毒虫に生まれたわけではない。

 それだのに知らぬ間に人々に不快感を与え、避けられ続けてきたのである。

 私の罪と、私以外の人々の罪とを同時に作り続けていたのである。

  ある朝目覚めると体が動くのを拒んだ。

 自分がどんな毒虫なのかを知らなかっただけに、死ぬのか、蛹になるのかは分からなかった。 

 とうとう地に伏した私はすぐさまその場で溶けてしまった。

 そして気がつくと体は驚くほど軽快に動くことを許した。

 「幸福」という言葉はとてもじゃないが似合わなかったが、気持ちはすっかり晴れていたのである。

 今まで避け続けてきた人々の目の届かないところまで飛んで行くことが必然のことであり、それを拒む理由などなかった。
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