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第27話「そーいうのいけないと思います!」
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───貰う!…………って、へ?
「そういうの、……ホントはクソどうでもいいの」
「く、クソ?」
な、何言ってんのこの人?
「そ。クソどうでもいいわ」
「………………さ、サオリさん?」
スッとヴァンプから体を離したサオリ。
ヴァンプの胸の当たりでは、彼女の残した温もりが残り香のように漂っていた。
そして、当のサオリはといえば、どこか寂し気な目で空を仰いでいる。
「知ってるかしら、ヴァンプ?」
「へ?」
……じきにミゾレが降るというその空を眺めるサオリ。
憂いを帯びた表情に、毒気を抜かれたヴァンプは隠し持っていた匕首をしまってしまった。
(コイツ……)
「───……悠久の時を生きる。ただただ、生きる……。それはとても退屈なこと。あなた達魔族も知っているんじゃない?」
……知っている。
いや、知らない………………。
知ってたまるか。
我ら魔族は闘争生物。
常に戦い、常に奪い、常に殺す。
そこに退屈を感じる暇などない。
わらの目的は人類にとっての公共の敵たりうること。
ウジャウジャと増える人類を駆逐し、戦いに歓喜を見出す我らの生き方の中に「退屈」など存在しない。
だから、人類と戦うのだ。
「彼等」は、世界が我らに与えたもうた恩恵。
我らの悪意をぶつけられる唯一無二の存在。悪意をぶつけてもいい至高の存在。
全にして無。
それ以上にしてそれ以下。
我らは、人類がありて初めて存在意義を持つ───。
それが人類と魔族の関係。
殺し殺され、
互いに肉を引き裂き、
骨を砕き、
血をぶちまけることが許された存在。
人類は我ら魔族の怨敵にして、天敵にして、…………恵みなのだ。
だから、戦う。
駆逐する。
殺す。
魔族も、命の限り戦って戦って、戦って戦って……その生命の輝きを常に灯し続ける。
そこに「退屈」だと?
本気で言っているのか、このサオリという女は?
「───サオリさんが何を言っているのか俺ッチにはさっぱりわからないッス」
わからないけど……。
わかりたくもないけど───。
「よくわからないッスけど、人類と魔族の関係は、火と油だと思うんス。そこには『退屈』なんて感じる暇などないと俺ッチは思うんスけど」
今も絶賛戦争状態にあるわけで……。
「そう、かしら?───少なくとも、私は退屈を感じているわ」
本当にそうか?
ヴァンプの目から見て、サオリが退屈そうにしている姿など見たことがない。
先の戦いでだって身を挺して魔法を使い、勇者パーティの矢表に立っていた。
「それは気のせいっス。サオリさんはいつも全力で戦ってるっスよ?」
「もちろん本気よ。我ら人類と魔族は似て非なる存在。ヴァンプの言うように火と油───」
そう、
決して交わらない。
決して共存できない。
決してわかりあえない。
「───だから、魔族は」
「───だから、人類は」
だから、俺たちは───。
「「……戦わねばならない」ッス」
必ず、勇者を倒さねばならない───。
必ず、魔王を滅ぼさねばならない───。
「「命の限り……」」
退屈など存在しないのだ。
やっぱりサオリの言っている事は矛盾しているし、おかしい。
『退屈』といいつつも、サオリは今の生を精一杯謳歌していると思う。
少なくとも、生きることに倦んでいるようには決して見えない。
本当にコイツの目的はなんだ?
俺をどうしようってんだ?
「………………やっぱり魔族なのね」
「そういうの、……ホントはクソどうでもいいの」
「く、クソ?」
な、何言ってんのこの人?
「そ。クソどうでもいいわ」
「………………さ、サオリさん?」
スッとヴァンプから体を離したサオリ。
ヴァンプの胸の当たりでは、彼女の残した温もりが残り香のように漂っていた。
そして、当のサオリはといえば、どこか寂し気な目で空を仰いでいる。
「知ってるかしら、ヴァンプ?」
「へ?」
……じきにミゾレが降るというその空を眺めるサオリ。
憂いを帯びた表情に、毒気を抜かれたヴァンプは隠し持っていた匕首をしまってしまった。
(コイツ……)
「───……悠久の時を生きる。ただただ、生きる……。それはとても退屈なこと。あなた達魔族も知っているんじゃない?」
……知っている。
いや、知らない………………。
知ってたまるか。
我ら魔族は闘争生物。
常に戦い、常に奪い、常に殺す。
そこに退屈を感じる暇などない。
わらの目的は人類にとっての公共の敵たりうること。
ウジャウジャと増える人類を駆逐し、戦いに歓喜を見出す我らの生き方の中に「退屈」など存在しない。
だから、人類と戦うのだ。
「彼等」は、世界が我らに与えたもうた恩恵。
我らの悪意をぶつけられる唯一無二の存在。悪意をぶつけてもいい至高の存在。
全にして無。
それ以上にしてそれ以下。
我らは、人類がありて初めて存在意義を持つ───。
それが人類と魔族の関係。
殺し殺され、
互いに肉を引き裂き、
骨を砕き、
血をぶちまけることが許された存在。
人類は我ら魔族の怨敵にして、天敵にして、…………恵みなのだ。
だから、戦う。
駆逐する。
殺す。
魔族も、命の限り戦って戦って、戦って戦って……その生命の輝きを常に灯し続ける。
そこに「退屈」だと?
本気で言っているのか、このサオリという女は?
「───サオリさんが何を言っているのか俺ッチにはさっぱりわからないッス」
わからないけど……。
わかりたくもないけど───。
「よくわからないッスけど、人類と魔族の関係は、火と油だと思うんス。そこには『退屈』なんて感じる暇などないと俺ッチは思うんスけど」
今も絶賛戦争状態にあるわけで……。
「そう、かしら?───少なくとも、私は退屈を感じているわ」
本当にそうか?
ヴァンプの目から見て、サオリが退屈そうにしている姿など見たことがない。
先の戦いでだって身を挺して魔法を使い、勇者パーティの矢表に立っていた。
「それは気のせいっス。サオリさんはいつも全力で戦ってるっスよ?」
「もちろん本気よ。我ら人類と魔族は似て非なる存在。ヴァンプの言うように火と油───」
そう、
決して交わらない。
決して共存できない。
決してわかりあえない。
「───だから、魔族は」
「───だから、人類は」
だから、俺たちは───。
「「……戦わねばならない」ッス」
必ず、勇者を倒さねばならない───。
必ず、魔王を滅ぼさねばならない───。
「「命の限り……」」
退屈など存在しないのだ。
やっぱりサオリの言っている事は矛盾しているし、おかしい。
『退屈』といいつつも、サオリは今の生を精一杯謳歌していると思う。
少なくとも、生きることに倦んでいるようには決して見えない。
本当にコイツの目的はなんだ?
俺をどうしようってんだ?
「………………やっぱり魔族なのね」
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