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第14話「戦列復帰中!」

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 つ、
 強い──────……。



 スケルトンそのものはそれほど強い魔物ではないが、それにしてもあの数を───あの速度で、だ。

「ヴァンプ、おまえ───……」
「ん?───オーさん、俺ッチに惚れたっすか?」

 …………。ゴンッ!!!!

「いっだ! いっっっだぁぁあ!! ず、頭蓋骨投げるとか、罰当たりっすよ!」
「やかましいッ! いいから、俺と防衛ラインを張れッ!───ナナミがアレでは暫く使い物にならん!」

 悲鳴を上げ続けるクリスティに寄り添うナナミ。その混乱は境地に達している。

 本来、この場所で誰よりも強いはずのナナミは、クリスティの狂乱につられて年相応の少女の如くパニックに陥っているらしい。

(子供らしいのか、周囲につられやすいみたいっスね……メモメモ)

 クリスティのアンデッドに対する恐怖がナナミにも伝播しているのだろう。

 その様子をほくそ笑みながらも、ヴァンプは戦いを止めることはなかった。

「前衛はオーさんと俺ッチで張るしかないっスね」
「あぁ、不本意だが背中を預けるぞ」

「ラージャ! 任されたいっス」

 スッと、剣筋をあわせて素早く連携するヴァンプとオーディ。

 ろくな打ち合わせもしていないというのに、まるで長年の相棒の様なその姿は、実にサマになっていた。

「む───9時方向、スケルトンの一個小隊が来るッス!」
「……見えた──────! あれは、俺が仕留めるッ」

 野獣のような闘気をまとったオーディが駆ける!!
 その宣言通り、オーディによって一個小隊規模のスケルトンはあっという間に殲滅しつくされた。

 背中をヴァンプに預けることでオーディは前から迫りくる敵だけに専念できるらしい。

 そのことに安堵を覚える自分に、オーディ自身も驚いていたが、存外悪くない気分にニヤリと口角を歪める。
「頼りになるじゃないか……!」
「なんか、言ったっス?」

「なんでもねぇよ───!」

 どこか楽しげな様子のオーディとは異なり、ヴァンプはといえば───五感を研ぎ澄ましつつ周辺を探る。
 その探知によって、敵の増援の兆候をつかんでいた。

「───厄介スね……。オーさん、」
「ん? なんだ。って、オーさんはやめ───」

 補給処から、死霊術士を含む増援が出てきたのだろう。
 乱れのない足取りで、泥だらけの大地を踏みしめる多数の足音と骨の軋み音が聞こえてくる。

「敵の増援だと?!」
「みたいっス。完全に捕捉されてるっス」

(まずいな……! ここは、オーさんだけでも殲滅できるかもしれないっスけど──……ちょっと数が多すぎる)

「む?───魔力の気配増大中……禍々しい何かが来るわ!」

 ようやくパーティよ後衛も気付く。
 魔力探知によってアンデットの気配をつかんだらしいサオリ。
 アンデッドを動かす死霊術特有のそれを探知したのだろう。

 自然発生したアンデッドを使役するよりも、死体を回収して死霊術を施した方が手っ取り早いし効率もいい。
 実際、魔王軍では戦場から大量の死体を回収して使っているのだ。

 アンデットは便利。
 
 なんたって、兵站の荷役に使ってよし、攻撃の先鋒として使ってよし。

 しかもリサイクル可能!
 自然に優しく、魔族にも優しく、人に厳しい。
 
 そう。アンデッドは使って懐の痛まない便利な兵器なのだ。

 特に、人類側の戦死者の死体を使って攻撃すれば、一石二鳥!
 士気をくじくことができるし、数は増えるし、使えば使うほど───なおいい。

 唯一の欠点は浄化魔法だろうか?

 神官の使う浄化魔法によってアンデッドは浄化されてしまう。
 それもあっという間に、だ──。

 魔王軍との戦いが長引くにつれ、人類の連合軍も魔王軍のアンデッド対策に神官を前線に配置している。

 そのため、最近では主に後方での荷役に使われるようになってしまったのだ。

 おかげで魔王軍の後方地域は死体だらけ。
 死臭立ち込めるそこは、中々鼻に優しくない……。
 死体は完全な白骨ばかりではないのだ!

 ……あ、そうか。
 生っぽい死体は臭い。これも欠点といえば欠点か───。

「くそ。なんて数だ───! 誰か、はやくその子を黙らせなさいッ」

 杖を片手に大魔法をバリバリと練り始めたサオリが鋭く叫ぶ。
 彼女の中で既にクリスティは役に立たないと判断したのだろう。

「馬鹿野郎ッ! コイツに構っていられるか───いくぞッッ!」

 大剣を二手にズラリと構えると、野獣の様な闘志を纏うオーディ。
 さっきも見せたスキルだが……。たしか、剣聖オーラとかうやつだ。

(なんとかしのげそうっスね。あまり手を貸してもいいことはなさそうっス。ここは、死霊術士を仕留めるのが一番手っ取り早いッスけど───)

 どのみち、アンデッドじゃいくら束になっても、勇者パーティには敵わないだろう。

 ならば、好んで味方討ちする必要はなかろうと、少し闘志を押さえ込みつつ、いつもの細目で周囲を観察するヴァンプ。

 その目が、じつに冷静に戦場を俯瞰する。

(ふ~む……)
 あれ……か。
 優れた聴力によって補給処から急行してきたアンデッドの軍団を既に捕捉していた。


 思ったより多いな……。


 スケルトンローマーの一個中隊───約100隊。
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